オンラインの時だけ別人に!?テレワークで気をつけたい無意識の人格変化
公開日:2022/10/18
面と向かえば話の分かる人だけど、メッセージのやり取りでは途端に当たりがキツくなる。
はたまた、単なる業務連絡を相手に変に捉えられ、気が付けば互いにヒートアップしてレスバトル状態ーー。
対面でのコミュニケーションに比べ、メッセージアプリやテレビ会議のやり取りでは時として誤解が生じがちなもの。
それが単なるボタンの掛け違いなら別に大したことはないのだが、相手がオンラインの時だけまるで別人格のようになるタイプだと、話はかなりややこしい。
また、これは何も相手に限った話ではなく、自分自身にも言えること。
自宅にこもって仕事をしていると、対面コミュニケーションの機会はどうしたって減ってくる。
そんな中、あなた自身とて内面に変化が起きない保証はないのである。
あらかじめ言っておくと、テレワークとはこれからの時代に合った働き方であり、仕事の効率を高める上にさまざまな無駄・コストを省けるなど、圧倒的にメリットの大きいもの。
だが同時に、今後テレワークがより普及していくことが予想される中、起こりうる問題についても思いを馳せ、対策を講じておく必要がある。
具体的に言えば、自宅で仕事をしていてもオフィスにいるのと変わらない勤務態度やメンタリティー、他者へのホスピタリティーを保てるようにすることだ。
本稿ではこの問題について、筆者自身の中国テレワーク経験および友人たちの話も交えつつ語ってみたい。
テキストだけでは真意が伝わらないこともある
筆者は中国を拠点に書き物を生業としており、日中両国のクライアントから仕事を受けているのだが、基本的に自宅で業務を完結できるワークスタイルである。
コミュニケーションはできるだけメッセージで済むようにして、必要なら電話、それでも駄目ならビデオ通話というのが優先順位。
理由は、このやり方が最も時間を節約できるからだが、それでも日本の仕事ではヴァーチャル対面というべきビデオ通話をマメに行わなければならないと思っている。
自分の仕事について言うと、中国側のクライアントはまずメッセージオンリーで問題ない。
こちらではコロナ禍の影響でテレワーク移行が進み、相手が対面でのやり取りを必要としない働き方に慣れている。
また、中国の人々はとにかくしゃべるのが好きなので、下手に電話やビデオ通話を使ったりすると壮大な無駄話を聞かされかねないということもある。
それに対し、日本のクライアントとのコミュニケーションでは、文章のやり取りだけではすれ違いが往々にして生じる。
仕事が順調な時は大概何事もないのだが、こみ入った折衝が必要になったり、トラブルになったりした時に問題が表面化しやすいのだ。
まず挙げられるのは、単純に先方の「国語力」に問題がある場合。
相手はビジネスマナーを守って返信しているつもりなのだろうが、読みようによっては無礼としか思えない言葉が投げかけられたりする。
普段から仕事やプライベートで文字を使ったアウトプットに慣れている方なら問題ないものの、過去のキャリアにおいて全てオフラインで仕事を進めてきたベテラン勢の中には、慇懃無礼な文面を平気で送り、しかも相手を不快に思わせていることに無自覚なケースが見られる。
「条件はすでにお伝えしてあります。こちらの指示通りやっていただければそれで結構です」
これは最近、とある年配のクライアントから受けたメールの一部分だが、こんな一見丁寧な文章も、捉えようによってはカチンと来るもの。
ただ、それは相手が自分の真意を正しく文字化できていない可能性もあると考え、むやみにこちらまで熱くならないことが大事である。
次によくあるのは、先方が気分で仕事をするタイプ、もしくは切羽詰まったり追い込まれたりした状態で相手の心に余裕がないケース。
こちらからすればとばっちり以外の何物でもないが、先方の顔が見えない以上、これまた文面から察することは簡単ではない。
普段のコミュニケーションと比較して突然強い言葉が返ってきたり、メッセージに攻撃的なものを感じた場合、脊髄反射のごとく自分も同じノリで返信するのは悪循環。
上記いずれの場合でもトラブルを避けるコツは、こちらが自制心を保って言葉のエスカレーションを避けること、そして手間ではあるが電話、もしくは可能ならビデオ通話で真意を確認すること、これに尽きる。
普段は常識人であってもクレームや問い合わせになるとやたらと荒ぶる方は、皆さんの周りにもきっと少なからずいるはずだ。
よほどサディスティックな性格であったり、他者の気分を害することに痛みを覚えない人であったりしない限り、普通は顔の見える相手に対してそう強い言葉はかけられないもの。
