止まらない人手不足… 企業が人材定着を図るコツは多様な働き方にあり

止まらない人手不足… 企業が人材定着を図るコツは多様な働き方にあり

公開日:2023/07/12

多くの企業が直面している「人手不足」問題。
人材を採用しようと採用活動に力を入れる企業もありますが、人手不足の解決には「人材定着」も必要です。
従業員が長期間働き続けられる環境を整備することによって、人手不足を解消する効果も期待できるでしょう。

そこで今回は、多様な働き方の導入によって企業がどのように人材定着を図り、持続的な成長につながるのかについて解説します。

人手不足に悩む企業は多い*1

中小企業庁の調査によると、多くの中小企業で人手不足の問題を抱えています。

出典:中小企業庁「地域で価値を生み出す小規模事業者」

出典:中小企業庁「地域で価値を生み出す小規模事業者」
https://www.chusho.meti.go.jp/pamflet/hakusyo/2020/shokibo/b2_3_1.html

上記の中小企業の従業員過不足DIは、従業員の状況を「過剰」と答えた企業の割合から「不足」と答えた企業の割合を引いたものです。つまり0を下回っていれば「人手不足の状況に陥っている企業が多い」ことを意味します。

2012年以降は常に0を下回っていることから、データからも人手不足の状況が見て取れるでしょう。

人手不足は生産活動を行う企業にとって大きな問題です。特に今後の日本は少子高齢化が進むことが見込まれており、労働人口が減少する可能性があります*2。

労働人口が減少すると人材を確保する競争が激しくなることから、企業の魅力がないと人手不足の状況が長期化しかねません。人手不足の問題を解消するには、新たに人材を採用することに加え、採用した人材を職場に定着させることが大切です。

人手不足が企業にもたらす問題*3

人手不足の状況が続くと、従業員の負担が増えるだけでなく、企業にもさまざまな問題をもたらします。

内閣府と厚生労働省の調査によると、人手不足による企業活動への悪影響として挙げられた主な項目は下記のとおりです*4。

・既存事業の運営への支障
・技術・ノウハウの伝承の困難化
・余力以上の人件費の高騰
・残業時間の増加、休暇取得数の減少
・能力開発機会の減少
・離職者の増加
・従業員の働きがいや意欲の低下
・キャリアの不透明化
・職場の雰囲気の悪化

人手不足になると従業員一人あたりの業務量が重くなってしまうことから、残業時間が増加し能力開発機会が減少してしまいます。

上記の要因が絡み合った結果、職場環境が悪化してしまい、離職者が増加して人手不足が深刻化するケースも考えられるでしょう。

特に従業員の働きがいや意欲の低下は、労使間での認識の差が大きいケースもあるので、適切な管理とコミュニケーションを取ることが大切です。

人材定着を図る働き方改革*5

厚生労働省では、就業機会の拡大や意欲・能力を存分に発揮できる環境を作ることを目的として「働き方改革」を推進しています。

働き方改革を実施すれば、従業員の置かれた個々の事情に応じて、多様な働き方を選択する仕組みを整備できます。各従業員が多様な働き方を選択でき、心地よく就労できれば人材定着の効果が期待できるでしょう。

なお、厚生労働省が実際に「働き方改革」の実現に向けて行っている主な取り組みは、下記のとおりです。

・長時間労働の是正
・雇用形態にかかわらない公正な待遇の確保
・柔軟な働き方がしやすい環境整備
・ダイバーシティの推進
・賃金引き上げ、労働生産性向上
・再就職支援、人材育成
・ハラスメント防止対策

長時間労働は従業員の心身に負担を強います。厚生労働省も長時間労働を問題視しており、長時間労働削減推進本部を設置して長時間労働対策に取り組んでいます*6。

また、雇用形態にかかわらない公正な待遇を確保することも効果的です。各従業員が都合よく働ける雇用形態を選択し、納得できる処遇を受けられれば仕事に対するモチベーションが高まるでしょう。

多様な働き方を選択できる仕組みを整備すれば、従業員が育児や介護などの個別事情を抱えている場合でも、長期的に安心して働けます。従業員の事情を鑑みつつ、スキルアップ希望などの要望に対応するためにも、テレワークの推進や副業の容認など柔軟な働き方ができる環境を整備することも効果的です。

さらに、賃金の引き上げを行うことも人材定着を図るうえで大切です。日本商工会議所の調査によると、2023年度に所定内賃金の引き上げを実施した企業(予定含む)は62.3%にもなります*7。

所定内給与を引き上げる理由として最も多かったのは「人材確保・定着やモチベーション向上」であったことから、多くの企業にとって賃金の引き上げは人材を確保するための有力な手段となっています。

人材定着を図る取り組みの例

実際に人材定着を図るための取り組みを行っている企業例を紹介していきます。

各企業が置かれている状況や従業員数などによって、行うべき取り組み内容は異なります。

ユニークな取り組みを行っている企業も多いため、参考になる部分があれば導入してみましょう。

株式会社パプアニューギニア海産「フリースケジュール制」*1

大阪府茨木市の株式会社パプアニューギニア海産では「フリースケジュール制」という制度を導入しています。

フリースケジュール制は、出社日・出社時間・退社時間を完全に自由にする仕組みで、パート従業員が働きやすい環境を整備する目的で設けられました。

社長がパート従業員との対話を通じて、育児や親の介護など家庭の事情に対応する必要性を感じたことから、フリースケジュール制の導入に至りました。

株式会社パプアニューギニア海産では、他にも「嫌いな作業をしてはいけない」という制度を設けて、労働生産性の向上の取り組みも行っています。

さまざまな取り組みを行った結果、パート従業員の離職率が低下して各従業員の熟練度が向上し、モチベーションと生産効率の向上につながったようです。

株式会社大志建設「地域貢献手当の支給」*1

静岡県沼津市の株式会社大志建設では、従業員に成長の機会を提供することを目的として「地域貢献手当の支給」を行っています。地域貢献手当とは、社会活動に参加している従業員に対して毎月2,000〜10,000円を支給する制度です。

社長自身の実体験から「地域の社会活動に参加することで、人前で話す能力や地元経営者との関係構築力を習得する成長の機会になる」と考え、地域貢献手当制度の創設に至りました。

地域貢献手当制度を創設したことで、相手の立場を踏まえた説明や気遣いをするなど、コミュニケーション能力の向上というメリットが得られています。

また、社会活動への参加を通じて従業員の仕事ぶりが評価され、顧客から仕事を依頼される機会が増えるなど、会社の売上増加にも貢献しています。

さらに「大志建設は従業員を大切にしている企業」という評判が得られたことで、従業員の新規採用にもつながっているようです。

人手不足を解消するには人材定着を図ることが大切

多くの企業が人手不足に悩まされていますが、人手不足を解消するには人材定着を進めることが大切です。多様な働き方を容認するなど、従業員が長期間働き続けられる環境を整備することで、職場定着率を高められるでしょう。

さらに、労働生産性と企業収益の向上や企業イメージアップなどのメリットが期待できることから、人材確保を進める重要性は高いと言えます。一方で人手不足の状況を放置すると、従業員のさらなる離職や既存事業の運営に支障をきたすなどの問題が起こりかねません。

社会に価値を提供しつつ、従業員の生活を守るためにも、事業主が人材を確保するための工夫を施すことは重要です。

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