休憩時間に関する法律のルール|労働基準法違反のケーススタディ・チェックポイントを弁護士が解説

休憩時間に関する法律のルール|労働基準法違反のケーススタディ・チェックポイントを弁護士が解説

公開日:2023/05/10

休憩時間が与えられていても、実際にはミーティングや指示待ちなどで潰れてしまうケースはよく見られます。
しかし労働基準法では、一定時間以上の休憩を付与することが使用者に義務付けられており、十分な休憩を与えずに労働させることは違法の可能性が高いでしょう。

今回は、休憩時間について労働基準法違反が疑われる事例をケーススタディ形式でまとめました。

休憩時間に関する3つのルール

労働基準法34条では、休憩時間について以下の3つのルールが定められています。

(1)一定時間以上の休憩の付与
(2)休憩時間の原則一斉付与
(3)休憩時間の自由利用

一定時間以上の休憩の付与

使用者は労働者に対して、少なくとも以下の時間以上の休憩を、労働時間の途中に与えなければなりません(労働基準法34条1項)。

(a)労働時間が6時間を超える場合
45分以上

(b)労働時間が8時間を超える場合
1時間以上

なお、休憩を1回でまとめて付与することは必須でなく、何回かに分けて付与することもできます。
(例)労働時間が8時間を超える労働者に、30分の休憩を2回に分けて付与する

休憩時間の原則一斉付与

使用者は労働者に対して、原則として休憩時間を一斉に付与しなければなりません(労働基準法34条2項本文)。

ただし、労働者の過半数で組織する労働組合または労働者の過半数代表者との間で労使協定を締結すれば、休憩時間を分散付与することができます(同項但し書き)。

休憩時間の自由利用

使用者は、休憩時間を労働者の自由に利用させなければなりません(労働基準法34条3項)。

言い換えれば、休憩時間中は労働者を完全に労働から解放する必要があります。業務指示に備えてスタンバイしながら食事をとっているような時間は、休憩時間とは認められない可能性があるので注意が必要です。

労働基準法違反が疑われる休憩時間の取り扱い例

たとえば以下のケースでは、休憩時間の取り扱いが労働基準法に違反する可能性があります。

(1)所定労働時間を8時間、休憩時間を45分としているケース
(2)休憩時間を細かく分割し過ぎているケース
(3)休憩が取れなかった労働者に早上がりを認めているケース
(4)休憩時間中にランチミーティングを開催するケース
(5)休憩時間中にも電話対応を依頼しているケース

所定労働時間を8時間、休憩時間を45分としているケース

労働基準法上、1日の労働時間の上限(=法定労働時間)は原則として8時間です。法定労働時間に合わせて、1日の所定労働時間を8時間としている会社はたくさんあります。

ある日の実際の労働時間が8時間である場合、休憩時間は45分付与すれば、労働基準法上は問題ありません。
1時間の休憩付与が必要なのは労働時間が「8時間を超える」場合であって、8時間ちょうどの場合は45分でよいからです。

しかし、休憩時間は所定労働時間ではなく、実際の労働時間を基準に付与する必要があります。所定労働時間を8時間としている会社では、1分でも残業が発生すれば「8時間を超える」ため、1時間の休憩付与が必要となります。

1年を通じて1分たりとも残業が発生しないというのは、多くの会社にとって現実的でないでしょう。1日の所定労働時間を8時間、休憩時間を45分とぎりぎりに設定している会社では、たびたび労働基準法違反が生じている可能性が高いといえます。

休憩時間を細かく分割し過ぎているケース

前述のとおり、休憩時間を分割して付与すること自体は可能です。たとえば合計1時間の休憩を付与すべきケースにおいて、30分の休憩を2回に分けて付与することはできます。

ただし、休憩時間をあまりにも細かく分割すると、休憩時間の自由利用の原則に違反する可能性があります。

たとえば合計1時間の休憩を付与すべきケースにおいて、5分の休憩を12回に分けて付与したとします。この場合、労働者は外出することもままならず、食事も満足にとることができないでしょう。

