「男もつらいよ」と言っていい。男性の更年期障害について知ろう。

「男もつらいよ」と言っていい。男性の更年期障害について知ろう。

公開日:2023/2/15

更年期障害といえば女性特有の症状だと考えられがちですが、実は男性にも存在しています。
男性の更年期障害は女性と同じようにホルモン量の変化が原因で、疲れが取れない、意欲が湧かない、眠れない、などの症状が現れます。しかし、つい「忙しいから疲れているだけ」「気のせい」などと考えられて放置されがちです。

では男性の更年期障害はいつ頃から始まり、どのような症状があるのでしょうか。セルフチェックの方法とあわせて確認していきましょう。

40~60代男性の2割前後が不調を自覚

更年期障害は、40歳代以降の男女の性ホルモン分泌量が原因となる自律神経失調症に似た症候群です*1。

女性の場合は閉経前後の約10年間にエストロゲン(卵巣ホルモン)の分泌が、また、男性の場合は30歳代以降にテストステロン(睾丸ホルモン)の分泌がそれぞれ減少し始めることで様々な不調が発生します。
よって、男性の更年期は30代以降であれば症状が現れる可能性がじゅうぶんにあるということです。

なお、内閣府の調査*2によると、40代女性では約4割、50代女性では5割以上が更年期の症状を感じており、このうちの1割前後が治療をしていると回答しています。
それよりは少ないものの、男性も40~60代以上の年代で2割前後が更年期に関わる不調を有していたということです。

男性の更年期障害における症状

男性の更年期障害では、以下のような臨床症状がみられます*3。

・精神・心理症状 : 落胆、うつ、苛立ち、不安、神経過敏、生気消失、疲労感

・身体症状 : 関節・筋肉関連症状、発汗、ほてり、睡眠障害、記憶・集中力低下、肉体的消耗感

・性機能関連症状 : 性欲低下、勃起障害、射精感の消失

精神面では不安やいらいら、うつ、疲労感など、身体面では関節痛、ほてり、不眠など女性の更年期とよく似た症状もあります。
ただ、ホルモン分泌量の減少は女性に比べて緩やかであるため、男性の更年期障害は、単なる疲労や老化として見過ごされかねません。

しかしテストステロンの減少は様々な病気のリスクを高めます*4。

まず肥満や糖尿病、脂質異常症、高血圧のリスクが高まり、動脈硬化の原因となるため注意が必要です。また、放置すると動脈硬化が加速して心筋梗塞や狭心症、脳卒中のリスクが高まります。
かつ、テストステロンには記憶をつかさどる海馬を活性化させる働きもあります。このためテストステロンの減少は認知機能の低下を招き、認知症につながるおそれもあるのです。

男性更年期障害のチェック方法と治療

様々な症状があり、また個人差も大きいためなかなか発見が難しい男性の更年期障害ですが、目安になる問診票がありますのでここでご紹介します。

現在よく知られている問診票は2種類です。

まず一つ目は「ADAM質問票」と呼ばれているものです(図1)。

男性更年期のADAM質問票 「男性更年期」国立医療機構京都医療センター

図1 男性更年期のADAM質問票
(出所:「男性更年期」国立医療機構京都医療センター)
https://kyoto.hosp.go.jp/img/img/guide/medicalinfo/urology/man.pdf p1

ADAM質問票では、上記の項目のうち、1と7で「はい」と答えられた方は全て、それ以外の項目で3つ以上「はい」と答えられた方は男性ホルモンが下がっている可能性が高いと判定されます。

ただ、実際にこの質問票で男性ホルモン低下が疑われた患者のうち男性ホルモンが低い患者が見つかる率は30-40%です*5。
そこで、もうひとつの質問票が併用されることがあります。

AMS質問票と呼ばれるものです(図2)。

男性更年期のAMS質問票 『更年期症状・障害に関する意識調査』基本集計結果(2022 年7月 26 日)

図2 男性更年期のAMS質問票
(出所:「『更年期症状・障害に関する意識調査』基本集計結果(2022 年7月 26 日)」厚生労働省)
https://www.mhlw.go.jp/content/000969166.pdf p20

こちらのAMS質問票では、症状の評価は合計点で、17-26点がホルモン低下「なし」、27-36点が「軽度」、37-49点が「中等度」、50点以上が「重度」と判定されます。

最も注目すべきは早朝勃起

上記のように男性の更年期を把握するには様々なチェック項目がありますが、最もわかりやすいのは早朝勃起の有無だという指摘もあります。千葉大学の田村貴明医師はこのように話しています。

「一番わかりやすいのは、早朝勃起の有無です。これはエロチックな勃起とは無関係な“男の生理”であり、テストステロン低下の影響が鋭敏に現れます。また、陰茎の血管は心臓や脳の血管と比べて細い。朝立ちがないということは血管が硬くなりはじめている、いわゆる動脈硬化のアーリーマーカーです。放置していると、心臓や脳の動脈硬化へと進行していく恐れがあります」(田村医師)

<引用:「【男性更年期】30代でも発症、気付きのサイン6つ」東洋経済オンライン>
https://toyokeizai.net/articles/-/628610?page=2

また、男性では身体症状よりも精神・神経症状が強く出る傾向にあるといいます。

男性更年期の治療

男性更年期の治療はおもに泌尿器科で行われます。日本では通常、2週間から1か月に1回の注射での治療が実施されます。
これにより、以下のような効果が報告されています*3。

・体脂肪減少
・筋肉量、筋力の増加
・骨密度の改善
・血清脂肪プロフィールの変化、インスリン感受性の増加
・気分、性欲、健康観の改善

ただ、注意点もあります。前立腺がんの患者さんや前立腺がんの疑いがある人には禁忌とされているほか、既往歴によっては適応できない人もいます*3。

「気の持ちよう」と片付けてしまわないために

ここまで述べてきたように、男性の更年期に現れる症状は多岐にわたるうえ、どの症状に苦しむかは人それぞれでもあります。
これらの不調を「なんとなく調子が悪いだけ」「気の持ちよう」と片付けて放置してしまうと、様々な疾患のリスクを高めることは心に留めておきたいものです。

また、理由の思い当たらない不調を放置することでさらにストレスが増加し、更年期による精神・神経症状がさらに強くなってしまい、長期の抑うつ状態に繋がってしまうという悪循環に陥りかねません。

男性の更年期障害には、健康診断の結果だけでは把握できない症状も多く、このような指摘もあります。

男性では通常、30歳ごろから徐々にアンドロゲン※が低下し、その下がり方が大きいと症状がでると言われている。なぜ、通常より低下が著しいのかは医学的には証明困難であるが、職場の人間関係やリストラ、住宅ローン、教育費、介護など、さまざまな要因、ストレスが影響していると考えられている。

<引用:「男性更年期」国立病院機構京都医療センター>
https://kyoto.hosp.go.jp/html/guide/medicalinfo/urology/description02.html
※アンドロゲン=テストステロンを含む男性ホルモンの総称

これらは、多くの人にとって無縁ではいられない出来事でしょう。
更年期障害は男性であっても30代を過ぎれば誰にでも起きる可能性があるという前提に立ち、自分の体に向き合いながら、健康的な働き方を続けて下さい。

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この記事を書いた人

清水 沙矢香

2002年京都大学理学部卒業後、TBSに主に報道記者として勤務。社会部記者として事件・事故、テクノロジー、経済部記者として各種市場・産業など幅広く取材、その後フリー。
取材経験や各種統計の分析を元に多数メディアに寄稿中。

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