57%が「週休3日制」に反対⁉︎世界的に広がる週休3日制とそのメリットとは
公開日:2023/03/29
1週間で休日を3日設ける「週休3日制」が、大手企業を中心に広がっています。
例えばファーストリテイリング(ユニクロ)や、みずほフィナンシャルグループ、塩野義製薬などが週休3日を導入、パナソニックも将来の導入の方針を表明しています。*1
日本政府としても週休3日制を推進しており、2021年6月に閣議決定した「経済財政運営と改革の基本方針2021」で「選択的週休3日制」が盛り込まれました。*2
世界に目を向けると、週休3日制は珍しいものではなくなっています。
日本でも週休3日を取り入れる企業は、今後増えていくことでしょう。
大半が不安を感じる週休3日制
週休3日制になれば、自由な時間が増え、仕事と私生活の両立がしやすくなります。
しかし、週休3日制に不安を感じる人も多いようです。
日本経済新聞社の調査によると、週休3日制の導入の是非について「推進すべきだとは思わない」が57%で「推進すべきだ」の37%を上回りました。*3
ただし年齢別にみると、年齢が若いほど週休3日制に肯定的で、30歳代以下では6割以上が推進派と賛否が逆転しています。
またマイナビの調査では、「収入が減るなら利用したくない」が8割を占めました。*4
一方、「1日の労働時間が増えて、収入が変わらないなら利用したい」と回答したのは約半数、「勤務日数が減少しても収入が変わらないなら利用したい」が8割となっています。
図1 週休3日制の意識調査
引用)マイナビ「マイナビ転職、「週休3日制の意識調査」を発表」
https://www.mynavi.jp/news/2022/02/post_33195.html
働き手の意識としては、休日増加への期待よりも、収入減少への不安の方が大きいことが顕著にうかがえる結果となりました。
週休3日制の運用パターン
収入減少への不安が残る週休3日制ですが、働き方次第では収入を増やすことも可能です。
また、収入が減らない週休3日制を導入する企業も出てきています。
ここでは、週休3日制の運用パターンについて4つのタイプに分けて紹介します。*5
図2 週休3日制の4つのタイプ
引用)リクルートワークス研究所「イントロダクション 週休3日制は、4つのタイプへと進化」
https://www.works-i.com/column/4dayww/detail001.html
圧縮労働型
圧縮労働型は、1週間の労働時間や業務量の総量は変えずに、1日の労働時間を長くして週休3日とする働き方です。
収入が減少することはありません。
しかし、1日当たりの労働時間が長くなるため、健康管理に注意する必要があります。
企業としては、テレワークなどの導入によって削減された通勤時間を、労働時間に充てることで、比較的容易に導入することができます。
圧縮労働型は、ファーストリテイリングや佐川急便で導入されています。
労働日数(時間)・報酬削減型
労働日数(時間)・報酬削減型は、労働日数や週の労働時間、業務量などを削減し、それに合わせて給与なども対応させる働き方です。
収入は減少してしまいますが、労働時間を削減した分、育児や介護、趣味やボランティア、大学院等での学び直し、副業などに時間を充てることが可能です。
学び直しで新たなスキルを身につければ、キャリアアップにつながります。
また副業を行えば、家計所得の増加につなげることもできるでしょう。
みずほフィナンシャルグループでは、土日に加え、毎週決まった曜日を休みとする働き方を2020年に導入しました。*6
週休3日もしくは4日を選ぶことができ、給与は週休3日だと従来の8割に、週休4日の場合には6割まで給与が減ることになっています。
労働日数(時間)削減・報酬維持型
労働日数(時間)削減・報酬維持型は、労働日数や週の労働時間を削減させて週休3日とし、生産性を上げて業績を維持することで、収入も維持する働き方です。
限られた時間内で高いパフォーマンスを発揮することが求められます。
日本での導入企業は少なく、欧州企業に多くみられます。
フレキシブル労働型
月や年単位で上限労働時間を定め、その範囲内で、業務の繁閑に合わせて自律的に稼働を調整する働き方です。
個人が繁閑によって、週休何日とするかをフレキシブルに設定します。
労働時間は変わらないため、収入への影響はありません。
日立製作所では、このフレキシブル労働型を導入しています。
月曜日から木曜日の労働時間を所定の7時間45分より長く働いて金曜日を休みにしたり、月の前半に長く働いて月末に連休をとったり、子どもの学校行事の合間に1時間だけ働いたりすることも可能となっています。*7
世界の週休3日制トライアル事例
少しずつ導入が増えている週休3日制ですが、1週間に3日以上の休日を設けている企業の割合は2022年で8.6%とまだまだ少ない状況です。*8
しかし世界では週休3日制が広がり、多くの国でトライアルが行われています。
欧米では、アイスランド、デンマーク、スウェーデン、スペイン、アイルランド、ベルギー、アメリカ、カナダが、週休3日のトライアルを実施しています。*9
そして2022年には、スペインやイギリス、アイルランドでもトライアルが開始されました。
ここでは世界のトライアル事例として、「アイスランド」と「イギリス」の取り組みと成果を紹介します。
アイスランド
アイスランドでは、他国に先駆けてレイキャビック市議会とアイスランド政府が2015年から2021年にかけて、労働時間を短縮する大規模なトライアルが行われました。