このように、1回当たりの休憩時間が短すぎると、休憩時間の使い道がかなり限定され、実質的に自由利用が認められていないと判断される可能性があります。

休憩が取れなかった労働者に早上がりを認めているケース

突発的な業務が発生したために、労働者の休憩時間が潰れてしまうことはよくあります。

この場合、会社としては別の時間帯に休憩を付与するのが適切な対応です。しかし、休憩がとれなかったことの埋め合わせに、労働者に早上がりを認める会社もあるようです。

労働基準法上、休憩は労働時間の途中で与えることが義務付けられています(同法34条1項)。早上がりを認めたとしても、労働時間の途中で休憩を付与したことにならないので、労働基準法違反に当たる可能性があります。

休憩時間中にランチミーティングを開催するケース

休憩時間中にランチミーティングを開催する場合、参加が事実上強制であれば、別途休憩時間を付与しなければ労働基準法違反に当たると考えられます。
会社の指揮命令に基づいてランチミーティングに参加する場合、それは「労働」にほかならず、休憩時間とは認められないからです。

これに対して、ランチミーティングへの参加が任意であり、別の活動をすることも認められている場合には、自由利用が保障された休憩時間と認められる可能性があります。

休憩時間中にも電話対応を依頼しているケース

休憩時間中の労働者に対して、「電話がかかってきたら出ておいて」と指示した場合、実際に電話がかかってこなくても、休憩時間とは認められません。

このように、実際の業務に従事してはいないものの、もし業務が発生したら対応しなければならない時間は「手待ち時間」と呼ばれ、労働時間に該当します。
手待ち時間を休憩時間として取り扱うことはできないので、別途休憩を付与しなければ労働基準法違反となります。

休憩時間が適切に付与されない場合の対処法

会社が適切に休憩時間を与えない場合、労働者は以下の対応をとることが考えられます。

(1)労働基準監督署に相談する
(2)未払い賃金を請求する

労働基準監督署に相談する

労働基準監督署は、労働基準法などの遵守状況を監督する行政機関です。労働基準法違反が疑われる事業場に対しては、臨検(立ち入り調査)などを経て行政指導などを行います。

職場における労働基準法違反の状況について、労働者は事業場の所在地を管轄する労働基準監督署*1へ申告することができます(労働基準法104条1項)。申告をきっかけとして臨検や行政指導が行われれば、職場における労働基準法違反の状況が是正される可能性が高いでしょう。

なお、労働基準監督署への申告を理由として、会社が労働者を不利益に取り扱うことは違法とされています(同条2項)。

未払い賃金を請求する

休憩時間は無給とされているのが通常ですが、会社の業務指示によって休憩時間が潰れ、別途休憩が付与されていない場合には、潰れた休憩時間について賃金が発生します。

長期間にわたって頻繁に休憩が潰れている場合は、相当額の未払い賃金が発生している可能性があります。賃金の請求は3年間まで遡れますので、ある程度溜まった段階で未払い賃金を請求することもご検討ください。

資料一覧

■お知らせ

私たちNTT Comは新たな価値を創出できるワークスタイルの実現を支援しています。
企業の働き方改善にご活用ください。

ワークスタイルDXソリューション
>> Smart Workstyleはこちら

NTTコミュニケーションズのデジタル社員証サービス

スマートフォンをポケットにいれたまま、ハンズフリーで入室!

Smart Me®︎は、社員証機能をデジタル化することにより、物理的なカードを無くすことを目的にしています。
中でも入退館・入退室機能は、どこにも触れない入退認証を実現し、入館カードを常時携帯する煩わしさを解消します。
管理者は、発行・再発行のたびに掛かっていた物理カードの手配・管理コストが無くなるほか、
ICカードにはできなかった、紛失時に残るカードを悪用されるセキュリティリスクを低減できます。

>> Smart Meはこちら

この記事を書いた人

阿部 由羅

ゆら総合法律事務所代表弁護士。西村あさひ法律事務所・外資系金融機関法務部を経て現職。企業法務・ベンチャー支援・不動産・金融法務・相続などを得意とする。その他、一般民事から企業法務まで幅広く取り扱う。各種webメディアにおける法律関連記事の執筆にも注力している。

人気コラム

おすすめコラム