ウェルビーイングを高める幸せな生き方のヒント PERMA理論とSPIRE理論とは

ウェルビーイングを高める幸せな生き方のヒント PERMA理論とSPIRE理論とは

公開日:2023/06/07

国連が調査した「世界幸福度レポート2022」によれば、日本のGDPは世界第3位です。*1
しかし、国連の調査では幸福度が54位と低いことが分かりました。*2
このように、国の経済活動は活発でも人々の心が満たされるかどうかは、また別の問題のようです。

ノーベル経済学賞を受賞したアメリカのダニエル・カーネマン教授の研究結果では、個人の所得に関しても年収7万5000ドル(日本円で約900万円)付近までは収入の大きさと幸福度は関連するものの、それ以上収入が増えても幸福度は頭打ちとなるという研究結果も報告されています。*3

この記事では、ウェルビーイングに基づいた「幸福」の要素(PERMA)などをご紹介しながら「幸せを感じられる生き方」についてご紹介します。

1.働き方の変化や生活の質により幸福度が変わる

最初に、働き方や生活の質により、幸福度がどのように変わるのかについて解説します。

仕事時間が減少すると「健康状態」や「WLB」満足度が上昇

下図1は、内閣府が調査した2022年度の「満足度・生活の質に関する調査報告書」の資料です。

コロナ禍前と比較すると、仕事時間が減少した割合が全体で55.4%と過半数を超えており、女性の場合は「減少」と回答した割合が62.8%と男性より多い結果となりました。
通勤時間では東京圏で働く人の減少率が多めとなっています。(下図1:図表5-1)

なお、男性で仕事時間が減少した人は、生活・健康状態・WLB(ウェルビーイング)の満足度がそれぞれ上昇しました。特にWLB面での満足度が上昇しており、仕事をする時間が減るほど心にゆとりが出てくる状況となっています。

一方、女性の場合では、仕事時間が増えたほうが健康状態の満足度が上がり、仕事時間の変化なし、あるいは減少したほうが下がる結果となりました。WLBの満足度も全てのパターンにおいて男性より低い数値となっており、女性のほうが簡単には幸福度が上がらないというのが実情といえます。(下図1:図表5-2)

出典:内閣府「満足度・生活の質に関する調査報告書2022」P7

出典:内閣府「満足度・生活の質に関する調査報告書2022」P7
https://www5.cao.go.jp/keizai2/wellbeing/manzoku/pdf/summary22.pdf

生活満足度の高い人はストレスを受けにくい

下図2の図表5-3は、生きがいとK6(心の健康状態)の分布を表したものです。
参照すると、「趣味や生きがいがある人」のほうが、ストレスを受けにくいことが分かりました。何かしら打ち込めるものを持つ人は、毎日の生活をイキイキと楽しく過ごせます。

一方、「趣味や生きがいがない人」はストレスを強く受ける傾向があり、心の健康も満足度が低くなっています。(下図2の図表5-4)

出典:内閣府「満足度・生活の質に関する調査報告書2022」P7

図2)出典:内閣府「満足度・生活の質に関する調査報告書2022」P7
https://www5.cao.go.jp/keizai2/wellbeing/manzoku/pdf/summary22.pdf

2.ウェルビーイングに欠かせない2つの法則【PERMA・SPIRE】

何を幸せに感じるかは人により違いますが、いくつかの共通点があります。
ウェルビーイングの構成要素として有名なのが、PERMA(パーマ)とSPIRE(スパイア)の理論です。
ここでは、それぞれの理論について解説します。

PERMA理論【精神面を重視】

PERMA理論は、ポジティブ心理学の父として知られる、マーティン・セリグマン博士が提唱している理論です。ポジティブ心理学とは、病的な状態の治療だけでなく、人間の健全な心理状態の促進を領域とする学問です。*4
ウェルビーイングには5つの構成要素があり、下記の5つを定義しています。

要素 主な感情
P(Positive emotion:ポジティブ感情) うれしい・面白い・楽しい・感動など
E(Engagement:没頭・没入) 仕事やスポーツ、趣味などに没頭すること
R(Relationship:人間関係) 人とのつながりを大切にして楽しめること
M(Meaning:意味・意義) 生きる意味や目的を自覚すること
A(Accomplishment:達成) 何らかの目標を自分の力で達成すること

図3)参考:富山県「ウェルビーイングってなんだ?」
https://www.pref.toyama.jp/documents/27952/wellbeing_web03.pdf

「生きていてうれしい」など前向きな気持ちを感じながら、仕事やスポーツなどに打ち込み、人とのつながりも楽しみながらポジティブに人生を歩むことが幸せへとつながります。
ただ、生きているというだけではなく人生における意義や目的を自覚し、自らの力で何らかの目標を達成することが、充実感を味わえる要素です。

