「仕事が嫌すぎる 辞めたい」時に読んでほしい。「働き方」に求めるべきものとは

「仕事が嫌すぎる 辞めたい」時に読んでほしい。「働き方」に求めるべきものとは

公開日:2022/10/05

どれほどおいしいものを食べたところで、時間がたてば必ずお腹がすく。
また、何かで成功を収めたとしても、その喜びは永遠には続かない。
諸行無常と言ってしまえばそれまでだが、人が満ち足りた状態を保つのは、そう簡単なことではない。

それは仕事も同様で、多くの人々は自分が本当に望む職業や働き方を求めてさまよい続ける。
だが、職種や条件など何もかも納得のいく仕事に就き、なおかつ働くことに喜びを感じられている人となると、そう多くはないはずだ。
そこでたいがいの人は現実と妥協するわけだが、中にはさまざまな理由から志望とは全くかけ離れた仕事に従事し、鬱屈とした日々を送る方とていることだろう。

では、そのような満たされない労働と、いかに向き合えばよいか。
自分の経験では、苦難の中でしか得られない体験や感動、気付きを探し求めることこそ、その時間に価値を与えると思っている。

悲しみの中から生まれるストーリーは、人の心を動かす。
例を挙げれば、漢詩において後世に名を残した大家の多くは、不遇の身を憂い、衰えゆく国を嘆いた非業の人によるものである。

また、米南部で生まれたブルースは黒人たちの魂の叫びであり、その文化は彼らの悲しみと不可分のもの。
他者に、そして時には自分自身に語るべき物語は、逆境の中でこそ生まれるーー。

そのような筆者の持論について、今この瞬間も頑張って働いている皆さまにエールを送る意味も込めて、以下語ってみたい。

失意の中でこそ人は自分の過ちに気づく

挫折から立ち上がる中で、人は多くのことを学ぶ。
筆者の親友がまさにその典型で、かつては尖った心で無意識に人を傷つけていたが、今では別人のように温かみのある男になった。
キッカケは、人生がノッていた30代の頃にバイク屋を始め、1年と経たずにつぶしてしまったことだった。

元は腕のいいエンジニアであり、独立以前はかなり稼いでいたものの、負けん気が強くて人とぶつかることも少なくなかった彼。
それが愛されるのは駆け出しの頃だけということを理解せず、同じ調子で客を選び、友達まで選別し始めて、大丈夫かと思っていた矢先のこと。
彼は店をひっそりと畳み、プライドが許さなかったのか誰にもそのことを言わなかった。

筆者が彼と普通に会えるようになったのは、だいぶ月日が経った後。
電気工事士となっていた友人の言葉には、刺々しさがすっかりなくなり、むしろ熟成した古酒のような深みが生まれていたのだった。
仕事内容は屋外配電設備の保守点検で、彼のシフトは深夜のみ。
冬場には身も凍る寒さの中、明け方までひとりで黙々と作業をするのだという。

「誰かに働きぶりを見られるわけでもなく、褒められるわけでもない、でも絶対手は抜けないっていう大変な仕事だよ。
作業終了の報告をしたら『お疲れ様』くらいは言われるけれど、まあ心なんてこもっていないよね。
これが、本当に辛い。
寒さとか仕事内容の大変さなんかより、感謝されている実感を持てないのが、よっぽどキツくて、モチベーションを保てないんだよ。
バイクでメシを食っていた頃は、仕事なんて相手に喜ばれて当たり前と思っていたから、分からなかったんだね」

彼いわく、地味だけどこの人たちがいないと世の中が回らないという仕事は世の中にたくさんある。
だが、それらに従事する人々に感謝してきたかといえば、自身がその仕事に就くまでは、はっきり言って意識してこなかったという。

「要は、俺には驕りがあったんだね。
仕事は頼まれるから受けてやっている、スタッフは使ってあげているっていう。
それだけでなく、当時たくさんいたはずの目立たないけれど俺を支えてくれていた人たちに対しても、何のケアもしてこなかった。
そりゃ商売をやっても失敗するよなって、つくづく思ったよ。
過去は過去だから、元には戻せない。
でも、今は本当にちょっとした感謝の気持ちが、身に染みるようになったんでね。
少しは成長はできたって思ってる」

そういって彼が語り出したのは、老夫婦が切り盛りする行きつけの夜鳴きそば屋の話。
仕事でトラブルが重なり、もう限界だというメンタルの時に店を訪れ、いつものようにそばを頼んだ時のこと。

「そこのオヤジさんはちゃんと常連客のこと、見てるんだよね。
何も言わず、頼んでもいないのに卵と小さなかき揚げを、乗っけてきたんだよ……!
もちろん心の中で『オヤジ、ありがとうな』って感謝しながら完食した。
忘れられない、でもいつもの味だよ。
俺も次に商売をやる時は、そのオヤジさんみたいな温かい心を持ちたい、そう思ってる」

