業務効率化の意味から流れ、方法までを解説
公開日:2022/06/02
昨今、会社全体で業務効率化を求められる傾向にあります。しかし、なぜ必要なのか、どのように進めていったらよいのかわからず戸惑っている人も少なくありません。
本記事では、どの企業でも欠かせない経理部門における業務効率化に焦点を当てて解説します。
目次
経理の業務効率化とは
経理は、直接利益を生まないバックオフィス業務の1つです。そのため、営業やカスタマーサービスといったフロントオフィス業務に比べ、人数を最小限に抑えられる場合が少なくありません。
少ない人数で業務をこなすためには、効率化が必要です。
業務効率化の意味
業務効率化とは、仕事の見直しを行い不要なものを可能な限り排除し、企業全体の生産性を高めていくことを意味します。
排除すべき要素は「ムリ・ムダ・ムラ」ともいわれており、それぞれ次の状態を指します。
- ムリ:能力以上の負荷がかかる状態
- ムダ:能力に対し負荷が下回る状態
- ムラ:ムリとムダが混在している状態
なぜ必要とされるのか
効率化が必要とされている理由は主に3つあります。
1つには、今後日本で労働人口が減少していくことが挙げられます。少ない人員の中で仕事をこなすには、効率化が欠かせません。
2つ目は、働き方改革です。昨今、仕事と仕事以外の生活のバランスを調和させる生き方として「ワークライフバランス」の必要性が叫ばれています。ワークライフバランスを実現するためには、働き方改革により労働時間を短縮しなければなりません。そのためには、効率化が不可欠です。
3つ目は、経理部門を攻めの部門に変えるためです。現状、経理部門はバックオフィス業務で手いっぱいだと想定されるでしょう。効率化により時間に空きが出ます。捻出できた余力を使い経理部門が把握している決算書や日々の売上の数字を元に資料を作成し、「攻め」の戦略を行うことが可能になります。結果的に、企業全体の効率化や生産性の向上が期待できます。
生産性向上との違い
生産性向上と業務効率化は同時に使われることが多い言葉です。しかし、二つの言葉が意味するものは厳密には異なります。
生産性向上とは、アウトプットの質や量を増加させることを指します。そのため、業務効率化を実現した結果、生産性向上につながることは少なくありません。
業務効率化の推進フローと注意点
進め方と注意点をみていきます。経理はルーティン化された業務の多い部門です。業務別に日単位・月単位・年単位で流れを把握し見直しを行います。
業務効率化を行うフロー
具体的な流れをみていきましょう。
- 仕事内容やフローを全て洗い出し、可視化する
- ムリ・ムダ・ムラの削減
- 新しい業務フローを作成
- 3に沿って業務を実施
一度で終わらせることはできません。4の後は1に戻り、新しい業務フローで生じた問題点を確認し再度削減や改善を行います。効果をあげるためには以後、定期的に見直しを重ねましょう。
全ての業務を一度に変更しようとしない
経理業務は、小口現金管理・売上管理・仕訳処理・支払い管理・経費精算・決算処理をはじめ、多岐にわたります。通常の業務と並行して行うため、全ての業務を一度に変更すると大きな負荷がかかります。
経理には年末調整のように年に一度しか行わない業務も存在します。そのような業務の改善を一度で行うのは困難です。一度に全てを変更せず、改善可能なものから少しずつ取り組みましょう。
業務効率化のメリット
効率化が進むと、従業員が働きやすさを感じるでしょう。会社にとっても、コスト削減などの大きなメリットが生じます。具体的にみていきましょう。
従業員の負担軽減・モチベーションアップにつながる
経理部門は少ない人数で回している場合が少なくありません。そのため、過負荷の状況に陥っている従業員も多いでしょう。効率化により、現在の負担が軽減します。
また、従業員の負担を軽減させると退職率低下につながります。居心地の良い会社で長く働きたいと考え、仕事に対しても前向きに取り組む人が増えるでしょう。
人間にしかできないクリエイティブ業務に時間を割ける
経理部門は、売上や経費など経理にまつわる数値を全て把握しています。効率化により空いた時間を使い、数値を元に新たな戦略を練る時間に充てることができます。
