介護休暇と介護休業の取得と活用|現役世代が知っておくべきポイントを弁護士が解説

介護休暇と介護休業の取得と活用|現役世代が知っておくべきポイントを弁護士が解説

公開日:2023/1/20

家族の介護を行う労働者の方は、育児・介護休業法*1に基づき、介護休暇・介護休業を取得することができます。

介護休暇・介護休業は、取得要件や期間が異なる制度です。介護に関する状況に合わせて、それぞれの制度を使い分けましょう。

今回は介護休暇・介護休業について、介護に関与する(または将来的に関与する可能性がある)現役世代が知っておくべきポイントをまとめました。

介護休暇・介護休業とは

介護休暇・介護休業は、介護に従事する労働者が仕事と介護を両立できるように設けられた、育児・介護休業法に基づく制度です。

介護休暇と介護休業の違い

介護休暇は短期の休暇、介護休業は長期の休業という形で区別されています。

介護休暇は、毎年4月1日から3月31日(または別途定める年度)の間に、最大5日間取得できます(育児・介護休業法16条の5第1項、同法施行規則40条1項)。午前のみ・午後のみなど、半日単位での取得も可能です。
要介護状態の対象家族が複数いる場合は、年度当たり最大10日間まで介護休暇を取得できます。

これに対して介護休業は、要介護状態にある対象家族1人につき、最大93日間にわたり取得できます。最大3回までの分割取得が可能です(同法11条2項)。

介護休暇・介護休業を取得できる労働者

要介護状態にある対象家族がいる労働者は、介護休暇・介護休業を取得できます。

<対象家族>
以下のいずれかに該当する家族(育児・介護休業法2条4号、同法施行規則3条)
・配偶者(内縁を含む)
・父母
・子
・祖父母
・兄弟姉妹
・孫
・配偶者の父母

<要介護状態>
負傷・疾病・身体上または精神上の障害により、2週間以上常時介護を必要とする状態(同法2条3号、同法施行規則2条)

事業主は介護休暇・介護休業の申請を拒否できない

要介護状態にある対象家族がいる労働者から申請があった場合、事業主は介護休暇・介護休業の取得を拒否することができません。

事業主が介護に関する休暇制度等を設けていない場合でも、育児・介護休業法に基づく介護休暇・介護休業は、労働者の最低限の権利として取得・利用できます。家族の介護に従事する労働者は、介護休暇・介護休業の利用を積極的にご検討ください。

介護休暇・介護休業の活用例

短期間の介護休暇と長期間の介護休業は、家庭の状況に合わせて使い分けるのがよいでしょう。介護休暇・介護休業の活用例を紹介します。

介護休暇の活用例

短期間の休暇が認められる介護休暇は、要介護状態にある家族をスポット的にサポートする際に利用するのがよいでしょう。たとえば、以下の活用方法が考えられます。

<介護休暇の活用例>
・普段から介護を担当している他の家族が体調不良になったため、介護休暇を取得して、数日程度代わりに介護を行った。
・普段は介護施設のサービスを利用しているが、ケアマネジャーとの打ち合わせが必要になったため、午前中だけ介護休暇を取得して打ち合わせに参加した。
・要介護状態にある家族を通院させる必要が生じたため、週1回半日単位で介護休暇を取得して、2か月間程度にわたり通院に付き添った。

介護休業の活用例

長期間の休暇が認められる介護休業は、特に家族が要介護状態に陥ってしまった当初の段階において、今後の介護計画を検討・手配するために活用できます。たとえば介護休業期間中に、以下のような対応をまとめて行うことが考えられます。

<介護休業の活用例>
・これから介護施設の利用などを検討する家族について、市区町村、地域包括支援センター、ケアマネジャーなどに今後の対応などを相談する。
・利用する介護施設を選定するに当たり、各施設の見学をする。
・実際に介護施設へ入居するに当たり、入居準備をサポートする。
・家族の間で話し合い、介護の分担を決定する。

介護休暇・介護休業以外に利用できるサポート制度

家族の介護に従事する労働者は、介護休暇・介護休業以外にも、育児・介護休業法に基づく以下の制度を利用できます。
・時短勤務制度等
・残業等の免除請求

介護休暇・介護休業とこれらの制度を効果的に組み合わせて、仕事と介護を両立する負担をできる限り軽減しましょう。

介護に従事する労働者の時短勤務制度等

要介護状態にある対象家族を介護する労働者(介護休業中の場合を除く)は、事業主に対して、介護に関する制度の利用を申し出ることができます(育児・介護休業法23条3項)。

事業主は、以下のいずれかの措置を講じた上で、申出のあった労働者に利用させなければなりません(同法施行規則74条3項)。
(1)時短勤務制度
・1日の所定労働時間を短縮
・週または月の所定労働時間を短縮
・週または月の所定労働日数を短縮
・労働者による休暇取得(日単位、時間単位)の請求を認める

(2)フレックスタイム制

(3)時差出勤制度

(4)介護サービス費用の助成その他これに準ずる制度

ただし、雇用期間が1年未満または1週間の所定労働日数が2日以下の労働者については、労使協定の定めによって上記の各制度が利用できない場合があるのでご注意ください。

介護に従事する労働者は、残業等の免除請求が可能

育児・介護休業法では、介護に従事する労働者の業務負担を軽減するため、以下に挙げる残業等の免除制度が設けられています。
(1)所定労働時間の制限(同法16条の8、16条の9)
労働者の請求により、所定労働時間を超える労働(残業)が免除されます。

(2)時間外労働の制限(同法17条、18条)
労働者の請求により、法定労働時間を超える労働(時間外労働)が、月24時間以内・年150時間以内に制限されます。

(3)深夜業の制限(同法19条、20条)。
労働者の請求により、午後10時から午前5時までの労働(深夜労働)が免除されます。

要介護状態にある対象家族を介護する労働者であれば、これらの免除制度を権利として利用できます。恒常的に家族の介護が必要になった場合には、各免除制度を積極的にご活用ください。

会社独自の制度を利用できる場合もある

育児・介護休業法に基づく介護に関する各制度は、あくまでも労働者に保障された最低限の権利です。

会社によっては、育児・介護休業法に基づく制度とは別に、独自に介護に関する休暇制度などを設けているケースもあります。自社の就業規則その他の社内規程を確認して、介護に関する制度の有無や利用要件などをご確認ください。

まとめ

育児・介護休業法に基づく各制度や、会社が設けている独自の介護制度を活用することで、仕事と介護を両立する負担を減らせる可能性があります。

平均寿命の長期化に伴い、家族の介護は国民全体の関心事となっています。特に40代・50代以降の労働者の方は、近い将来において、家族の介護が発生する可能性を念頭に置かなければなりません。
その際、できる限り無理なく仕事を続けていくためにも、介護に関して利用できる制度の内容につき、今のうちから少しずつ調べておくことをお勧めいたします。

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この記事を書いた人

阿部 由羅

ゆら総合法律事務所代表弁護士。西村あさひ法律事務所・外資系金融機関法務部を経て現職。企業法務・ベンチャー支援・不動産・金融法務・相続などを得意とする。その他、一般民事から企業法務まで幅広く取り扱う。各種webメディアにおける法律関連記事の執筆にも注力している。ゆら総合法律事務所 Webサイト

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