フリーランスで働くメリット・デメリットは?仕事内容や年収のリアルをデータと経験からご紹介

フリーランスで働くメリット・デメリットは?仕事内容や年収のリアルをデータと経験からご紹介

公開日:2023/04/19

ICTの発達した時代、さまざまな働き方が可能になりフリーランスに興味を持つ人は少なくないと思います。

またフリーランスについては、働く場所や時間が自由になりそう、一方で収入が不安定になりそうというようなイメージがあることでしょう。

では、実際にフリーランスになると働き方や生活はどう変わるのでしょうか。
本業フリーランスである筆者が、各種データとともに紹介していきたいと思います。

フリーランスの基本属性

まず、フリーランスの年齢や収入について見ていきましょう。
内閣官房の調査によると、フリーランスの年齢構成は下のようになっています(図1)。

図1 フリーランスの年齢構成
(出所:「フリーランス実態調査結果」内閣官房)
https://www.kantei.go.jp/jp/singi/keizaisaisei/miraitoshikaigi/suishinkaigo2018/koyou/report.pdf p2

40代以上が全体の7割を占めています。
企業などで一定の経験や知識を得た年齢層とも言えるでしょう。

そしてフリーランスという働き方を選択した理由は
「自分の仕事のスタイルで働きたい」
「働く時間や場所を自由にするため」
というものが多くなっています(図2)。

図2 フリーランスを選択した理由
(出所:「フリーランス実態調査結果」内閣官房)
https://www.kantei.go.jp/jp/singi/keizaisaisei/miraitoshikaigi/suishinkaigo2018/koyou/report.pdf p3

これは、多くの人が抱くイメージに近いことでしょう。
では、年収はどうでしょうか。

本業としてフリーランスで働いているか、副業としてフリーランスで働く場面があるかどうかで、その事情は若干異なります(図3)。

図3 フリーランスとしての年収
(出所:「フリーランス実態調査結果」内閣官房)
https://www.kantei.go.jp/jp/singi/keizaisaisei/miraitoshikaigi/suishinkaigo2018/koyou/report.pdf p7

副業でフリーランスとして働く時間がある人の場合は「100万円未満」という割合が非常に高くなっています。
確かに他に本業がある場合は収入を補完する、あるいは自分のスキルを試すといった意味合いでは、そこまで多額の収入を必要としないという考え方もあることでしょう。
また、副業としてフリーランスの時間を持つという場合、捻出できる時間も限られています。

そして本業としてフリーランスで働き収入を得ているという人の場合、上の図で見れば年収「100万円以上200万円未満」「200万円以上300万円未満」といった層が多くなっているという特徴があります。

では、フリーランスはやはり厳しい生活を強いられるのかというと、実はそうとも言い切れない部分があります。

下の図は、「主たる生計者が本業として」フリーランスであるという人と、雇用されている人との年収を比較したものです(図4)。

図4 本業フリーランスと雇用者の年収比較
(出所:「フリーランス実態調査結果」内閣官房)
https://www.kantei.go.jp/jp/singi/keizaisaisei/miraitoshikaigi/suishinkaigo2018/koyou/report.pdf p6

もちろん社会保障や福利厚生が薄く退職金などもないため、雇用者よりも年収を上げる必要があることには注意が必要です。貯蓄は雇用者以上に重要な課題になります。
しかし逆も確かです。年収ベースで見るとそう大きな開きはないこともわかります。また、フリーランスは年齢に関係なく続けられるという特徴もあります。

フリーランスになるのは難しいことなのか?

ここまでフリーランスの属性や収入について見てきました。

さて、筆者は本業でフリーランスのライターをしています。もちろん、会社員時代と生活は大きく変わりました。

フリーランスを選んだきっかけ

筆者がフリーランスに転向した最も大きな理由は、人事で決められる異動に馴染めなかったということです。
企業ですから、雇用される側としては異動を受け入れるのは当然のことですが、もやもやとしたものが消えず、実際に退社する数年前からフリーランスは選択肢に入っていました。

昔から「お前は会社員には向かない」とよく言われたものです。

そして今、もちろん放送局時代に比べれば年収は大きく下がりますが、生活には困らないというのが正直なところです。
また、趣味である音楽に使える時間が増えた実感もあります。まさにフリーランスを選択した人がその理由としている
「自分の仕事のスタイルで働きたい」
「働く時間や場所を自由にする」
という面では納得がいっています。

実際、先に紹介した内閣官房の調査では、フリーランスを選択した人のうち、約8割が「今後もフリーランスとして働き続けたい」と回答しているという結果があります(図5)。

図5 フリーランス継続の意志
(出所:「フリーランス実態調査結果」内閣官房)
https://www.kantei.go.jp/jp/singi/keizaisaisei/miraitoshikaigi/suishinkaigo2018/koyou/report.pdf p10

会社員時代の比較的年齢の離れた先輩から、「独立してやっていくのは大変でしょう」と言われたこともあります。
しかし案外そうでもない、あるいは案外生活はできるものだなという実感があります。
むしろ、特定の業界で自分よりはるかに長く勤務している先輩からそのように言われたことに驚いたくらいです。

実際フリーランスになってみるとそこに生活水準を合わせていき、また、どのくらいの量の仕事をやらなければならないかの見当がつくようになってきます。
筆者の場合、退社を機に都心から郊外へ引っ越したことも、必要な生活費を大きく下げてくれています。
また、趣味に時間を割くことの方を今は優先しています。