家で仕事をしていると、面倒な上司や取引先、同僚などの顔を見なくて済むならそれに越したことはないとの思いに囚われがちだが、いらぬ誤解やすれ違いを避けるためにも、文字以外のコミュニケーションツールを積極的に使っていくべきだろう。
テレワークは心の温もりまでも省くものではない
さて、言うまでもないことだが、いくらテレワークとはいえ自宅に引きこもってばかりいて、そのうえ仕事で鬱々としたものを抱えていたりすると、メンタルに悪影響が生じがちだ。
ところが、中にはそういうのが全く苦にならないタイプもいる。
「新型コロナの発生後、日本では外出自粛とか自主行動規制が呼びかけられましたよね。
そこでいろんな不満の声が上ったわけですが、私自身は何とも思っていなかったので、世間とのギャップを感じました。
何しろ自分の場合、10年以上前からテレワークに完全移行していたこともあり、正直言って『えっ、みんなコロナで我慢しているの?』という感じで。
そもそも私は他者にあまり関心がないので、逆に他人に興味を持てる人にとっては、その気持ちを満たせないのってストレスなのだなと改めて思いました」
そう語るのは筆者の長年の知人であり、出版界では知る人ぞ知る天才肌のデザイナーである。
知り合いと会うのは年に数度、たまに電話をすると「1週間ぶりにまともにしゃべりました」などと言ってくるこちらのお方は、当然ながらレアケース。
筆者は自宅仕事メインのフリーランス勢と多々お付き合いがあったけれども、大抵は誰しも他者との交流を持ちたいと考えているものであり、皆さんそれぞれ巣ごもり仕事の中で孤独を避ける努力をしていたように思う。
20代からフリーのデザイナーとして一本立ちしている既婚者の友人は、次のように話す。
「一人で仕事をしていて誰とも会わないと、自分で考えて、自分で答えを出して、また考えて……っていう繰り返しで、気づかないうちに考えが凝り固まりがちなんですね。
そんな時、誰かがそばにいれば『それ違うんじゃない?』って言ってくれて、軌道修正ができると思うんです。
僕の場合は娘がいるのでパパ友つながりで仕事以外の人間関係を広げたりと、ささいなことですが人との接点を意識して作るようにしています。
ただ、やっぱり仕事のことは、仕事でつながりのある人でないと的確な意見って来ないというのが僕の考えで、月1とかでいいのでクライアントさんとは対面で打ち合わせの機会を作ってもらっていたんです。
もっとも、その習慣もコロナ前までで、今はアプリを使ってビデオ通話でいいのかなと思うようになりました」
このように時代に順応できている人もいる一方、ひたすら自分の殻に閉じこもって心をこじらせてしまう方もいる。
そもそもテレワークというのは勤務姿勢や仕事へのモチベーション、メンタル面に至るまで、オフィスで仕事をする以上に自己管理が求められるものだ。
とどのつまりは自らの責任なのだが、だからといって同じ職場で働く仲間を放ったらかしていいわけではない。
メッセージでのやり取りやテレビ会議などで同僚の変調を感じ取ったら、できる限りの心配りをし、仕事面でサポートする。
机を並べて仕事をしていなくても、そういった社員同士の良好なムードや交流を作り出すことは重要であり、それはチームリーダーだけでなく各部員も気遣うべきことだ。
むろんこれが理想論であることは私自身、百も承知であり、下手なやり方をすればテレワーク中の相互監視に陥りかねないと理解している。
それでも皆さまに訴えかけずにいられないのは、過去に度の過ぎた引きこもり仕事で人が変わってしまったスタッフを多く見てきているからである。
中国で暮らす筆者にはコロナ以前、2003年に起きたSARS流行を経験している知人がいる。
その方いわく、当時も自宅待機を強いられたそうだが、できることといえば毎日体温を測って報告することくらいでテレワークなんてできなかった、それに比べれば今はネットもスマホもあるから便利なものだとのことだった。
そう、確かにわれわれは今やオフィスに行かずとも、限りなく同じパフォーマンスを発揮できるさまざまなツールを手にしている。
それらを正しく活用し、ITが苦手な人にもしっかりとフォローをすれば、オンラインでの仕事運びに慣れていない人やそもそもコミュニケーションが得意でない人などを置き去りにすることなく、組織全体でよりスムーズにテレワーク移行が可能となるはずだ。
ITの活用は多くの無駄を省けるが、人の心の温かさまでも排除するものであってはならない。
このことを肝に命じ、一人でも多くの方が健やかなテレワーク生活を享受できることを願いたい。
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この記事を書いた人
御堂筋 あかり
スポーツ新聞記者、出版社勤務を経て現在は中国にて編集・ライターおよび翻訳業を営む。趣味は中国の戦跡巡り。