「好き」を仕事にする生き方は、どうすればうまくやっていけるのか

「好き」を仕事にする生き方は、どうすればうまくやっていけるのか

公開日:2023/1/13

「好きなことを仕事にしたい」。そう考える人は多いことでしょう。
一方で、それで生活ができるのだろうか?という疑問があり、踏み切れないという人もいるかも知れません。

実際、「好きなこと」を仕事にした人は何かと大変そうですが、熱中の度合いが非常に高いのもまた事実です。

筆者の身近に複数いるプロミュージシャンは、まさに「好き」を仕事にしている人たちです。
では、実際どのような働き方をし、どのような生活を送っているのか、ここで一端をご紹介したいと思います。

3割が「やりたい仕事をしたい」

パーソル総合研究所が全国の働く人1万人(15歳から69歳)を対象に「仕事内容を選ぶ上で重視すること」について調査を実施したところ、次のような項目が多くなっています*1。

1)やりがいを感じられること:30.5%
2)自分のやりたい仕事であること:29.3%
3)自分の能力や個性が生かせること:21.2%
4)自律的に自分の判断で仕事を進められること:14.4%
5)色々な知識やスキルが得られること:14.0%

3割が「やりたい仕事」であることを重視しています。

また、学情の調査では、「やりたいことを仕事で実現したい」と考えている20代は4分の1にのぼっています(図1)。

図1 やりたいことを仕事で実現したいと回答した20代の割合
(出所:「20代専門転職サイト「Re就活」/Webメディア「『20代の働き方研究所』で「仕事の目的・やりがい」をテーマにアンケートを実施しました。」PR TIMES)
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000956.000013485.html

「仕事で実現したい」と回答した20代からは「仕事でしか得られない緊張感や達成感があると思う」「自身のやりたいことで、誰かの役に立つことができたら嬉しい」といった声が寄せられていました。
また、「趣味で実現したい」と答えた20代からは「いつかは自分の好きなことで稼げるようになりたい」「働いて資金を貯めたら、カフェを開業したいと思っている」などの声が挙がっています。

今か将来的にかは別として、やりたいことを仕事にしたい20代が多いと言えるでしょう。

「好き」を仕事にしたミュージシャンの3つのタイプ

さて、「ミュージシャン」は、「好き」を仕事にした人たちのひとつの生活の在り方です。

羨ましく感じる人も多いかもしれませんが、その実際の姿をご紹介していきたいと思います。

筆者の知る限り、プロミュージシャンには3つのタイプの人がいます。
10代ごろに楽器を手にして感動したり、自分の感性に刺さるアーティストに出会ったりして感銘を受けるところから始まることは同じですが、その後の経路は全く異なります。

・音大に進学してプロの職に就いた人

・自ら積極的に売り込み、ローディー(楽器や機材の積み込み・積み下ろしや運搬、調整などをする仕事)などを経験して業界で認められた人

・スカウトや紹介など周囲の環境により、結果的に音楽を仕事にするようになった人

まず、ミュージシャンの場合、ここに一つ目のハードルがあるのかもしれません。
そして、仕事としての音楽との関わり方の例としては、

・レッスンやレコーディングをメインにした働き方

・バンドの収入を補うためにレッスンをする働き方

があります。比率はそれぞれです。
ただ、演奏だけで生計を立てられる人は、音楽で収入を得ている人のごくわずかでしかないのが現実です。

一方で、共通点もあります。生活を成り立たせるためには、長時間労働になりがちだということです。

「スカウトや紹介」でミュージシャンになった人

例えば筆者の知り合いのひとりには「スカウトや紹介など」をきっかけにプロミュージシャンになった人がいます。
楽器を始めた当初は、本人は音楽を生業にするつもりはなく、他に就きたかった職業もあったといいます。

しかし音楽活動をメインとする生活に舵を切ったのは、学生のときに周囲から「デモテープを送ってみたほうがいい」と勧められたことがきっかけです。
それを実行した結果、大物アーティストの目に(耳に?)留まったのです。
「結果として」ミュージシャンになった、とも言えるかもしれません。

そして今は、自分でレーベルを立ち上げてイベントを開催したり、メインに活動しているバンドではツアーも年中実施し、国内ではチケット代やCD、グッズの売上もあります。海外からの招聘もあります。
しかし、それだけで生活できるわけではありません。ツアーを組めば交通費も宿泊費もかかりますから、CDの売上で利益が出る程度、ということも多々あります。

よって、メインの収入源はレッスンや音源制作ということになります。
ツアー中は「労働」と言えるほどの収入が発生するわけではありません。そして、イベントをやるにはリハーサルの時間だけでなく、会場の手配、お金の計算など様々な仕事が発生します。