なお、全体的な傾向としては、フリーランスで「収入に満足している」と回答している人は約4割です(図6)。

図6 フリーランスの満足度
(出所:「フリーランス実態調査結果」内閣官房)
https://www.kantei.go.jp/jp/singi/keizaisaisei/miraitoshikaigi/suishinkaigo2018/koyou/report.pdf p4

「スキルがある」だけでは稼げない

ただ、これは全てのフリーランスに言えることですが、時給換算でいくらの稼ぎになるかは職種やスキル、もっと言えば人脈や運によります。
多くのフリーランスは「形が見えないもの」を提供しているからという事情もあります。

先日、驚くことがありました。音楽関係のプロにお世話になる機会があり、料金の見積もりをお願いしたところ、筆者が想像していた3分の1だったのです。

一方で、プログラミングなどのエンジニアには高い収入が提示されているのをよく目にします。ネット上の求人情報がどこまで実際に近いものかはわかりませんが、少なくともこの音楽のプロとは明らかに大きく異なるでしょう。もちろん、業種ごとの需要と供給のバランスで収入は決まります。

そしてフリーランスは、自分で自分に値段をつけなければなりません。ある程度自分を客観視できるスキルが必要です。
好きなことや得意なことで収入を得たいと考えた場合、スキルだけが高くても、人脈やセルフプロデュースができなければ厳しくなってしまいます。
逆に言えば、人脈をうまく活用して、同じ作業でも他の人より高い単価で働いている人もいます。

人脈という意味では、やはりフリーランスの大半を40代以降が占めているというのも頷けます。実際、会社員時代からの知り合いから仕事の相談を受けたり、また、この仕事を通じて得た知人から仕事の紹介を受けたりということはしばしばです。

「太い線」を維持できるかどうか

また、フリーランスの特徴として、いろいろな企業と関わることができるというものがあります。
しかし、ゼロからのスタートになった場合、一定の仕事を請け負えることが確定していなければ、当面の間は収入はゼロになると考えた方が良いでしょう。

筆者の場合、最初の1、2年は退職金を食いつぶしながらの生活でした。

そして、「多くの企業から少しずつの仕事を請け負って合計で調整する」というのもなかなか難しいものです。

実際、多くのフリーランスは取引先の企業が1社あるいは2社程度です(図7)。

図7 フリーランスの取引者数
(出所:「フリーランス実態調査結果」内閣官房)
https://www.kantei.go.jp/jp/singi/keizaisaisei/miraitoshikaigi/suishinkaigo2018/koyou/report.pdf p14

一定の量の仕事を安定的に供給してくれる企業の存在は欠かせません。
メインとする取引先を絞り、あとは「副業」と考えるのもひとつのありかただと筆者は考えています。
「食いっぱぐれなくやっていく」方法を見つける、あるいは起業を視野に入れておくのが良いでしょう。人脈と運が大きく関係してきます。

「スキルの掛け合わせ」「アウトプットする能力」の必要性

そして筆者はフリーランスで生活していくにあたって、「単独スキルだけでは厳しい」とも感じています。

例えばWebライターという筆者の仕事の場合です。
手前味噌ながら筆者は文章は得意な方だと思っています。しかし、それだけでは足りないのです。
どれだけ文章が上手な人でも、知識や経験がなければライターとしては成り立ちません。逆も同じで、いくら知識や経験があっても、文章力が足りなかったり、読者のニーズを汲み取れなければこれもまたライターとしては厳しいのが実情です。

筆者の場合、文章だけでなく、記者の経験があってこそ今が成り立っているのだと考えています。

また、得意だからといって、我流だけではよほどのレベルでない限りお金になりません。需要のあるものを提供しなければ、それは商品やサービスとしての市場価値はないからです。会社勤めであればそこは社内の他の人が調整してくれますが、フリーランスは自分自身が的確なアウトプット能力を持つ必要があります。

「いつでもフリーランスになれる」心構えは役に立つ

ここまで大まかにではありますが、フリーランスの実情を紹介してきました。

フリーランスという働き方を選ぶのか、企業の中でエキスパートになるのか。どちらが正しいかどうかは人それぞれです。

フリーランスになると人間関係の面で楽になるというのもまた事実です。しかし休日と勤務日の境目がつかなくなるという特徴もあります。開き直って休む勇気を持たなければズルズルと働き続けてしまうこともしばしばです。

ただ、今、多くの企業のトレンドはエキスパートを求める方向に傾きつつあります。「ジョブ型雇用」という形もそうですし、年功を排除して社内公募制度を取り入れる動きもあります。

その中で、企業の中にいたとしても「いつでもフリーランスになれる」と自負できるスキルを見極めて磨いていくことは重要です。
どこにいても自立性を求められる今後の雇用トレンドの中で、フリーランスについて知り、その働き方を参考にすることも「やりがい」や「成長実感」に繋がることは間違いないと筆者は考えています。

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この記事を書いた人

清水 沙矢香

2002年京都大学理学部卒業後、TBSに主に報道記者として勤務。社会部記者として事件・事故、テクノロジー、経済部記者として各種市場・産業など幅広く取材、その後フリー。
取材経験や各種統計の分析を元に多数メディアに寄稿中。

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