有給休暇はパート・アルバイトでも取得可能|労働基準法のルールを弁護士が解説

有給休暇はパート・アルバイトでも取得可能|労働基準法のルールを弁護士が解説

公開日:2023/05/10

正社員が取得するイメージが強い有給休暇ですが、パート・アルバイトなどの方でも、労働時間や勤務日数などに応じて有給休暇を取得できます。

今回は有給休暇について、何日間取得できるのか、パート・アルバイトの方が有給休暇を取得できるのはどのような場合であるかなどをまとめました。

有給休暇を取得できる労働者の条件

有給休暇を取得できるのは、以下の2つの要件を満たす労働者です。

(1)6か月以上継続勤務したこと
(2)基準期間における全労働日の8割以上出勤したこと

6か月以上継続勤務したこと

有給休暇は、雇入れの日から起算して6か月間が経過した時点で最初に付与されます。その後は、1年間勤務を継続するごとに有給休暇が付与されます(労働基準法39条1項~3項)。

継続勤務期間の要件は、正社員であってもパートタイム労働者(パート・アルバイトなど)であっても同様です。したがって、6か月以上継続勤務していれば、パートやアルバイトでも一定日数の有給休暇を取得できます。

基準期間における全労働日の8割以上出勤したこと

有給休暇は、基準期間における全労働日の8割以上出勤した労働者に対して付与されます。

基準期間とは、最初に付与される有給休暇については雇入れから6か月間、それ以降に付与される有給休暇については付与日の直前1年間です。

パートやアルバイトの場合、労働契約(雇用契約)に基づく所定労働日数を労働日として出勤率を計算します。
たとえば、基準期間(1年間)における所定労働日数が106日(=週3日×52週)だった場合は、85日以上出勤していれば有給休暇が付与されます。

なお、有給休暇を取得して休んだ労働日については、出勤したものとみなして出勤率を計算します。

有給休暇を取得できる日数

フルタイム労働者(いわゆる「正社員」)の場合、継続勤務期間に応じて、年10日から20日の有給休暇を取得できます。

パートタイム労働者(パート、アルバイト)の場合、フルタイム労働者よりは日数が少なくなりますが、継続勤務期間と所定労働日数に応じて有給休暇を取得可能です。

フルタイム労働者(正社員)の有給休暇日数

有給休暇との関係では、以下のいずれかに該当する場合はフルタイム扱いとなります。

(a)1週間の所定労働日数が5日以上
(b)1年間の所定労働日数が217日以上
(c)1週間の所定労働時間が30時間以上

フルタイム労働者が取得できる有給休暇の日数は、継続勤務期間に応じて以下のとおりです(労働基準法39条2項)。

継続勤務期間 付与される有給休暇の日数
6か月 10日
1年6か月 11日
2年6か月 12日
3年6か月 14日
4年6か月 16日
5年6か月 18日
6年6か月以上 20日

(例)
週5日勤務するフルタイム労働者が、4年6か月継続勤務した際に付与される有給休暇は年16日

パートタイム労働者の有給休暇日数

有給休暇との関係では、以下の条件をすべて満たす場合にはパートタイム扱いとなります。

(a)1週間の所定労働日数が4日以下
(b)1年間の所定労働日数が216日以下
(c)1週間の所定労働時間が30時間未満

パートタイム労働者が取得できる有給休暇の日数は、継続勤務期間と所定労働日数に応じて以下のとおりです(労働基準法39条3項)。

1週間の所定労働日数 4日 3日 2日 1日
1年間の所定労働日数 169日以上216日以下 121日以上168日以下 73日以上120日以下 48日以上72日以下
継続勤務期間 6か月 7日 5日 3日 1日
1年6か月 8日 6日 4日 2日
2年6か月 9日 6日 4日 2日
3年6か月 10日 8日 5日 2日
4年6か月 12日 9日 6日 3日
5年6か月 13日 10日 6日 3日
6年6か月以上 15日 11日 7日 3日

※1週間の所定労働日数に従った有給休暇の日数と、1年間の所定労働日数に従った有給休暇の日数が異なる場合は、多い方が適用されます。

(例)
週4日勤務かつ1年間の所定労働日数が208日のパートが、3年6か月継続勤務した際に付与される有給休暇は年10日

有給休暇に関するその他のルール

有給休暇については労働基準法により、付与日数以外にも以下のルールが定められています。

(1)有給休暇の取得は原則自由|ただし使用者に時季変更権あり
(2)有給休暇の取得は1日単位が原則|ただし半休・時間休などが認められる場合あり
(3)年10日以上の有給休暇が認められる場合、使用者に付与義務あり
(4)有給休暇の消滅時効は2年

有給休暇の取得は原則自由|ただし使用者に時季変更権あり

労働基準法に従って付与された有給休暇は、原則として労働者が自由に取得できます(労働基準法39条5項本文)。

ただし例外的に、労働者から請求された時季に有給休暇を与えることが事業の正常な運営を妨げる場合は、他の時季に与えることができます(同項但し書き)。これを使用者の「時季変更権」といいます。

<時季変更権が認められる場合の例>
・請求された有給休暇の取得時季が間近に迫っており、代替人員を確保できない場合
・同じ時季に複数の労働者が有給休暇の取得を請求し、人員が著しく不足することが見込まれる場合
・有給休暇の取得を請求した労働者が、同時期に予定される業務に必要不可欠である場合
・事前に全く相談せず、長期間にわたる有給休暇の取得を請求した場合
など

有給休暇の取得は1日単位が原則|ただし半休・時間休などが認められる場合あり

有給休暇は原則として1日単位で付与するものであり、労働者から請求されたとしても、使用者はそれより小さい単位で有給休暇を付与する義務を負わないと解されています(昭和24年7月7日基収1428号、昭和63年3月14日基発150号)。

ただし、労働契約や就業規則において、半日単位で有給休暇を取得できる旨が定められていれば、午前休・午後休の取得が認められます。
また、労使協定を締結すれば、時間単位での有給休暇(時間休)の取得を認めることもできます(労働基準法39条4項)。

年10日以上の有給休暇が認められる場合、使用者に付与義務あり

年10日以上の有給休暇が付与される労働者については、使用者はそのうち5日間を、付与日から1年以内に時季を定めて与えなければなりません(労働基準法39条7項)。
職場の空気感や同僚への配慮などが原因で躊躇する労働者が多いことを踏まえ、有給休暇の取得を促進するために、2019年4月から上記の規定が新設されました。

使用者が時季を指定して有給休暇を与える際には、あらかじめ上記の規定によって有給休暇を付与することを明らかにした上で、その時季について労働者の意見を聴かなければなりません(労働基準法施行規則24条の6第1項)。
また、使用者は労働者から聴いた意見を尊重するよう努めなければなりません(同条2項。ただし、必ずしも従う義務はありません)。

有給休暇の消滅時効は2年

有給休暇は、その権利が発生した日から2年間で時効消滅します(労働基準法115条)。したがって、いわゆる有給休暇の「繰り越し」が認められるのは、基準期間の次の1年間限定です。

なお、前の基準期間から繰り越した有給休暇がある場合は、その年に付与された有給休暇よりも、繰り越し分が先に消化されます。

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この記事を書いた人

阿部 由羅

ゆら総合法律事務所代表弁護士。西村あさひ法律事務所・外資系金融機関法務部を経て現職。企業法務・ベンチャー支援・不動産・金融法務・相続などを得意とする。その他、一般民事から企業法務まで幅広く取り扱う。各種webメディアにおける法律関連記事の執筆にも注力している。

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