【弁護士が解説】フリーランスに関する法律入門|副業を始める人が知っておくべきこと

【弁護士が解説】フリーランスに関する法律入門|副業を始める人が知っておくべきこと

公開日:2022/10/11

新型コロナウイルス感染症の影響でテレワークが普及したことにより、通勤時間が浮いた分、副業に取り組もうとする会社員の方がかなり増えました。

副業の形としては、本業とは別の会社に雇われて働くパターンもあり得ます。しかし多くの場合は、業務委託のフリーランスとして副業を行うことになるでしょう。

副業をするに当たっては、会社員と同時にフリーランスであるという意識を持って、フリーランス特有の法律上の注意点を知っておく必要があります。

今回は、フリーランスの方が知っておくべき法律上のポイントをまとめました。

副業フリーランスが注意すべき、業務委託が雇用と異なるポイント

フリーランスは、発注する事業者と「業務委託」契約を締結します。業務委託は、正社員が会社と締結している「雇用」契約とは全く異なるものです。

したがって、副業でフリーランス活動を始めるに当たっては、少なくとも「雇用」と「業務委託」の違いについて、法律上の基礎知識を備えておいた方がよいでしょう。
特に、フリーランスとしての独立を視野に入れている場合には、雇用の場合に受けられた法律上の保護がなくなる点に注意が必要です。

具体的には、業務委託は以下の点で雇用と異なります。

業務委託は打ち切られやすい

会社が一方的に雇用契約を解除すること(解雇)は、「解雇権濫用の法理」によって厳しく制限されています(労働契約法16条)。
期限の定めのある雇用契約であっても、「雇い止め法理」(同法19条)や「無期転換ルール」(同法18条)によって、期間満了による契約終了が制限される場合があります。

これに対して業務委託の場合、雇用に関する上記のルールが一切適用されません。また、業務委託契約の期間は、比較的短期に設定されるのが通常です。

そのため、発注する事業者の都合により、業務委託は容易に打ち切られる可能性がある点に注意しましょう。

業務委託は受注量が不安定

雇用契約の場合、必ず基本給が設定されるため、基本給分の収入は最低限確保できます。

これに対して業務委託の場合、発注量の最低保障が定められることは稀です。そのため、受注できる仕事の量が安定せず、収入が不安定になる可能性があります。

業務委託には最低賃金がない・残業代も発生しない

雇用契約に従って支払われる賃金は、都道府県および産業ごとに定められる「最低賃金」を上回っていなければなりません。また、所定労働時間を超えて働いた場合には、残業代の支払いを受けられます。

これに対して業務委託の報酬は、純粋な仕事の成果に対して支払われるのが一般的です。最低賃金も適用されず、残業代も発生しません。

そのため、フリーランスとしての仕事に不慣れな場合には、作業時間が想像以上に嵩んでしまい、「時給」が著しく低くなってしまう可能性がある点に注意が必要です。

業務委託は社会保険の加入対象外

雇用の場合、フルタイムおよび勤務時間等の要件を満たすパートタイムの方は、社会保険(健康保険・厚生年金保険・雇用保険)への加入が義務付けられます。会社が保険料の半額を負担してくれるほか、疾病・年金・失業に関して手厚い保障を受けられるのがメリットです。

これに対して業務委託の受注者は、社会保険への加入対象となりません。
会社員が本業の方であれば、会社の方で社会保険に加入できます。しかし、フリーランスとして独立する場合には、国民健康保険・国民年金への切り替えが必要となる点に注意しましょう。

「偽装請負」による搾取に注意

雇用で働く会社員は、業務のやり方・勤務時間・時間配分などに関して、会社の指揮命令に従う必要があります。さらに、就業規則などの社内規程に従うことも必要です。

これに対して、業務委託で働くフリーランスの方は、業務のやり方・勤務時間・時間配分などについて、発注する事業者からの具体的な指示に従う必要はありません。就業規則などの社内規程も、フリーランスには適用されません。

フリーランスには雇用のような保障がない代わりに、自由な働き方ができる点が魅力です。しかし、中にはフリーランスを従業員であるかのように指揮命令下に置き、保障を与えずにこき使おうとする悪質な事業者も存在します。

