日本人は働き過ぎ?社員の長時間労働を予防するため企業が取るべき対応策を解説

日本人は働き過ぎ?社員の長時間労働を予防するため企業が取るべき対応策を解説

公開日:2023/06/28

わが国では依然として、長時間労働が問題となっています。

長時間労働の削減には適正な労働時間を把握することが必要です。事業者側には、社員が健康を維持しながら働ける職場環境を構築する責務があるといえます。

そこで本記事では、社員の働き方の見直しや心の健康を保つために必要なことを、厚生労働省の資料などを参考にしながら解説します。

1.日本の労働時間の実態

現在は働き方改革が提唱され、ワークライフバランスが重視される時代です。
最初に日本の労働時間の実態についてみてみましょう。

日本の年間労働時間は世界28位の1,607時間

OECD(経済協力開発機構)が調査した2021年度の労働時間ランキングによると、日本の年間労働時間は世界28位の1,607時間でした。赤いラインが日本のデータです。
各国の平均労働時間(青いライン)が1,716時間であるのと比較すると、平均よりやや低い数値となっています。

本の自然災害発生件数と被害額の推移

図1)出典:OECD(経済協力開発機構)「労働時間(労働時間)」
https://www.oecd.org/tokyo/statistics/hours-worked-japanese-version.htm

なお日本の平均労働時間は、昭和35年では2,426時間と長時間でしたが、平成元年は2,076時間、平成25年は1,795時間と、年数が経つほど着実に減少しています。(下図2)
令和2年は新型コロナウイルス(令和元年12月初旬発生)の影響もあり、労働時間が減少しましたが、令和3年からは増加しています。

出典:厚生労働省「労働時間制度の現状等について」P15

図2)出典:厚生労働省「労働時間制度の現状等について」P15
https://www.mhlw.go.jp/content/11201250/000981929.pdf 

年間の総実労働時間が減ったのはパートタイム労働者が増えたから

総実労働時間数とは、「所定内労働時間数」と「所定外労働時間数」の合計です。
つまり、就業時間内に労働した時間と、早出・残業・休日出勤等、就業時間外に労働した時間の合計時間を指しています。*1

下図3は、厚生労働省がまとめた「年間総実労働時間の推移」の表です。
参照すると、年間総実労働時間は年々、右肩下がりに減少しています。この現象は総実労働時間が短いパートタイム労働者の比率が、平成8年頃から上昇していることが一つの要因とされています。パートタイム労働者比率は令和3年には、全体の約3割程度です。
なお、令和元年になるとパートタイム労働者の総実労働時間は、1,000時間を下回っています。

出典:厚生労働省「労働時間制度の現状等について」 P16

図3)出典:厚生労働省「労働時間制度の現状等について」 P16
https://www.mhlw.go.jp/content/11201250/000981929.pdf

2.過重労働による健康障害を防ぐには

ここまで、日本人の労働時間についてみてきました。
きちんと体を休めてから働かないと、健康障害を発生するリスクが考えられるでしょう。
ここからは、過重労働による健康障害を防ぐポイントについて解説します。

時間外・休日労働時間は80時間がデッドライン

下図4は厚生労働省が作成した、「時間外・休日労働時間」と「健康障害のリスク」を表したイメージ図です。

参照すると、時間外・休日労働時間が長くなるほど、健康障害のリスクが高まります。労働基準法では、企業と労働者が結ぶ36(サブロク)協定(※時間外・休日労働に関する協定)において、勤務時間の延長時間は1ヶ月45時間、1年間で360時間までと定めています。臨時的に特別な事情がない限り、この時間を超える働き方は認められていません。*2

1ヶ月の限度時間内である45時間以内では健康障害のリスクは心配ありませんが、長くなるほど徐々にリスクが高まります。月100時間以上または2〜6ヶ月平均で月80時間を超えると、健康障害が発生する可能性が高いとされています。

出典:厚生労働省「過重労働による健康障害を防ぐために」 P1 P16

図4)出典:厚生労働省「過重労働による健康障害を防ぐために」 P1
https://www.mhlw.go.jp/content/11303000/000553560.pdf

時間外・休日労働時間の削減や健康管理体制の整備が必要

社員が健康を守り働くためには、事業者側が時間外・休日労働時間の削減や、健康管理体制を整備することが必要です。
労働時間については36協定を遵守し、限度時間を超えて時間外・休日労働をさせないようにします。休日労働についても削減するようにしましょう。*3

年次有給休暇の取得を促進し、労働者が年休を取りやすい環境を構築することも重要です。勤務間インターバル制度を利用して、1日の勤務終了したら翌日の出社までの間に、一定時間以上の休息時間(インターバル)を設けるようにします。社員の生活時間や睡眠時間を確保し、健康な毎日を過ごせるようにしましょう。*4

健康管理体制の整備として、産業医、衛生管理者、衛生推進者等を設置して、社員の健康管理を実施するのが有効です。*5
常時使用する社員には、1年以内に1回、定期的に健康診断を行い、社員の健康を守ります。*6

