日鉄ケミカル&マテリアル株式会社
テレビ会議システムのMCUにクラウドを導入
柔軟なリソース変更や運用負荷の軽減を実現
日鉄ケミカル&マテリアル株式会社
IT企画推進部
山﨑 裕規氏
「親会社のMCUとの接続については、デモ環境を用意していただいて検証を行いました。事前に接続が確認できたため、安心して導入を進められました」
課題
取引先とオンライン会議ができず
保守運用と機器増強コストの負担が生じる
日鉄ケミカル&マテリアル株式会社(以下、日鉄ケミカル&マテリアル)は、2018年の新日鉄住金化学株式会社と新日鉄住金マテリアルズ株式会社の経営統合以来、オンライン会議ツールによる社内外のコミュニケーション向上や、電子契約・印鑑の導入による遠隔での押印処理など、ITを活用したテレワークや業務効率化に着手し、「働き方改革」を進めている。
そういった中で、課題となっていたのが「テレビ会議」の効率化である。同社では国内外に多くの事業拠点を抱えており、社内会議や社外との打ち合わせにテレビ会議システムが不可欠だった。しかし、この環境にはいくつかの課題があったと同社のIT企画推進部に所属する山﨑裕規氏は話す。
「まず、ユーザー利便性の課題です。弊社のテレビ会議システムは、MCUとテレビ会議装置をISDN回線につなぐ構成となっていましたが、統合前に2社が有していたMCU同士をつなぐには、特定の会議室のみという制約がありました。さらに、お客さまや社外の取引先とインターネットを利用したオンライン会議には対応できないことから、状況に応じてテレビ会議サービスを使い分ける必要がありました」
山﨑氏はこれらのシステムがオンプレミスで構築されていたことも課題だったと続ける。
「MCUを使ったテレビ会議は頻繁に行われていたため、仮にトラブルが発生すればビジネスに大きな支障が生じることになります。そのためMCUには高い可用性が求められていましたが、オンプレミス環境での運用だったため、新たな機器を追加して高可用性を実現するためには多額のコスト負担が生じることも課題となっていました。リソースが機器のスペックに依存していることで、同時に実施するテレビ会議の数や映像品質を抑えて運用する必要もありました」
システム管理部門として、日常的に利用するテレビ会議装置やMCUについての保守運用作業や利用者からのお問い合わせへ対応にも工数がかかっており、ピーク時は1日の7割を費やすこともあった。これらの課題を解決すること、さらに統合前の両社が保有していたMCUの集約を目的とし、テレビ会議システムのリプレース検討が進められることになった。
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対策
多様なネットワークをサポートした
クラウド型テレビ会議システムを導入
これらを満たすサービスとして同社が選定したのがクラウド型テレビ会議サービスであるNTTコミュニケーションズ株式会社(以下、NTT Com)の「Arcstar TV Conferencing(HD PremiumⅢ)」だった。このサービスはMCUの機能をクラウド上で提供することで、テレビ会議専用ネットワークを一元的に提供する。自社で会議システム設備を持たずにテレビ会議を実施できるとともに、WebRTC(Web Real-Time Communication)接続オプションでアプリのインストールをしなくてもPCやスマートフォン、タブレットなどから接続できる。
「最終的な決め手になったのは、MCU同士の通信やISDN回線を使ったオンライン会議など、テレビ会議における弊社の特殊な用途に対して、NTT Comからオンプレミスとクラウドのハイブリット構成によって網羅的に実現できるシステムの提案があったことです。また、親会社である日本製鉄株式会社とのテレビ会議ではMCU同士の通信でオンライン会議ができる必要もありました。MCU同士の通信については、親会社との通信テストのためにデモ環境が用意され、問題なく接続できることを事前に確認できたことで、スムーズに導入を進められました」(山﨑氏)
図 システム構成図
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効果
リソースの柔軟な増減でテレワーク7割を実現
保守運用稼働は7割から1割に
TV Conferencing(HD PremiumⅢ)の導入に向けたプロジェクトは、2018年11月ごろにスタートし、2020年4月にカットオーバーされた。このタイミングで緊急事態宣言が発令されたことで、日鉄ケミカル&マテリアルにおいてもテレワーク7割の要請に対応し、出社率を3割以下に抑えることになった。
「緊急事態宣言が発令されたことで、導入したばかりのシステムが当初の想定以上に使われることになりました。そのためWebRTC接続でのオンライン会議を可能にするため、NTT Comには2020年4月から2021年3月末にかけて計6回の同時接続数の増強を依頼し、リソースを確保。突発的な事態に対してもリソースを柔軟に変えることができるクラウドサービスのメリットを実感しました。緊急事態宣言とシステムのリプレースが重なったのは偶然ですが、もし従来のオンプレミスのままであれば、テレワーク7割を実現することは難しかったと思います」
日鉄ケミカル&マテリアルではテレワークによるさらなる業務の効率化を進めるため、Microsoft Teamsの本格的な利用が始まり、両者を連携して使うようになったという。
「Microsoft Teamsを導入した後、テレビ会議システムと連携したいという声が大きくなっていました。TV Conferencing(HD PremiumⅢ)は、Microsoft TeamsやSkype for Business(2021年7月末にサービス終了)とも接続もサポートされているため、それらのコミュニケーションツールと連携することで、オフィスにいる従業員は会議室に集まり、テレワークの従業員は自分のパソコンでMicrosoft Teamsを使って接続することでストレスなくテレビ会議が行えています」
TV Conferencing(HD PremiumⅢ)には、使い方やトラブル発生時の対応、保守手配を一元的に対応するヘルプデスクが付属しており、24時間365日、日本語と英語でサポートを受けることができる。これまで、接続方法や外部デバイスを認識しないといったお問い合わせに社内で対応していたが、これらをアウトソーシングできるようになったことで、ピーク時は1日の7割を費やしていた保守運用の業務稼働を1割程度まで減らすことができ、テレワークや既存業務のデジタル化など戦略的なIT施策に使えるようになった。
「コロナ禍で日々状況が移り変わる中で、これからも在宅勤務をはじめとするテレワークとオフィス勤務の両面での対応をしていく方針です。さまざまな施策を通じて“場所にとらわれない働き方”をさらに推進していきたいと考えています」
テレワークが急速に広まり、テレビ会議はビジネスにおける不可欠なコミュニケーションツールとなっている。自社で設備を持つ必要がなく、柔軟なリソースとマルチデバイス接続ができるクラウド型テレビ会議サービスは、テレワークを効率化し生産性を高めるための有効なソリューションとなるはずだ。
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日鉄ケミカル&マテリアル株式会社
事業概要
新日鉄住金化学株式会社と新日鉄住金マテリアルズ株式会社が経営統合し、2018年に発足。統合後はコールケミカル事業と化学品事業を主力としつつ、両社が持っていた技術を融合し、日本製鉄グループの一翼を担う企業として体制を整えている。
URL
https://www.nscm.nipponsteel.com
(PDF形式/709KB)
(掲載内容は2021年5月現在のものです)
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