業務委託のフリーランスに対して、事業者が業務のやり方・勤務時間・時間配分などの具体的な指示を行うことは、「偽装請負」と呼ばれる違法行為です。もし発注する事業者から偽装請負と思われる指示を受けた場合には、取引の打ち切りもご検討ください。

フリーランスを守る法律|下請法上のチェックポイント

零細事業者であるフリーランスは、発注する事業者から搾取されやすい立場にあります。

そんなフリーランスを守ってくれるのが、「下請代金支払遅延等防止法」(下請法)です。副業フリーランスとして活動する場合には、下請法上のルールを理解して、事業者からの搾取を回避しましょう。

下請法に基づく親事業者の禁止事項

下請法は、資本金が1,000万1円以上の事業者(親事業者)が、個人事業主のフリーランス(下請事業者)に業務を発注する場合などに適用されます。

下請法の適用を受ける親事業者は、以下の行為が禁止されます(下請法4条)。

・下請事業者の責任によらない納品物の受領拒否
・下請代金の支払遅延
・下請事業者の責任によらない下請代金の減額
・下請事業者の責任によらない納品物の返品
・著しく低い下請代金の設定(買いたたき)
・正当な理由のない自社製品等の購入、利用強制
・公正取引委員会等への報告を理由とする不利益な取扱い
・下請代金の支払期日よりも前に、原材料費等を控除すること
・下請代金の支払期日までに割引困難な手形の交付
・経済上の利益の提供を不当に要請すること
・請事業者の責任によらない給付内容の変更、やり直し

副業フリーランスが陥りやすい搾取事例

特に副業フリーランスの方は、事業者から以下の2つのパターンの搾取を受けがちです。いずれも下請法違反に当たりますので、違反事業者を発見したら公正取引委員会に報告しましょう。

①一方的な仕様変更による納品のやり直し
発注後に事業者都合で納品仕様を変更し、当初の仕様に従って納品したフリーランスに無報酬でやり直しを命じることは、下請法違反に当たります(下請法4条2項4号)。

②納品後、一向に代金が支払われない
下請代金の支払期日は、納品から60日以内かつ、できる限り短い期間内で定められなければなりません(下請法2条の2第1項)。
「検収が済んでいない」などの理由で、納品から60日を超えて下請代金を支払わないことは、下請法違反に当たります(下請法4条1項2号)。

参考:
下請法違反についての報告の受付|公正取引委員会

正社員の本業と副業を両立させるための注意点

正社員として会社で働きながら副業を行う場合には、本業と副業のバランスを取ることも大切です。 これまで解説したフリーランス(副業)に関する法律上の注意点を踏まえて、ご自身にとって理想的な働き方を見つけてください。

会社の就業規則違反に注意|副業ルールの確認を

本業の会社の就業規則では、副業に関する制限が設けられている場合があります。 届出制・許可制・一切禁止など、副業に関するルールは会社によってさまざまです(なお、副業を一切禁止する内容の就業規則は有効性に疑義があります)。 会社から懲戒処分を受ける事態を避けるためにも、副業を始める際には、あらかじめ就業規則上の副業ルールを確認しておきましょう。

受注量をコントロールして、心身のバランスをキープ

本業に加えて副業も行う場合、どうしても日々の業務量は過多になりがちです。 本業の業務量をコントロールするのが難しいとしても、副業の受注量はある程度ご自身でコントロールできます。 ご自身のキャパシティやワークライフバランスを考慮して、副業の受注量を適切に調整し、心身のバランスをキープしてください。

フリーランスとしての独立は慎重な検討を

これまで解説したように、フリーランスは会社員に比べて働き方が自由な一方で、非常に不安定な立場に置かれています。 副業が軌道に乗ったとしても、会社を辞めてフリーランスとして独立すべきかどうかは、熟考を要する事項です。フリーランスのデメリットを十分に理解したうえで、独立がご自身にとって最良の選択肢かどうかを適切にご判断ください。

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この記事を書いた人

阿部 由羅

ゆら総合法律事務所代表弁護士。西村あさひ法律事務所・外資系金融機関法務部を経て現職。企業法務・ベンチャー支援・不動産・金融法務・相続などを得意とする。その他、一般民事から企業法務まで幅広く取り扱う。各種webメディアにおける法律関連記事の執筆にも注力している。

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