3.長時間労働の削減に向けて事業主が取り組むべきこと

ここでは労働者の長時間労働を削減するために、事業主が取り組むべきことについて解説します。

労働者の労働時間を正確に把握する

まず、最初にすべきことは、労働者の労働時間を正確に把握することです。
時間外・休日労働協定(36協定)の内容を社内に周知して、労働者一人ひとりが適正な労働時間を把握できるようにします。

労働時間の把握については、以下の方法が有効的です。
・使用者自らが実際に確認する
・タイムカード、ICカードの記録で客観的に把握する
・パソコンのログインからログアウトまでの時間を確認 *7

使用者が現場で確認したり、タイムカードやパソコンの記録で客観的に確認します。

時間外・休日労働が削減できる方法を社内全体で構築するのも効果的です。
具体的には以下のような方法が挙げられます。

・経営トップが働き方改革に関するメッセージを発信する
・朝型勤務やノー残業デーなど効率的な働き方を促す取り組みを導入する
・一定の時間になった際のPCの強制シャットダウンなど *8

「長時間働く職場」ではなく、「早く帰る職場」の雰囲気を作り上げます。

ワークライフバランスの取れた職場環境作りを進める

仕事と家庭を上手く両立できる、ワークライフバランスの取れた職場環境作りを進めることも重要です。長時間労働が続き、心身ともにゆっくり休めない状態が続くと、労働者の健康や精神に支障をもたらし、仕事への意欲や生産性も下がります。

充実感をもって仕事をするには、適切な労働時間で働き、休暇もしっかり取ることが必要です。心身ともにリフレッシュできるように、年次有給休暇が取得しやすい環境を構築します。*9

4.職場のメンタルヘルス対策で残業時間が減少した取り組み事例

社員が生き生きと元気に働くには、事業者側の取り組みが欠かせません。
ここでは、職場のメンタルヘルス対策で残業時間が減少した取り組み事例についてご紹介します。

異島電設株式会社

出典:厚生労働省「職場のメンタルヘルス対策の取り組み事例:異島電設株式会社(福岡県北九州市)」

図5)出典:厚生労働省「職場のメンタルヘルス対策の取り組み事例:異島電設株式会社(福岡県北九州市)」
https://kokoro.mhlw.go.jp/case/company/cmp118/

最初にご紹介するのは、福岡県北九州市に本社を設置している「異島電設株式会社」です。
メンタルヘルス対策としては社内総務課に「健康づくり担当窓口」を設置し、社員の相談内容に応じて、配置や出勤時間を配慮しています。業務内容が電気工事なので、社員は1日中、客先に出向いて作業をしますが、体力と気力を要します。

45歳以上の社員が長く健康に働けるようサポートすることで、若手社員への教育ができるようになり、結果、ベテラン社員達の業務量が減り、現場作業員全体の平均残業時間が4年間で大きく減少しました。時間的・精神的な余裕が生まれたことにより、さらに若手社員への教育に時間を充てられるようになっています。

この好循環を活かしつつ、社員全員が心身共に健康に働ける会社を目指しています。*10

有限会社三崎工業(沖縄県那覇市)

出典:厚生労働省「職場のメンタルヘルス対策の取り組み事例:有限会社三崎工業(沖縄県那覇市)」

図6)出典:厚生労働省「職場のメンタルヘルス対策の取り組み事例:有限会社三崎工業(沖縄県那覇市)」
https://kokoro.mhlw.go.jp/case/company/cmp101/

次にご紹介するのは、沖縄県那覇市に本社がある「有限会社三崎工業」です。
三崎工業は水道工事事業を営んでいる会社で、看護師の資格を持つ「健康経営エキスパート・アドバイザー」が外部専門家として社員の健康管理をサポートしています。

社員の勤務時間に関しては、社員の事情に合わせて柔軟に対応し、働きやすい環境を整えました。有給休暇を取得しない人もいるため、月1回は全員に休みの希望日を記入して、取得してもらうとのことです。

会社として無理な仕事の受注はせず、社員がストレスなしに安心して働き続けられる職場を促進しています。*11

5.まとめ

業務において過度な負荷がかかると、労働者の健康が心身ともに損なわれるようになります。
全ての労働者が生き生きと元気に働ける社会を実現するために、企業はぜひ、健康経営を目指しましょう。労働者が健康であれば生産性も上がり、業績の向上にも繋がるため、会社にとっても良い状況に好転することが期待できます。

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この記事を書いた人

矢口 美加子

プロフィール:ライター・宅地建物取引士・整理収納アドバイザー。宅建・整理収納アドバイザー1級、福祉住環境コーディネーター2級の資格を取得済みです。不動産・リフォーム・不動産投資・転職・整理収納関連の記事を複数のメディアで執筆。ライター業の他に、家族が経営する投資用物件の入居者管理もこなしています。

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