SPIRE理論【全体性を意識】

SPIRE理論は、アメリカのポジティブ心理学の研究者で「幸せ研究」の第一人者であるタル・ベン・シャハー博士が、ウェルビーイングを高める指標として定義したものです。
ウェルビーイングを精神面や身体面だけでなく、その人の全体性として捉えることが重要であると提唱しています。*5

SPIRE理論は下記の5つの要素から構成されています。

要素 主な感情
S(Spiritual Well-Being:精神のウェルビーイング) 人生に目的や意義を見出し、今を楽しむ
P(Physical Well-Being :身体のウェルビーイング) 運動や適切な休養などで身体を労り、心と体のつながりを活かす
I(Intellectual Well-Being:知性のウェルビーイング) 好奇心を満たす深い学びに取り組む
R(Relational Well-Being :人間関係のウェルビーイング) 他の人と建設的な関係を育む
E(Emotional Well-Being:感情のウェルビーイング) 心地よい感情が自分の中に流れている

図4)参考:富山県「ウェルビーイングってなんだ?」
https://www.pref.toyama.jp/documents/27952/wellbeing_web04.pdf

SPIRE理論では、どれか一つだけではなく、全体的な要素を高めていくことを必要としています。全ての要素がバランスよく満たされている状態でいることがポイントです。
ただ、タル・ベン・シャハー博士は上記の5つの中でも、「人間関係」が幸せのナンバーワンの指標と位置付けており、人との良好な関係性を重視しています。

3.幸せを感じられる生き方とは

近年は多様な生き方を選択できる時代であり、人それぞれの幸せを実現することが尊重されています。
ここでは、幸せを感じられる生き方について見ていきましょう。

安定した収入&私生活との調和が取れた仕事が理想的

下図5は、内閣府が調査した 「 国民生活に関する世論調査(令和4年10月調査)」をまとめたグラフです。参照すると、「どのような仕事が理想的だと思うか」という質問に対し、「収入が安定している仕事」を挙げている割合が62.8%と最も高くなりました。

次に挙げられたのは「私生活とバランスがとれる仕事」(53.7%)、「自分にとって楽しい仕事」(51.9%)です。生きていくには「お金」が必要ですが、仕事をする上ではワークライフバランスが取れており、ストレスフリーで働けるかどうかも重要な要素といえます。

ちなみに「高い収入が得られる仕事」は19.0%であり、令和3年度よりさらに少なくなっています。

出典:内閣府「世論調査」図25(最後の方)

図5)出典:内閣府「世論調査」図25(最後の方)
https://survey.gov-online.go.jp/r04/r04-life/2.html

これからは心の豊かさを重視して生きていきたい人が51.7%

下図6は、「これからは心の豊かさか、まだ物の豊かさか」という質問の回答結果です。
「物」より「心」を重視する傾向があり、「これからは心の豊かさに重きをおきたい」という人の割合が51.7%と過半数を超えました。

どちらかというと男性より女性のほうが心の豊かさや、ゆとりある生活を重視しているといえます。年齢別では、「物の豊かさ」を重視する層は18~29歳、40歳代が半分以上を占める結果となりました。60歳以上は「心の豊かさ」に重きをおく人が半数以上です。年齢が上がるほど、物質面より精神面を大切にしています。

内閣府「世論調査」図25(図6)出典:内閣府「世論調査」図21(最後の方))

図6)出典:内閣府「世論調査」図21(最後の方)
https://survey.gov-online.go.jp/r04/r04-life/2.html

まとめ

ウェルビーイングとは、肉体的・精神的・社会的にも満たされた状態を指しており、この3つのバランスが取れていてこそ、人は幸せを感じやすいといえます。
人には「心」というものがあるため、物質面だけパーフェクトでも幸せとは限りません。

人によって幸せの感じ方にはそれぞれ違いがあるので、自分が幸せであると感じられる環境を大切にしましょう。

資料一覧

■お知らせ

私たちNTT Comは新たな価値を創出できるワークスタイルの実現を支援しています。
企業の働き方改善にご活用ください。

NTTコミュニケーションズのデジタル社員証サービス

スマートフォンをポケットにいれたまま、ハンズフリーで入室!

Smart Me®︎は、社員証機能をデジタル化することにより、物理的なカードを無くすことを目的にしています。
中でも入退館・入退室機能は、どこにも触れない入退認証を実現し、入館カードを常時携帯する煩わしさを解消します。
管理者は、発行・再発行のたびに掛かっていた物理カードの手配・管理コストが無くなるほか、
ICカードにはできなかった、紛失時に残るカードを悪用されるセキュリティリスクを低減できます。

>> Smart Meはこちら

この記事を書いた人

矢口 美加子

プロフィール:ライター・宅地建物取引士・整理収納アドバイザー。宅建・整理収納アドバイザー1級、福祉住環境コーディネーター2級の資格を取得済みです。不動産・リフォーム・不動産投資・転職・整理収納関連の記事を複数のメディアで執筆。ライター業の他に、家族が経営する投資用物件の入居者管理もこなしています。

人気コラム

おすすめコラム