まあ、いい年だから注文を間違えただけっていう可能性も、ゼロじゃないんだけどね……と話す彼。
それはかつて、「まだ人に使われて働いてるの?」などと言っていた者と、とても同一人物と思えないほど謙虚さと優しさに満ちていた。
彼のように、失意の時にしか得られない気づきや、自分を磨く貴重な経験は確かにある。
それを後の人生に活かせるかどうかで、今の苦しみの意味は大きく変わってくる。

仕事の苦難は望まなくても向こうからやって来る

そしてここから、筆者自身の話。
今でこそ中国住まいの身ではあるが、かつては日本の中堅出版社で、泥沼のハードワークに携わっていた。
編集の仕事は今でこそマトモな働き方の職場も増えたが、かつてはブルーカラー以外の何物でもなく、残業、徹夜は当たり前。
念のため言っておくと、これはいわゆる「寝てない」「頑張ってた」アピールではなく、それだけ異常な働き方がまかり通っていたことを皆さまに伝えるのが目的である。

だが、当時自分にとって最も苦しかったのは、労働時間が過労死レベルであったことよりも、社員同士のむきだしの敵意だった。
部署長はすべからく暴君タイプであり、部下のミスとも呼べないミスに対し、人格否定にまで踏み込む説教をする。
叱られた部員は、その不満を自分より下の立場の者にぶつけてくる。
時には下剋上もあり、部下が結託してデスクや副編集長クラスを吊るし上げるーー。

なぜそんなことが行われていたかというと、「数字が全て」という鉄の掟があり、雑誌の実売率が数%でも落ちようものなら、必ず原因究明が行われる。
そして、その責任が個人に帰結しないと組織が納得しなかったためである。

加えて、一応クリエイティブな業種であり、作り手はそれぞれ仕事に対して思いを持っているため、決して言われっぱなしではない。
会議は毎度紛糾し、終電の時間が過ぎても罵り合いが続いて、最後は取っ組み合い寸前になるーーこんなことを長年やっていた。

慣れとは怖く、最悪の環境でも長く身を置いていると心が麻痺してしまうものだが、ある日新しく入ってきた同僚がポツリと言ったひと言で、自分はおかしさに気づくことができた。
不毛な会議が終わり、さんざん罵詈雑言を聞いた明け方前、会議室に残ったその同僚と始発待ちをしていた時のこと。
さぞかしとんでもない会社に来てしまったと後悔しているだろうと思い、初会議の感想を聞くと、実に味わい深い言葉が帰ってきた。

「出版って、読者に言葉を伝えるのが仕事でしょう。
それに携わっている人たちが、あんな形でしか自分の思いを表現できないのって……悲しいですね」

うん、その通りだ。
それが全て、他の言葉を必要としない明確な感想だった。

この悪習を変える力は、今の自分にはない。
でもせめて、人に言葉の刃を向けるのはやめよう。
自分が部員を持つ立場になったら、せめて部署内だけでもこういう仕事のやり方はなくそう。

そうしてその後数年して部署長になった自分は、ギスギスした社内に小さなパラダイス、と言えるほどのものではないが、少なくとも部員同士が敵ではなく、大事な仲間と思える編集部を作ったつもりである。

彼の言葉がなかったら、おそらく自分は上司の教えそのままに純粋培養された暴君になっていただろう。
世の中に、大きな声を出して、相手を傷つけてまで言わないといけないことなんて、ごくわずかしかないはずだ。
気づいてしまえば当たり前のこととはいえ、やはりあの長く苦しい時間を経て、心底嫌になっていたからこそ、彼の指摘がストンと腹に落ちたのだと思っている。

むろん、誰にとっても都合よく、辛い仕事の中で発見があるとは限らない。
ちなみに、よく世間で言われる言葉に「苦労は買ってでもしろ」というものがあるが、これこそ古い働き方とセットの思考。
自己犠牲こそ美徳として、不条理を覆い隠した時代遅れの観念であると思う。

今の若い人が、何もわざわざ自分から苦しみの中に飛び込む必要なんて全くない。
そんなことをしなくても、避けられない困難とは望む望まないに関わらず、ある日突然わが身に降り掛かってくるものだ。
その時に心折れることなく、次に繋がる糧を見つけ出すことが大事なのである。

今は辛くても、きっとその中にお宝がある。
そして未来にはきっと、よりよい働き方に出会える。
そう信じて力強く、前へ前へと進んでいこう。

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この記事を書いた人

御堂筋あかり

スポーツ新聞記者、出版社勤務を経て現在は中国にて編集・ライターおよび翻訳業を営む。趣味は中国の戦跡巡り。

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