「女性特有の健康問題」を理解しよう。女性活躍社会実現への課題を看護師が解説

「女性特有の健康問題」を理解しよう。女性活躍社会実現への課題を看護師が解説

公開日:2023/2/22

女性の社会進出が進み、結婚や出産後も働く女性が増えました。
国としても女性が活躍できる社会づくりを目指しており、2015年に「女性活躍推進法」が成立、2019年には法改正が行われています。*1

しかし、女性には男性にはない特有の健康課題があります。
それを知らないまま、ただ単純に働く機会や制度を整えるだけでは、本当の意味で女性が活躍できる社会とは言えません。
今回は、女性特有の健康課題にはどのようなものがあるのか、それを踏まえて働きやすい会社を目指すためには何ができるのか、詳しく解説します。

女性の働き方に対する考え方や健康課題への認知度には差がある

まず、女性の働き方について社会がどのように認識しているのか、男女共同参画局のサイトに掲載されているデータを見てみましょう。

女性の就業継続等に対する考え方は、平成26年8月のデータでは「子どもができても、ずっと職業を続ける方がよい」が44.8%と最も多く、次いで「子どもができたら職業をやめ、大きくなったら再び職業をもつ方がよい」が31.5%という結果でした。

平成4年11月の調査結果と比較すると、「子どもができても、ずっと職業を続ける方がよい」の割合が約2倍に増加しています。*2

このことから、出産や子育てで一旦仕事を離れたとしても、多くの方が「仕事を続けた方がよい」と感じていることが分かります。

引用)男女共同参画局 「男性・女性にとっての仕事と家庭のあり方」

引用)男女共同参画局 「男性・女性にとっての仕事と家庭のあり方」
https://www.gender.go.jp/policy/men_danjo/kiso_chishiki1.html

次に、女性の健康課題を社会はどのように認知しているのかを知るために、経済産業省のデータを紹介します。

「生活習慣病・がん・メンタルヘルス・骨粗しょう症などの発症の仕方や頻度にも男性と比較して性差がある」を「知っていた」と答えた人の割合は48.4%です。
その一方で、「仕事の生産性等に与える影響は、3位 月経不順・PMSであること」は7.7%、「月経随伴症状などによる社会経済的負担は6828億円」は5.0%でした。*3

つまり、女性特有の健康課題について知ってはいるものの、具体的にどのような困りごとがあるのか、経済にどんな影響があるのかまでは知らない方が多いということが分かります。

引用)経済産業省 「「働く女性の健康推進」に関する実態調査」

引用)経済産業省 「「働く女性の健康推進」に関する実態調査」
https://www.meti.go.jp/policy/mono_info_service/healthcare/downloadfiles/H29kenkoujumyou-report-houkokusho-josei.pdf p70

女性は妊娠・出産・育児でキャリアが中断されやすいのはイメージできると思いますが、それだけでなくさまざまな健康課題によっても仕事を続けるのが難しくなります。
どのような健康課題があるのか、次章で詳しく見ていきましょう。

女性特有の健康課題

ここでは、女性特有の主な健康課題について紹介します。

(1)月経前症候群(PMS)
月経(生理)に伴う不調は、月経の期間である約7日間だけではありません。
月経前から不調を感じる場合もあり、それを月経前症候群(PMS)といいます。
月経前症候群は、人によりさまざまですが3~10日間程度続きます。*4
具体的な症状は、腹痛や腰痛、食欲増進、気分の落ち込み、イライラなどさまざまです。

(2)不妊治療
不妊治療には、人工授精、体外受精、顕微授精などがあります。
排卵時期を確認したりホルモン剤を注射したりするため、数日おきに病院へ通うこともあります。
そうすると、仕事を中断したり休んだりする必要性が出てくるため、仕事と不妊治療の両立は難しくなります。

(3)更年期障害
更年期障害は、更年期(閉経前後の約10年間)に現れる不快な症状によって普段どおりの生活が送れなくなることをいいます。
女性全員が更年期障害を経験するわけではなく、その人によって症状の程度や種類はさまざまです。
主な症状には、ほてりや汗の増加、めまい、不眠などがあります。

(4)骨粗しょう症
骨粗しょう症とは、骨密度が低下して骨がもろくなり、骨折しやすくなる病気です。
骨粗しょう症の原因には、過度なダイエットやステロイド薬の影響、女性ホルモンの低下などがあります。
骨粗しょう症は自覚症状がないため、気づいたときには悪化していることもあり注意が必要です。

(5)高血圧、動脈硬化
高血圧や動脈硬化は女性特有のものではありませんが、実はこれらも女性ホルモンによってリスクが高くなる病気です。
女性ホルモンには血管の柔軟性を保つ働きがあるため、減少することで高血圧や動脈硬化を発症しやすくなります。
また、女性ホルモンの減少によって自律神経のバランスも崩れやすくなることも原因のひとつです。

女性の健康課題への対応が必要な理由とは?

