FIREにおける4つの形とは?実現のために必要な「資産寿命」を考えよう

FIREにおける4つの形とは?実現のために必要な「資産寿命」を考えよう

公開日:2022/12/27

令和4年現在、20代以上の人の親は昭和生まれで、日本の経済が成長し人口も増える時代を経験しています。
日本はバブル崩壊以降、低成長が続いています。そのため、親世代による子どものためのお金のアドバイスには、令和の日本では通用しないものがたくさんあります。社会の実情からズレたアドバイスを鵜呑みにしていては、将来お金に困るかもしれません。

この記事では、昭和生まれの親世代のお金の常識で、令和になって大きく変わってしまったものについて解説します。

昭和とはどんな時代だったのか?

20代以上の人の親世代が育った昭和とは、どのような時代だったのでしょうか。

終身雇用で勝手に給料が上がる

昭和の日本は、人口増加とともに経済がぐんぐん成長していました。
会社員の給料は勤続年数や役職によって上がっていき、新卒で入社した会社に定年まで勤め上げることも珍しくありません。60歳の定年退職時にはまとまった退職金を受け取り、公的年金の受給開始も60歳からでした*1。

図1 平均寿命の年次推移
出所)厚生労働省「令和3年簡易生命表の概況」 p2より引用
図1のとおり平均寿命も今より短かったので、老後資金の枯渇などを心配することもあまりなかったわけです*2。

定期預金で100万円が12年で2倍に

日本企業の多くが設備投資などのために資金の調達を必要としたため、金融機関の融資の金利が上昇していきました。融資の金利が上昇すれば、預金金利も上がります。

たとえば、郵便局の定額貯金の金利は1974年(昭和49年)9月・10月、1980年(昭和55年)4月14日から11月30日まで過去最高の年8.0%でした*3。

定額貯金は半年複利の商品で、利息が利息を生みます。100万円を預け入れると9年目に元利合計が約202万円となる、今では考えられないような高金利でした。
ほぼノーリスクでこの金利であれば、一般の人が株式などでリスクを取る必要はなかったのです。

令和の日本はどう変わったのか

日本企業の多くが設備投資などのために資金の調達を必要としたため、金融機関の融資の金利が上昇していきました。融資の金利が上昇すれば、預金金利も上がります。
たとえば、郵便局の定額貯金の金利は1974年(昭和49年)9月・10月、1980年(昭和55年)4月14日から11月30日まで過去最高の年8.0%でした*3。
定額貯金は半年複利の商品で、利息が利息を生みます。100万円を預け入れると9年目に元利合計が約202万円となる、今では考えられないような高金利でした。
ほぼノーリスクでこの金利であれば、一般の人が株式などでリスクを取る必要はなかったのです。

令和の日本はどう変わったのか

さて、経済成長の昭和から平成を経て令和になりました。約30年後の日本はどうなったでしょうか。

少子高齢化の影響

人口が増えれば経済は拡大し、反対に減ると縮小していきます。

図2 総人口の人口増減数および人口増減率の推移(1950年~2021年)
出所)総務省「人口推計(2021年(令和3年)10月1日現在)」より引用
https://www.stat.go.jp/data/jinsui/2021np/index.html
図2のとおり、昭和から平成にかけて日本の人口は増加し続けていましたが、徐々に増加率は下がっていきます。
2005年に初めて日本の人口は減少し、2011年以降は連続して減少するようになりました*4。

図3 年齢区分別人口の割合の推移(1950年~2021年)
出所)総務省「人口推計(2021年(令和3年)10月1日現在)」より引用
https://www.stat.go.jp/data/jinsui/2021np/index.html
さらに図3から、昭和初期にはわずかだった65歳以上・75歳以上の割合が増え、15歳未満の割合が減り続けていることがわかります*5。
つまり、少子高齢化が加速しているわけです。少子高齢化は、以下のようなさまざまな悪影響を及ぼします。

・人手不足
・ 経済の縮小
・年金制度の維持が困難に
・定年延長(長く働かなければならない)
・国の財政悪化

デフレ下で給料も上がらず

日本は1991年にバブル経済が崩壊し、以降低成長の時代に入ります。2000年以降は継続的に物価が下落するデフレになります*6。

デフレとともに働く人の給料も上がらなくなりました。

表1.一般労働者の月額賃金の推移(単位:万円)