無駄な経費、在庫の増減、地域ごとの売上の推移、仕入額の増減などを把握し、他部署の効率化を促すためのアイデアを見つけられるでしょう。経理業務の効率化に伴い、全社的な効率化や生産性向上がみこめます。
コスト削減ができる
効率化により残業時間が少なくなると、残業代の削減につながります。効率化の過程で、ペーパーレスを導入した場合、用紙代や印刷代、資料置き場のスペース代などを削減できるでしょう。
効率化が成功し働きやすくなった会社は、従業員の退職率低下が期待できます。退職率低下により中途採用者を探す必要が不要になった場合、大幅なコスト削減がみこめます。
経理の業務効率化を成功させるポイント
業務の効率化を成功させるのは簡単ではありません。新フローの定着には時間がかかりますし、一時的に従業員の負荷が増えることも想定されます。成功させるポイントについてみていきましょう。
実状の把握と手段を確認する
経理業務は多岐にわたります。そのため、まず全ての業務を時系列順に書き出し、可視化しなければなりません。
可視化した後は、それぞれの業務に対しどのような手段で効率化できるか確認しましょう。業務に合わせ、ツールを利用する、オンライン化する、ペーパーレスにするなどさまざまな手段を検討します。
現場と経営層の認識の違いを埋める
経営層と現場の認識にギャップがあると、効率化がスムーズに進みません。現場で効率化のために必要なツールやシステムを採用したいと思っても、経営層の理解がないと予算が下りずスムーズに改善が進まないといった問題が生じます。
現状や課題点を経営層に伝え、認識の違いを埋めておきましょう。
業務をまとめられるもの・自動化できるものに分けてみる
現在の業務を把握した後、まとめられるものや自動化できるものを洗い出します。
現在、複数人で分担している作業であっても、まとめた方が効率化につながる場合があるでしょう。
自動化できるものを洗い出すためには、自動化に適した業務を把握しておかなければなりません。例えば次の業務が自動化に適しています。
- 伝票の転記
- 入金データ等の取り込み
- 立替金などの消込
- 請求書作成
- 経費精算処理
- 交通費の金額チェック
経理の業務効率化をはかるための3つの方法
経理の業務を効率化するための方法を3つ解説します。効率化に充てる予算が限られている会社は少なくありません。自社にあったものを採用しましょう。
ツールを使用する
経理会計用のツールを活用しましょう。経費精算システムや、入金消込業務、請求書発行ツシステムなどさまざまなサービスがあります。
経理業務の一部のみに使えるものから、全体をカバーするものまで多種多様です。既に既存のシステムがある場合は、連携機能のあるツールを追加すると利便性が向上します。
DX・AIを活用したシステムを使用する
経理業務の中にはAIと相性が良い業務も少なくありません。例えば、仕訳業務や監査業務もその1つです。
仕訳や監査には一定のルールがありAIと相性が良いため、導入を検討しましょう。人工知能が仕訳や監査のルールを学習し、自動作業を行います。
業務の見直し・タスク管理方法から見直してみる
業務を洗い出してみると、経理部以外の仕事が含まれている場合もあるでしょう。また、実は不要な業務が見つかる場合も少なくありません。削減の検討も必要です。
タスク管理不足により、業務がうまく回っていない場合もあるため注意が必要です。個人のタスク管理の力量に任せていると、能力により差が出る場合もあります。
誰が担当しても優劣が出ないよう、部署内で共通のタスク管理ツールを利用するのも一つの方法といえるでしょう。
まとめ
経理は全ての会社にあります。金銭を扱うため、大きなミスが許されない業務です。しかし、直接利益をあげる部署ではないため少ない人員が担当している会社は少なくありません。経理業務の効率化を行うと、経理部門に余裕ができます。その余裕で、他部署の効率化にとりかかることが可能です。
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