テレワーク中の若手との結束を「キャンプ場」で強めた経営者の話

テレワーク中の若手との結束を「キャンプ場」で強めた経営者の話

公開日:2022/10/25

コロナウイルスの流行が続き、働き方や働く場所もさまざまに変化しています。
そのなかのひとつとして注目されているのが「ワーケーション」です。

「ワーク」と「バケーション」を合わせた造語で、帰省先や旅行先、リゾート地で仕事をするという新しい働き方のことをさす言葉です。

さらに、近年では屋外での通信環境も整っています。よって「キャンプ」もそのうちのひとつに入ることでしょう。

宿がある場所とは違い、「キャンプ」という場所を新しいコミュニケーションの場所にしていった経営者がいます。

テキストだけでは真意が伝わらないこともある

エン・ジャパンが35歳以上のユーザー2420人から回答を得たワーケーションに関するアンケート調査では、ワーケーションの認知度は約7割、ワーケーションを「してみたい」という人の割合は約6割にのぼっています(図1、2)。

図1、2 ワーケーションに対する意識
(出所:「ミドル世代の「ワーケーション」意識調査―『ミドルの転職』ユーザーアンケート―」エン・ジャパン)
https://corp.en-japan.com/newsrelease/2021/25052.html

若い世代ほど興味が高いことがわかります。

一方で、ワーケーションを「したことがある」という人はごく少数にとどまっています(図3)。

図3 ワーケーションをしたことがあるか
(出所:「ミドル世代の「ワーケーション」意識調査―『ミドルの転職』ユーザーアンケート―」エン・ジャパン)
https://corp.en-japan.com/newsrelease/2021/25052.html

その理由は、

・旅行、帰省先でまで仕事をしたくないから 53%
・社内で認められていないから 36%
・出勤しなければできない仕事だから 33%

といった具合です。

「キャンプ場で仕事をする」というワーケーションの形

さて、筆者は先日あるIT企業の経営者と偶然会い、近況について話す機会がありました。

彼はキャンプ、とりわけ「ソロキャンプ」を趣味としていて、気候の良い時期だけでなく雪の残る山中にでもひとりで赴く人です。
テレワーク中は、キャンプ場でひとり仕事をする日も多いのだといいます。まさにワーケーションとも言えます。

湖を目の前にしてくつろいだり、夜はストーブの炎を眺めたりするリラックス効果は大きく、静かな場所であるため仕事にも集中できるとのことでした。
社員とはオンラインでつながっていますから、必要な時に声をかけられます。

そして、ある頃から時々社員を誘うようになりました。

すると不思議なことが起きました。

夜、炎を囲んでいると、そんなにお酒を飲まなくても、社員たちは誰からともなくぽつぽつと自分語りをするようになったのです。
炎には何か、そのような力があるようです。

そこで、この経営者は、時折キャンプ場で会議を開くようになりました。アウトドアに苦手意識のある社員もいるためキャンプ場へは「自由参加」です。もちろん、会議だけ終えて帰宅することも可能です。キャンプ場とそれぞれの自宅、あるいはオフィスをZOOMでつなぐという形での会議を開くようになったのです。

しかしそれを繰り返すうちにキャンプ場への参加者が増えていきました。
興味を持つ社員が増えたのか、楽しそうだと感じたのか、参加した社員からの誘いなのか。その理由はそれぞれ異なることでしょうが、今や定例になっているということです。

テレワーク継続かオフィス回帰か

この経営者が開く「キャンプ場会議」は、対面とテレワーク(ワーケーション)を組み合わせたものとも言えます。

最近、大手企業の間ではテレワークに二極化の動きがみられます。

日本生産性本部の調査によると、企業のテレワーク実施率は2022年7月には16.2%であり、コロナ禍が始まった2020年5月の31.5%より大幅に減少しました(図4)。

図4 テレワーク実施率
(出所:「第 10 回 働く人の意識に関する調査」日本生産性本部)
https://www.jpc-net.jp/research/assets/pdf/10th_workers_report.pdf p20

企業規模別に見ると以下のようになっています(図5)。

図5 企業規模別のテレワーク実施率の推移
(出所:「第 10 回 働く人の意識に関する調査」日本生産性本部)
https://www.jpc-net.jp/research/assets/pdf/10th_workers_report.pdf p20

比較的テレワークを取り入れやすい大企業でも、実施率は下がりつつあります*1。

本田技研工業は2022年5月から、これまで「原則テレワーク」であったものを、出社を基本とする働き方に改めました。創業当時からの現場、現実、現物を重視するスタンスを重視したものです。
また、楽天も原則テレワークを改め、2021年11月から「週4日以上の出社」を促しています。長引く在宅勤務で生じる社員のストレスに配慮し、チームワークを向上させたい、としています。

一方でNTTコミュニケーションズはテレワークを基本とし、出社を「出張扱い」としています。地方からの出社の交通費・宿泊費は会社が負担します。
そのほか、東芝は国内連結子会社の従業員約7万人のうち事務部門など約4万4000人を対象に在宅勤務か出社かを選べるよう見直しました。

「働く場所」は人の数だけ可能性がある

ただ、これらの取り組みは、ある意味では「ひとりかオフィスか」という2つの選択肢に縛られたものなのかもしれません。

ここのところ「サードプレイス」という概念が注目されています。
自宅でもオフィスでもない第三の場所、という意味です。

そういった意味では、サードプレイスとして、キャンプ場やリゾート地を選ぶのはじゅうぶんな選択肢になりえます。
自宅でひとり、という孤独感を取り除くと同時に、オフィスというかしこまった場所ではない、その中間にある考え方とも言えるでしょう。
チームワークはオフィスでないと生まれない、という固定概念を覆すものでもあります。

コロナを機に、多様な働き方が生まれました。ただ、どのような働き方が最も生産性を上げるかは人それぞれでしょう。

自宅でひとり集中できる方が良い、オフィスで誰かと雑談できる方が良い、その半々が良い、ワーケーションという新しい形に興味がある…実に多様です。

しかしそれだけに、「働き方」によって勤め先を選ぶ人が増えてもなんら不思議はありません。働き方の自由度は、優秀な人材を呼び込み、離職を防ぐには重要な項目になりつつあります。

キャンプ場で会議をしてはいけない理由はどこにあるでしょうか?

人材流出を防ぐためにも今一度、「働き方」に対するニーズを再調査してみる必要がありそうです。

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この記事を書いた人

清水 沙矢香

2002年京都大学理学部卒業後、TBSに主に報道記者として勤務。社会部記者として事件・事故、テクノロジー、経済部記者として各種市場・産業など幅広く取材、その後フリー。
取材経験や各種統計の分析を元に多数メディアに寄稿中。

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