出所)厚生労働省「令和3年賃金構造基本統計調査」を参考に筆者作成
https://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/chingin/kouzou/z2021/dl/01.pdf
表1は一般労働者の月額賃金の5年ごとの推移表です。20年間、ほぼ横ばいであることがわかります*7。
2013年以降はデフレ脱却に向かう中でも、依然として給料は上がりません。今後、物価が上昇した場合の生活に不安が残ります。

老後2000万円問題

2019年のいわゆる「老後2000万円問題」は、金融審議会市場ワーキンググループによる高齢化社会よって資産寿命も延ばす必要性があるという提言でした*8。

「老後資金が2000万円不足する」という不安をあおる内容ではなく、金融リテラシーを向上していくべきというものです。少子高齢化によって年金財政も悪化し、誰でも公的年金だけで生活するのは難しいでしょう。早くからそのことを認識し、準備していく必要があるということです。

令和では通用しない昭和のお金の常識

ここからは昭和時代には常識とされていて、今では通用しなくなったお金に関する常識を紹介します。

子どもが生まれたら学資保険

子どもが生まれると祖父母である親から「学資保険に加入するように」と言われる人は少なくないでしょう。
学資保険はかんぽ生命やその他民間の生命保険会社が取り扱う、子どもの教育費準備のための貯蓄型保険です*9。

学資保険の特色

学資保険には以下のような特色があります。

・子どもの進学などの節目のときに、祝い金や満期保険金を受け取れる
・契約者(親や祖父母)が死亡した場合に、保険料の支払いが免除される

学資保険には、子どもの入院時に給付金が受け取れる保障型と呼ばれるタイプもあります。保障型は保障のないタイプに比べて、支払った保険料に対する満期保険金などの返戻率が低くなります。

運用難で返戻率が100%を下回る商品も

預金金利が高かった昭和時代は貯蓄型保険の返戻率も高く、学資保険は魅力的な商品でした。親世代は貯蓄性のよさと郵便局の安全なイメージから、子どもにも学資保険加入を勧めるのでしょう。

しかし現在は超低金利による運用難で、どの保険会社も貯蓄性のある商品の返戻率を下げざるを得ない状況です。
たとえば、かんぽ生命の学資保険で試算してみましょう*10。

前提条件は

・契約者(親):33歳男性
・被保険者(子ども):0歳
・保険料払込期間:18年
・満期保険金額:300万円
・月額保険料:1万4,760円(医療特約なし)

この商品で「大学入学時の学資金準備コース」というお金の受け取りが満期保険金のみの場合、支払う保険料の合計は約319万円です。
満期保険金300万円に対する返戻率は約94%と、元本割れになります。学資保険の返戻率は保険会社によって異なるため、より条件のよい商品もあるでしょう。
いずれにしても増える金額はわずかで、多くの場合、途中で解約すれば支払った保険料を下回る金額しか戻ってきません。
学資保険にはかつてのような貯蓄としての魅力はなくなったのです。

教育費の準備手段は学資保険だけではない

ここで考えたいのは、子どもの教育費は「学資保険でないと準備できない」ものではないということです。
円建ての保険の貯蓄性が悪いのであれば、外貨建て保険や変額保険の活用も選択肢となるでしょう。

親が被保険者であれば、亡くなったときには死亡保険金が受け取れます。

外貨建て保険には為替変動のリスクがあり、変額保険には運用のリスクがありますが、支払った保険料より多くの戻りを期待できます。

また、保険商品に限らずつみたてNISAを活用して、投資信託をコツコツ積立てる方法も考えてみましょう。

元本保証ではなく将来の受取額も確定しませんが、長く積立てることでリスクを軽減しながら資産を育てていくやり方です。

たとえば、S&P500や日経平均など世界の主要な5つの株価指数に20年間積立投資をした場合に、どの株価指数も20年後には大きく資産が増える結果となっています*11。
いずれにしてもメリット・デメリットを比較して、自分に合う方法を検討することが大切です。

