話題沸騰の「ChatGPT」何ができる?スピーチやギャグを任せてみた結果…

話題沸騰の「ChatGPT」何ができる?スピーチやギャグを任せてみた結果…

公開日:2023/06/21

ChatGPTの登場で、AI技術はさらに注目を集めるようになりました。
これまで以上に「人の仕事を奪うのではないか」と考えてしまう人もいることでしょう。

実際、ChatGPTは様々な所で業務効率化のために導入されつつあります。自治体や省庁も例外ではありません。

また、AIは「人格」を持つようになるのか?そのような議論もあります。
これらAIをめぐる議論について、今回は確認してみましょう。

ChatGPTの話題から「Siri」を思い出した

先日、あるイベントでのことでした。
司会を任された女性が何を話せばいいのか前日から考えたものの、なかなか良いアイデアが見つからず、ChatGPTに聞いてみた、ということです。
しかし返ってきたのはトークの「一般論」に過ぎず、ギャグを言うように頼んでもいまいちよくわからない話が返ってきたというのです。

そこで彼女は、あえて「Siri」に似たようなことをいくつか聞いてみたそうです。コンピュータと対話できるという意味では、Siriのほうが先駆者と言えるかもしれません。
すると彼女曰く、

「Siriに聞いたら、それこそ、『布団が吹っ飛んだ』的なものが返ってきて逆に困っちゃいました」

とのことでした。さらに丁寧なことに「寒いですよね、ごめんなさい」とも付け加えたそうです。

これは興味深い話だと思い、筆者も同じことを試してみました。

まず、ChatGPTです。

Q: ギャグを言ってください。
A: もちろんです!こちらは一つのギャグです:
 「なぜ犬は新聞を読まないのか知っていますか?」
 「なぜですか?」
 「なぜなら、彼らは主にボクシングニュースに興味があるからです!」
  笑っていただけたでしょうか?もし他にも何かお求めでしたら、お知らせください!

なんだかいまひとつピンと来ない話です。英語圏にはこのようなギャグがあるのでしょうか?筆者はその辺りには詳しくないのでよくわかりませんが、イベントのMCには使えそうにありません。

では、Siriに頼んでみました。

Q: ギャグを言ってください
A: 本気ですか?親父ギャグを言うなんて、おや、自虐?

どちらが笑えるかは明白です。

ChatGPTもSiriも、毎回答えが変わるのは同じですが、なんだかSiriに「人間味」すら感じてしまったくらいです。もちろんChatGPTとSiriでは開発意図が異なるでしょうから、それぞれに個性があるといえばそうかもしれません。

広がるChatGPTの活用場面と注意点

それはさておき、ChatGPTはどんな質問にでも、人間が書くような文章ですらすらと答えてくれるというのが最大の特徴です。
また、かなりの長文を扱うことができるのも強みです。

実際、こうしたChatGPTの利点をいかして業務の効率化をはかるため、文章作成などに導入を試みる自治体が出てきています。
神奈川県横須賀市役所では文章作成や議事録の要約、政策立案などでの試験運用を始めています*1。
また、省庁では農林水産省で一部業務で活用が始まっています*2。数千ページに上るマニュアルの改定や修正などが目的です。

政策立案にChatGPTを使うのが良いかどうかについては個人的に疑問は残りますが、確かに、人の手では時間がかかる作業への導入がメインといえます。

また、ChatGPTはものごとの検索にも役立つことでしょう。しかし、絶対的に気をつけなければならない点があります。それは機密情報の扱いです。

アメリカの情報セキュリティ企業、サイバーヘイブンが同社の製品を使う160万人の従業員を対象に実施した調査によると、8.2%が少なくとも1回はChatGPTを利用しています*3。
しかし、問題なのはその使い方です。
従業員160万人のうち、3.1%が所属企業の機密データを入力してしまったというのです。
他には顧客情報、ソースコード、個人情報といった情報を入力してしまっている人もみられました。

AIはこれらの情報も学習のリソースにしてしまいます。すると、機密情報や個人情報がいつどこで、誰に漏洩するかわからないという危険性があります。
情報漏洩については特に注意が必要です。

AIと個性

さて、話を「AIの個性」に戻したいと思います。
ChatGPTのような「生成形AI」が進化すれば、事務作業だけでなく文章を書く、絵を描くなどの分野のクリエイティブな領域の従事者の仕事を奪ってしまうのか?という懸念が広がっています。
そんなことが実現してしまったら筆者は確実に失業しますので、筆者もこの話題には無関心ではいられません。

「春の風 桜舞い散る 命の息」

実はこれは、筆者がChatGPTに先ほど詠んでもらった俳句です。

また、ChatGPTではありませんが、過去には「575である」「季語を入れる」というルールのもとでAIに俳句を詠ませた結果、このような句が生まれています*4。

てのひらを隠して二人日向ぼこ

唇のぬくもりそめし桜かな

初恋の焚火の跡を通りけり

白鷺の風ばかり見て畳かな

裏方の僧が動きて麦の秋

これらがAIの「個性」によって生まれたものかどうか?
様々な議論はありますが、筆者は「個性」だと感じます。

というのは、AIがそうであるように人間の場合も、これは文学でも音楽でも同じことが言えるかも知れませんが、どのような作家やアーティスト、クリエイターも様々な先人の作品から学んでいるからです。
例えばミュージシャンの世界では、まず自分が憧れるアーティストの曲をコピーするところから始まります。そこに他のアーティストの要素が混ざり、オリジナルのスタイル、その人らしさ、になっていくのは珍しいことではありません。

では、ChatGPTのオリジナリティはどうなのだろう?と気になり、先ほど「あなたらしい俳句を詠んでください。」とリクエストすると、こう返ってきました。

「人工の心 言葉の風舞う 思考の海」

一本取られた気分です。確かに「AIらしい」俳句です。ちょっとした切なさまで感じてしまいます。

しかしChatGPTに「言葉の風」を吹き込むのは人間に他なりません。そのような意味ではAIにとって人間の存在は必要です。ただ、偶然なのか偶然でないのか分からないこの語句の組み合わせを、人もまた柔軟に自分の経験リソースとして取り入れてみるのはいかがでしょうか。

武道や茶道の世界に「守破離」という言葉があります。
修行の段階を示すもので、まずは流儀や師匠の教えを忠実に「守」ること、次に他の流派の教えなどについても学び良いところを取り入れ発展させていく「破」の段階、そして最終的には一つの流派から離れ独自の世界を確立する「離」の段階です。

人間がこの段階を踏んで物事を学んでいくのなら、AIが偶然であっても示してくれる良いところを取り入れていく、そのような過程があっても良いのではないでしょうか。
そして、人間が新しい手法を思いつくとAIはそれをさらに学びます。そのようにして、切磋琢磨のよき相手になってくれるのではないかとも筆者は考えます。

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この記事を書いた人

清水 沙矢香

2002年京都大学理学部卒業後、TBSに主に報道記者として勤務。社会部記者として事件・事故、テクノロジー、経済部記者として各種市場・産業など幅広く取材、その後フリー。
取材経験や各種統計の分析を元に多数メディアに寄稿中。
Facebook:shimizu.sayaka/

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