テレワークの実施は社員の「働く幸せ度」を高めている?下げている?

テレワークの実施は社員の「働く幸せ度」を高めている?下げている?のイメージ

公開日:2022/09/12

テレワークが定着し、新しい労働環境のもとで新しい生活スタイルを見出した人も多いことでしょう。また、リゾート地などで休暇をとりながら仕事をする「ワーケーション」という言葉も一般的になってきました。

一方、こうした働き方の変化で、これまでよりも幸せを実感している人と、そうでない人がいます。
それぞれどのような傾向があるのでしょうか。また、解決策はあるのでしょうか。

「働く幸せ」につながるテレワーク形態とは

パーソル総合研究所の調査によると、テレワーク実施者のなかでも、働く幸せの実感はテレワークの形態によって異なることが明らかになっています(図1)。

図1

図1 テレワークが幸せ・不幸せに与える影響
(出所 パーソル総合研究所×慶應義塾大学 前野隆司研究室 「はたらく人の幸せに関する調査【続報版】」)
https://rc.persol-group.co.jp/thinktank/data/well-being-telework.html

在宅勤務ははたらく幸せを向上させ、かつ不幸せの軽減にも寄与しています。カフェなどで仕事をするモバイルワーク、リゾート地から仕事をするワーケーションも、はたらく幸せの実感につながっています。

一方サテライトオフィスや、通勤圏外から仕事をする遠隔勤務については、はたらく幸せの実感にはつながっていないという結果です。

テレワークといっても、その形態によって従業員の意識が大きく変わることがわかります。
テレワークの頻度による有意な差は認められなかったということです*1。頻度よりも形態のほうが重要だということがわかります。

「はたらく幸せ」と「不幸せ」を分解してみる

次に、はたらく幸せと不幸せをそれぞれ7つの因子に分けた場合の意識変化は下のようになっています。

まず、はたらく幸せについてみてみましょう(図2)。

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図2 テレワーク実施の有無による「はたらく幸せ」因子
(出所 パーソル総合研究所×慶應義塾大学 前野隆司研究室 「はたらく人の幸せに関する調査【続報版】」)
https://rc.persol-group.co.jp/thinktank/data/well-being-telework.html

全ての因子において、テレワーク実施者のほうが出社社員よりも高くなっていることがわかります。

しかし、「はたらく不幸せ」については少し様子が違います(図3)。

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図3 テレワーク実施の有無による「はたらく不幸せ」因子
(出所 パーソル総合研究所×慶應義塾大学 前野隆司研究室 「はたらく人の幸せに関する調査【続報版】」)
https://rc.persol-group.co.jp/thinktank/data/well-being-telework.html

多くの因子ではテレワーク実施者のほうが不幸せ要素は減っていますが、「オーバーワーク」という現象はテレワーク実施者の方が高く感じているようです。

NTTコミュニケーションズがリモートワーク勤務者を対象に実施した社内調査では、通勤時間がなくなったことで逆に早い時間から仕事を始める社員が多く見受けられました。一方で就業時間はリモートワーク実施前と変わらないため、結果として勤務時間が長くなり、残業時間が増加していることがわかっています。

年齢によって異なる「はたらく幸せ」「はたらく不幸せ」

そしてこれらの要素を年代別に見ると、大きな発見があります(図4)。

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図4 年代別 テレワーク実施有無とはたらく幸せ因子
(出所 パーソル総合研究所×慶應義塾大学 前野隆司研究室 「はたらく人の幸せに関する調査【続報版】」)
https://rc.persol-group.co.jp/thinktank/data/well-being-telework.html

テレワーク実施による「はたらく幸せ実感」が、20代で極度に低くなっていることがわかります。
具体的には「チームワーク因子」「他者貢献因子」の2つが、テレワーク実施によって悪化しています。