労働人口の1%を超える2,500人以上の労働者が参加し、多くは週労働時間を40時間から35時間または36時間に短縮、生産性の維持や向上、ワークライフバランスの改善を目指しました。*9
トライアルの結果、多くの職場で生産性やサービスの提供が維持・向上しました。
さらに、ストレスや燃え尽き症候群、健康、ワークライフバランスなど、さまざまな指標において労働者のウェルビーイングは劇的に改善したということです。
イギリス
イギリスのケンブリッジ大学やアメリカのボストン大学などの研究チームは、企業が週休3日制を導入した場合でも収益は維持されるとの調査結果を公表しました。*10
広告や金融・保険、建設などイギリスを拠点とする61の企業・団体が、2022年6月から12月にかけて週休3日制を試行しました。
参加企業は、会議の開催頻度を減らしたり、従業員が仕事に専念できる時間を設けたりして生産性向上の取り組みを行います。
その結果、データを提供した23社の収益は、試験期間を通じて平均1.4%増え、休日が増えても業績に影響しないことを示しました。
また従業員の39%はストレスが軽減され、62%が社会生活との両立がしやすくなったと回答しています。
離職者数も57%減ったということです。
週休3日制のメリットと懸念点
週休3日制の企業のメリットとしては「生産性の向上」「離職率の低下」などがあります。
そして働き手には「疲労やストレスの解消」「プライベートの充実」「子育てや介護と仕事を両立」などのメリットがあります。
収入減少などの不安もありますが、空いた時間で副業などを行えば、家計所得の増加につなげることもできるでしょう。
週休3日制は、ウェルビーイングを高める働き方なのです。
しかし週休3日になると、共働き夫婦が子どもを認可保育園に入園させることが難しくなる可能性があります。*11
多くの自治体では、保育園の入園の際に点数制を採用しており、点数の高い子どもを優先的に入園させる仕組みとなっています。
点数計算の主な基準は両親の労働時間や労働日数となっているため、両親がフルタイムの週5日以上勤務の場合が最も点数が高くなります。
しかし週休3日となり労働日数が減れば、点数が下がることとなり「育児のために週休3日にしたのに、保育園に入れなくなってしまった」という事態が生じる可能性があるのです。
まとめ
現在、さまざまな国で週休3日制のトライアルが展開されています。
各国の成功事例が報告されれば、日本でも週休3日制を導入する企業が増えてくることでしょう。
週休3日の働き方が選択できるようになったときには、どんなメリットがあり、どんな懸念点があるのかを整理してみてください。
自分にとって「生産性が高い働き方とはどのようなスタイルなのか」「メリットを最大限に活かせる方法はどのようなものなのか」を見極めることが、あなたらしい働き方につながっていくはずです。
資料一覧
- *1 出所)日本経済新聞電子版「週休3日、導入じわり 生産性の向上が普及のカギ」
https://career.nikkei.com/nikkei-pickup/001864/ - *2 出所)内閣府「経済財政運営と改革の基本方針2021について」P23
- *3 出所)日本経済新聞「週休3日制「反対」57%」
https://www.nikkei.com/article/DGKKZO67863530U3A120C2EA1000/ - *4 出所)マイナビ「マイナビ転職、「週休3日制の意識調査」を発表」
https://www.mynavi.jp/news/2022/02/post_33195.html - *5 出所)リクルートワークス研究所「イントロダクション 週休3日制は、4つのタイプへと進化」
https://www.works-i.com/column/4dayww/detail001.html - *6 出所)日本経済新聞「みずほが週休3~4日制 希望者、自分磨く時間に」
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO64708340X01C20A0EE9000/ - *7 出所)日本経済新聞「日立が給料減らさずに週休3日、どう実現?」
https://www.nikkei.com/article/DGXZQODL1189T0R10C22A4000000/ - *8 出所)厚生労働省「令和4年就労条件総合調査 概況」P2
https://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/jikan/syurou/22/dl/gaiyou01.pdf - *9 出所)リクルートワークス研究所「「週休3日」で働くー世界各国に広がる週4日勤務制・トライアル事例ー」P3、P4
https://www.works-i.com/research/works-report/item/four-day_workweek2022.pdf - *10 出所)共同通信「英、週休3日でも企業収益維持 社員負担も軽減、大学調査」
- *11 出所)第一生命経済研究所「選択的週休 3 日制の論点整理~誰のため・何のための制度なのか?~」P4
https://www.dlri.co.jp/files/macro/154077.pdf
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この記事を書いた人
髙橋 めぐみ
求人情報メディア・人材紹介等の総合的な人材サービスを提供する大手上場企業に勤務。在職中に250社以上の企業を取材し、求人広告の作成等に携わる。その後、教育業界に転職。現在は人材や教育に関する記事を中心に、フリーライターとして活動中。