家を持ってこそ一人前

昭和生まれの親に「早く家を建てなさい。社会人は家を持ってこそ一人前だから」などと言われる人もいるようです。

また、「家賃を払い続ける賃貸住まいは損」という根強い考え方もあります。

しかし、誰にとっても家を持つことがベストな選択とは限らず、住宅取得は慎重に考える必要があります。

なぜなら、一度住宅を取得してローンを組んでしまうと、そこからの計画変更は難しいからです。

また、持ち家と賃貸は経済的なメリットだけで比較せず、自分のライフスタイルやライフプランに合うものを選択すべきでしょう。

持ち家のメリット・デメリット

持ち家の最大のメリットは、家が自分のものである点です。ローンを払い終えれば住居費をあまり気にせずに生活できるのは、長い老後には大きな安心となるでしょう。

賃貸住宅は家族で住める物件はあまりなく、家賃も高額です。子どもの人数が多い場合などは、住宅を購入してローンを組むほうが住居費を抑えられるケースも考えられます。

ただし、住宅を取得してから失業や病気などで収入が減ったとき、ローンの支払いが難しくなる可能性があります。

賃貸住宅であれば家賃の安い物件に引っ越すなどの方法がありますが、ローンのある家の処分は簡単ではありません。
持ち家は収入の減少に対応しにくいことを頭に入れておきましょう。

賃貸住宅のメリット・デメリット

賃貸住宅のメリットは引越が簡単にできるため、状況に合った住まいを選べる点です。

たとえば、結婚して夫婦2人のときは2DK、子ども2人になったら3LDKなどとちょうどいい間取りの住居に住めます。
また、入居したものの周辺環境に不満がある場合などは、再度引っ越すことも可能です。

最大のデメリットは、住んでいる限り家賃を支払わなければならない点です。

現役中はともかく、年金生活者になったときに限られた収入の中から家賃を支払い続けるのは難しい場合もあるでしょう。

また、大家さんの中には高齢者の入居を断る人もいます。

賃貸住宅にずっと住み続ける場合は、老後も家賃を支払い続けられるような資金計画を立てておきましょう。

投資はギャンブルと同じだからすべきではない

昭和世代の親の中には、「投資はギャンブルと同じで損をする。預貯金にしておきなさい」と言う人もいるでしょう。

銀行にお金を預けていればノーリスクでお金が増えた時代を経験している人にとって、株式や投資信託を買うことはギャンブルに等しいことのようです。

預貯金ではお金は増えない

先述のとおり、昭和からバブルがはじけるまでの日本は預貯金も高金利で、リスクを取った投資は特に必要ありませんでした。

しかし、その後日銀の金融政策などで金利は下がり続けています。

たとえば、みずほ銀行の2022年8月15日現在の定期預金の金利は0.002%で、100万円を1年間預けても受け取れる利息はわずか20円です*12。

元本保証ではありますが、預貯金でお金を増やすことはほとんど無理と言えます。

インフレから資産を守る対策としての投資

デフレの時代であれば預貯金でお金が増えなくても、問題にならなかったかもしれません。

しかし、預貯金の利率以上のインフレが起きると、資産価値は目減りします。

2022年8月19日に公表された2022年7月の消費者物価指数の総合指数は前年同月比2.6%上昇と、物価は上昇傾向を示しています*13。

たとえば、2%のインフレが続くと1万円は以下のように変化します。

2001年 30.58
2006年 30.18
2011年 29.68
2016年 30.4
2021年 30.74
経過年数 2%の上昇でいくらになるか(円) 10,000円の価値(円)
0 10,000 10,000
5 11,041 9,039
10 12,190 8,171
15 13,459 7,386
20 14,859 6,676
30 18,114 5,455

筆者作成

現在1万円で買えたモノが30年後には約1万8,000円と2倍近くになり、価値は約45%も目減りしてしまうのです。

老後のために預貯金でお金を貯めていた人は、インフレのために資金不足になるかもしれません。そうなれば「預金は安全」どころか、かえってリスキーな資産となります。

これに対し投資は将来の受取金額は確定しませんが、積立投資では長期的には資産が増える実績データもあり、インフレへの対応も期待できます。*11

投資未経験の人は、つみたてNISAなどで少しずつでも投資を始めるとよいでしょう。

まとめ

経済成長の昭和から平成のバブル崩壊を経て、日本は少子高齢化の時代を迎えています。
親から言われたお金の常識が通用しなくなったのは、人口減少と高齢化によって社会の構造が変わったためです。

昭和時代と同じことをしていては、長い人生を乗り切れなくなるかもしれません。親の助言はありがたく受け、自分の考えで行動するようにしましょう。

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この記事を書いた人

松田 聡子

明治大学法学部卒。金融系ソフトウェア開発、国内生保を経て2009年に独立系FPとして開業。企業型確定拠出年金の講師、個人向け相談全般に従事。現在はFP業務に加え、金融ライターとしても活動中。
保有資格:日本FP協会認定CFP・DCアドバイザー・証券外務員2種

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