女性の健康課題への対応はなぜ必要なのか、主な理由は3つあります。

(1)性別に関係なく、さまざまな価値観をもった人材が活躍できる
女性が活躍する機会を増やすことは、女性にとってはもちろん、男性にとってもメリットがあります。
先にご紹介したデータにもあるように、「男性は外で働き、女性は家を守る」のような価値観は古くなっています。
女性の健康課題を踏まえ、その人に合った働きやすい環境を整えることで、「家事・育児と仕事を両立したい」「親の介護で仕事をセーブしたい」と考える男性にとっても働きやすい職場になります。

(2)労働力の確保
日本は少子高齢化に伴い、労働力が減少しています。
それにも関わらず、健康課題を理由に女性が離職すれば、会社にとって損失です。
女性が働き続けられる職場であれば、貴重な労働力を失わずに済みます。

(3)企業のイメージアップ
性別問わず活躍できる会社であるということは、企業のイメージアップにつながります。
それによって、より多くの人材が集まることも期待できるでしょう。
また、女性活躍推進法による基準を満たした企業には、国が優良企業として認定する制度もあります(えるぼし認定)。

女性の健康課題を解決するために会社ができること

では、女性の健康課題に取り組むためには何をしたらよいのでしょうか。

(1)女性の健康課題への認識を高める
まずは、女性にどのような健康課題があるのか、仕事にどんな影響があるのか知ることから始めましょう。
このとき、男性だけでなく女性も認識を高める必要があります。
なぜなら、症状の種類や程度は人によって異なるためです。
「女性なら理解できるだろう」と安易に考え、管理職を女性にしただけでは課題解決になりません。
働く人全員の認識を高めることが、次のステップにつながります。

(2)相談しやすい環境を整える
何らかの不調や困ったことがあったときに、相談しやすい雰囲気をつくるようにしましょう。
普段から小さな困りごとがあったときにも気軽に相談できるような雰囲気だと、健康課題の把握がしやすくなり、職場の環境も整いやすくなります。
直属の上司に相談するだけでなく、医療従事者や専門スタッフに相談できる窓口を設置するのも一つの方法です。

(3)病院の受診や健診を受けやすい仕組み作り
不調の程度がまだ小さかったり、仕事が休みづらかったりすると、病院へ行く機会を失ってしまい、適切な治療が受けられないかもしれません。
そうすると手遅れになる可能性もあるので、気軽に病院を受診できる仕組みづくりが大切です。
また、自覚症状がないうちに不調に気づくためには、定期的な健診が欠かせません。
気軽に医療にアクセスできるよう、業務量や出勤日を調整できる仕組みを整えましょう。

まとめ

女性の健康課題はさまざまで、人によって異なります。
大切なのは、画一的な対応ではなく、その人の健康課題や要望に沿って柔軟に働ける環境づくりです。
そして、女性の健康課題への対応は、男性にとっても会社全体にとってもメリットがあります。
ぜひ会社全体として取り組み、誰にとっても働きやすい会社を目指していきましょう。

資料一覧

■お知らせ

私たちNTT Comは新たな価値を創出できるワークスタイルの実現を支援しています。
企業の働き方改善にご活用ください。

NTTコミュニケーションズのデジタル社員証サービス

スマートフォンをポケットにいれたまま、ハンズフリーで入室!

Smart Me®︎は、社員証機能をデジタル化することにより、物理的なカードを無くすことを目的にしています。
中でも入退館・入退室機能は、どこにも触れない入退認証を実現し、入館カードを常時携帯する煩わしさを解消します。
管理者は、発行・再発行のたびに掛かっていた物理カードの手配・管理コストが無くなるほか、
ICカードにはできなかった、紛失時に残るカードを悪用されるセキュリティリスクを低減できます。

>> Smart Meはこちら

この記事を書いた人

浅野 すずか

フリーライター。看護師として病院や介護の現場で勤務後、子育てをきっかけにライターに転身。看護師の経験を活かし、主に医療や介護の分野において根拠に基づいた記事を執筆。

人気コラム

おすすめコラム