そうすると確実に収入になるレッスンにかけられる日にちは多くないため、日々の予定はタイトなものになってしまいます。
レッスンのスタートが朝の9時から夜10時まで、というのが当たり前で、それと同時に音源制作の仕事が入った時は徹夜作業も少なくありません。

また、レッスンの仕事は実際にスタジオにいる時間だけではありません。生徒用の楽譜や音源を用意するのもレッスンの仕事の一環です。この作業は時間外労働と言えるかもしれません。また、自分の得意、あるいは好きなジャンルの音楽ばかりを扱うわけでもありません。

自ら売り込み、ローディーから大物の仕事を手がけた人

もうひとりの知人は、自らを積極的に売り込んで、ローディーから芸能界の仕事にたどりついた人です。
誰もが知るような有名アーティストのレコーディングやライブのサポートをしてきて、その時に得た収入はかなり大きなものだったといいます。

しかし、あまりにも緊張感の高すぎる日々でもありました。

「音楽で人を幸せにしたい」と大半のミュージシャンは考えるものですが、彼の場合、自分の演奏を聞く対象がライブハウスに入る人数、というわけではなく、CDを手に取る数十万人が相手になるという点で常にプレッシャーの連続にあったといいます。

結果、体調を崩してしまったということでした。

そして今は、イベントでの演奏と時々の印税が収入源でありつつ、後進の教育やスカウトにも力を入れています。その分、人間関係の維持のために割く時間や出費も多く、合間で個人レッスンを開いて収入の一部としています。

「好き」を仕事にするメリットとリスク

ここにご紹介した2人はいずれも「好き」を仕事にしています。
ミュージシャンになったきっかけや仕事内容の比率は異なるものの、2人には共通点があります。

いずれも、「音楽が好き」を通り越して、そのためならばどれだけでも時間を割けるという心構えです。ひとくくりに「音楽の仕事」といっても多くの事務仕事や調整などを必要とするため、面倒と感じることにも多く直面しますし、愚痴のひとつやふたつもありますが、そのストレスをまた楽器で解消している部分もあります(その分さらに睡眠時間は減りますが)。

そして、どれだけ忙しくても「自分の落ち着く時間・空間」を確保している点です。もちろんこれも寝不足の要因にはなりますが、自分の世界を維持するため、精神的な安らぎのために欠かせない時間として確保しなければ続けていられないという部分も垣間見えます。

どれだけ嫌な瞬間、面倒な時間があっても「好き」「愛」が勝つからこそ続けていられるという意味では、憧れの対象になるかもしれません。

しかし同時に、大半のミュージシャンが個人事業主として働いています。そして、多くの個人事業主は福利厚生が薄いという部分はリスクでもあります。その一方で「死ぬまで現役でいる」という覚悟を持ち合わせているのもまた事実です。

また、どこかひとつの確たる収入源を守っているミュージシャンも多くいます。増減はあるものの、多少収入が減った月でも最低限の生活はできるという収入源です。
そういった意味では、貯蓄などの準備も必要と言えるでしょう。
ただ、良い機材に出会うと迷わずに出費するという面もありますので、自転車操業となる人は少なくありません。

なお、手前味噌ではありますが、先日筆者はあるライブハウスで趣味としてイベントに参加していたところ、プロから声をかけられ「音楽をやっていかないか。最低限は払う」とお誘いをいただきました。

突然のことで心の整理ができないままでいますが、正直なところ戸惑っています。
兼ね合いを間違えると、大変なことになりそうだと思ってしまうのは年齢のせいかもしれませんし、本業が個人事業主というもともと不安定な場所に立っているからかもしれません。
ただ、筆者にとっては魅力的すぎる声かけでした。よって、これから真面目に配分を考えていこうとしているところです。主に収入源への配慮です。

もうすこし蓄えがあればなあ、とも思っているところです。

また、「好き」を仕事にするには自分はスペシャリストかゼネラリストか?を客観的に知ることも重要でしょう。
むしろゼネラリストのほうが、リスクの高い仕事を継続できる可能性が高いのではないかと筆者は思っています。

また、お客さんの入りによっては持ち出しも発生する、ということは必ず知っておかなければなりませんし、「好き」すぎて押し付けのような商売のしかたでは成り立たないことにも注意が必要でしょう。

「好き」と「売れる」は別物なのです。

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この記事を書いた人

清水 沙矢香

2002年京都大学理学部卒業後、TBSに主に報道記者として勤務。社会部記者として事件・事故、テクノロジー、経済部記者として各種市場・産業など幅広く取材、その後フリー。取材経験や各種統計の分析を元に多数メディアに寄稿中。

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