西日本旅客鉄道株式会社
コールセンターの電話インフラをクラウドに移管
臨時窓口開設のスピード化と運用負荷削減を両立
西日本旅客鉄道株式会社 IT本部 企画・戦略グループ
担当課長
小山 秀一 氏
「プロジェクトを“二人三脚”で進めてくれるNTTコミュニケーションズは、まさに信頼できるパートナーです」
課題
有事の対応力、サービス拡張性を強化するため
コールセンターの音声系システムを刷新
近畿、北陸、中国地方を中心とする2府16県で、総延長距離5,008.7キロにわたる鉄道網を運営する西日本旅客鉄道(以下、JR西日本)。同社は、現在の中期経営計画で「安全」「CS(顧客満足)」「技術」の3つを戦略の柱に据え、地域と顧客を意識した多様な施策を展開している。
特にCSに関して同社は、かねて自社サービスに対する顧客の声を把握し、各種施策にフィードバックしていく仕組みの整備に注力してきた。具体的には、乗客の問い合わせに対し、駅係員・乗務員が的確に回答できる体制を整えるほか、電話やメールでのチケット予約、問い合わせ対応を行う「JR西日本お客様センター」を近畿エリア2カ所に設置。対面・遠隔の両軸で、顧客対応力の強化に取り組んできたという。
しかし近年は、このコールセンターのバックエンドの仕組みに課題が浮上していた。
同社のコールセンターは、オペレーターの業務を支援するCRMなどの「データ系」、および電話での通話や音声ガイダンスなどをつかさどる「音声系」という2つのシステムをベースに運用されている。
「事故や天候に起因する輸送・設備障害が発生した場合、お客さまからの電話が突発的に増加します。そのため、席数を一時的に増やし、臨時窓口を開設することで対応してきましたが、従来の音声系システムはオンプレミス型のため、迅速な対応が困難だったのです」とJR西日本の小山 秀一氏は述べる。窓口開設までの間はつながりにくい状態となり、サービスレベルが低下してしまう状況だった。
また、同社グループの体制上、コールセンターの運営には複数の企業が関わっていた。そのため、何らかの事情で音声系システムを改変する場合、その都度、企業間で契約を取り交わす必要があり、多くの手間がかかっていたことも問題だったという。
「例えば、設備を保有する当社と、システムの開発・運用を行う事業者との間でさまざまな書類をやりとりする必要があり、臨時窓口の開設はもちろん、サービス改善に向けた施策を実施することも簡単ではない状態でした」と小山氏は振り返る。
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対策
音声系システムをプライベートクラウドに移管し
運用も含めてベンダー1社に委託する
そこで同社は、CS向上の阻害要因を取り除く、新しい音声系システムのあり方を模索。パートナーに選定したNTTコミュニケーションズ(以下、NTT Com)と共に検討を進め、自社で保有してきたシステム一式を、外部ベンダーのプライベートクラウド環境に移管してサービス利用型に切り替えることにした。
ポイントは、単にシステムを持たずに済むようになるだけでなく、インフラ追加時の手配や運用管理までをベンダー1社にアウトソースできる点にある。「これにより、臨時窓口の開設や、サービス拡充に向けた体制変更を行う際も、ベンダー側に要件を伝えるだけで済むようになります。対応期間が短縮でき、サービスレベルが強化できると考えました」と小山氏は言う。
パートナーの選定に当たっては、NTT Comが電話や回線に関する豊富な技術・ノウハウを持っていたことのほか、提案内容を高く評価したという。
「NTT Comは、より課題解決に有効な仕組みを検討するため、まずは事前コンサルティングを行うことを提案してくれました。その上で、データセンターや回線、システム構築・運用サービスまでを、必要に応じてワンストップで提供してくれる。これは、他社にないメリットでした」(小山氏)
コンサルティングの結果、提案に追加された内容もある。それがサービスオーダー型の利用形態だ。これは、システム使用料をあらかじめ一定量、チケット化しておくことで、煩雑な手続きなしに変更などを依頼できる方式のこと。「当社の業務内容を深く理解し、ベストな仕組みを提案しようという姿勢は、大きな信頼感につながりました」と小山氏は語る。
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効果
緊急時の電話窓口は一両日中に開設
コールセンターのサービスレベルを向上
こうしてJR西日本は、音声系システムをNTT Comのデータセンターサービス「Nexcenter」上のプライベートクラウド環境に移管。IP電話サービス「Arcstar IP Voice」と「ナビダイヤル」で回線を整備するとともに、近畿2拠点、および拠点とクラウド環境をVPNサービス「Arcstar Universal One」で接続した。同時に、運用管理もNTT Comに一任することで、シンプルな体制を実現している。
新しい仕組みはさまざまな成果を生んでいる。
まず、システムがサービス利用型になったことで、最大の目的だった臨時窓口の迅速な立ち上げが可能になった。
「実際、架線トラブルで、近隣地域にご迷惑をおかけしてしまったケースがありましたが、その際も臨時窓口を一両日中に開設することができました。以前なら倍以上の日数がかかっていたでしょう」(小山氏)。天候などに起因する運行トラブルは防ぎきれないものが多い。有事のサポートが迅速化できるようになったことは、CSの維持向上に大きな意味を持つと同社は評価している。また当然、サービス強化目的での変更・拡張も随時、柔軟に行えるようになっている。
さらに、今回実現した柔軟な音声系システムの仕組みを活かして、同社は新たなコールセンター拠点も立ち上げた。
「近畿エリアの2拠点は隣接しすぎなので、自然災害などで同時に稼働できなくなるリスクがありました。そこで当社は、BCP強化の目的で中国地方に新拠点を開設。その際の音声系システムを迅速に用意することができました」と小山氏は話す。
今後も同社は、さらなるサービス強化のための仕組みを継続的に検討していく。例えば、コールセンターのサービス基盤にTV会議システムを導入し、拠点間のコミュニケーションを強化。さらに現在は、AI(人工知能)を使ったオペレーター支援の仕組みや、チャット活用なども検討中だ。「CS向上にゴールはありません。NTT Comには、これからも二人三脚で、当社のビジネスを支えてもらいたいと思います」と小山氏は語った。
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西日本旅客鉄道株式会社
事業内容
2府16県をまたぐ広範なエリアで、1日約500万人もの人々の移動を支える鉄道路線ネットワークを運営。1,200近くの「駅」という拠点を活かし、不動産、物販・飲食、ショッピングセンター、ホテルなどの関連事業も展開している。
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(掲載内容は2017年8月現在のものです。)
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