ここには社会人生活への「慣れ」の度合いが関係しているように感じられます。

みなさんは新入社員のとき、どんなことを楽しみにしていたでしょうか。

同僚とその日の出来事や不安・愚痴を共有すること、先輩や顧客に褒められることでモチベーションが上がった記憶はないでしょうか。前者はチームワーク因子であり、後者は他者貢献因子のひとつと言えます。

新入社員研修のみならず入社式までもリモートにする企業が出てくる中で、帰属意識すら感じられないまま漠然と仕事をさせられている、そのような環境が幸せ実感につながることはないでしょう。

一方で30代以降、家庭を持ったり、公私の差をつけたりすることに慣れてくる世代では、リモートワークによって幸せ実感を得られやすいと考えられます。

なお、不幸せ実感の因子は下のようになっています(図5)。

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図5 年代別 テレワーク実施有無とはたらく不幸せ因子
(出所 パーソル総合研究所×慶應義塾大学 前野隆司研究室 「はたらく人の幸せに関する調査【続報版】」)
https://rc.persol-group.co.jp/thinktank/data/well-being-telework.html

これもまた年代によって様子が大きく異なります。20代、30代で「自己抑圧因子(自分なんて、と感じてしまう)」が強く、40代、50代のマネジャー・管理職層に「オーバーワーク」が見られます。

先にも述べたように、テレワークに移行したことで管理職の仕事は煩雑になっているようです。

このように、年代によってテレワーク実施で生まれる「幸せ感」と「不幸せ感」は大きく異なるのです。

テレワーク時代にこそ交流場所を

では、テレワークの導入によって若い人に生じる「チームワーク因子」「他者貢献因子」の不足や「自己抑圧因子」、そしてマネジャー層に生じる「オーバーワーク」因子について、うまく付き合う、あるいは対処する方法はあるのでしょうか。

まず参考にしたい事例のひとつに、サイボウズの取り組みがあります。

サイボウズは社内チャットツールに多くの「スペース」を設置しています*2。会社全体、課単位、プロジェクトチーム単位といったものだけでなく、「お金の話」「新しいアイデアの話」といった目的別スペースもあります。

また、特徴的なのが「分報」と呼ばれる、業務に全く関係のない会話をするオープンスペースがあることです。

疲れた、お腹減った・・・まるでTwitterのようなつぶやきを自由に投稿できる場所です。
こうした場所で雑談や愚痴の場所があるだけでも救われることでしょう。

また、面白い実験結果があります。
オンラインでのコミュニケーションにVRアバターを使用したものです。

zoomなどのビデオチャットと2種類のVRアバター(ひとつは自分に似ているもの、もうひとつは自分に似ていないもの)の3種類で被験者がオンラインコミュニケーションをはかったところ、「自分に似ていないVRアバター」を介した場合が、最も自己開示が高かった、つまり本音を曝け出せていたといいます(図6)。

図6のイメージ

図6 実験で使用されたビデオチャットとVRアバターの種類
(出所 「オンラインコミュニケーションツールを比較し、自己開示の効果を検証 ―VRアバターはビデオチャットよりも素の自分をさらけ出す。―」東京都市大学)
https://www.tcu.ac.jp/news/all/20220412-41945/

ふとした不安を、楽なツールで吐き出していく。
テレワークに欠けがちなのは、そのような機会と空間です。そして、上記のVRのように、快適なツールを選ぶことです。また、漠然とした「幸せ」「不幸せ」を感じるのではなく、自分はどんな因子が満たされていないことに不満を感じているのかと分析してみることです。

テレワークを快適にこなしていくには、自分が抱えている困りごとや不安は自分だけのものではないと知ることからでしょう。
そして可能な限り業務外のコミュニケーションを取り、困りごとや打開策を共有していくことが「はたらく幸せ実感」への第一歩でしょう。

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この記事を書いた人

清水 沙矢香

2002年京都大学理学部卒業後、TBSに主に報道記者として勤務。社会部記者として事件・事故、テクノロジー、経済部記者として各種市場・産業など幅広く取材、その後フリー。
取材経験や各種統計の分析を元に多数メディアに寄稿中。

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