SDGsとは?企業としてできる取り組みや事例を徹底解説
公開日:2022/06/08
近年、SDGsという言葉を耳にする機会が増加しつつあります。個人だけでなく、企業としても取り組みを実践しているケースもあるでしょう。しかし、具体的にSDGsがどういったものなのか把握できていないという企業も多いのではないでしょうか。 そこで、今回はSDGsの概要から考えられるようになった理由、企業の実践例について詳しくみていきます。
目次
そもそもSDGsとは
ここでは、SDGs(Sustainable Development Goals)の概要について解説します。総務省の定義する意味や17の目標について知っていきましょう。
総務省の定義するSDGs
総務省により定義付けられているSDGsとは、持続可能で多様性・包括性(D&I)を兼ね備えた社会を実現するため、2030年までに達成すべき国際目標です。SDGsには、前身となるMDGs(ミレニアム開発目標)で達成できなかった項目も含まれます。
17の目標と169のターゲット
SDGsは17の開発目標と169のターゲットに加え、232の指標から構成された目標です。目標およびターゲットとして取り上げられている項目には、以下のような例があります。
経済成長と雇用
持続的・包括的かつ持続可能な経済成長、完全かつ生産的な雇用、およびすべての人のためのディーセント・ワーク(やりがいのある人間らしい雇用)を目指す目標です。
- 生産活動、ディーセント・ワークの創出、起業家精神、創造性、イノベーションを支援する。金融サービスへのアクセスを含め、零細・中小企業の正規化と成長を促進するための開発指向の政策を推進する。
- 持続可能な消費と生産に関する10年計画の枠組みに従い、先進国が主導して2030年までに消費と生産における世界の資源効率を順次改善していき、経済成長と環境悪化の切り離しに努める。
- 2030年までに、若者や障害者を含むすべての女性・男性のための完全で生産的な雇用とディーセント・ワーク、および同一価値の仕事に対する同一賃金を実現する。
持続可能な生産と消費
天然資源を可能な限り長期的に使い続けるために、持続可能な生産・消費パターンの確保を目標としています。
- 持続可能な生産・消費パターンに関する10年間の計画枠組み(10YFP)を実施する。途上国の発展と能力を考慮して先進国が率先しつつ、すべての国が施策を実行する。
- 2030年までに、天然資源の持続可能な管理と効率的な利用を実現する。
- 2030年までに、予防(リデュース)・削減・リサイクル・再利用(リユース)に取り組み、廃棄物の発生を大幅に削減する。
気候変動
気候変動とその悪影響により、人類を始めとする生物の存続が危惧されているため、緊急対策が必要とされています。
- すべての国において、気候による災害や自然災害に対する回復力、および適応能力を強化する。
- 国の政策・戦略・計画に対し、気候変動対策を組み込む。
- 気候変動やその影響の緩和・適応、早期警戒に関する教育・啓発、人的・制度的能力を向上させる。
SDGsが必要となる理由
SDGsが求められている理由は「地球上で進む気候の変化」「自然環境の悪化」「生活環境・労働環境の改善」の3つです。順に詳しくみていきましょう。
地球上で進む気候の変化
地球上では、オゾン層の破壊により年々温暖化が進行しています。過去5年間の平均気温は観測史上最高を記録しており、海面上昇率も年平均3ミリと、過去3,000年にまで遡っても類を見ないスピードで上昇しているのが現状です。 このような気候変動の悪影響は、今後5年間においてビジネスに1兆ドル(約120兆円)のコストを課すことになるとの予想が出ています。ビジネスの場である世界を存続するため、SDGsへの取り組みが必要です。
自然環境の悪化
2000年から2015年までの間、地球上における土壌の劣化が20%以上にまで進行しています。また、熱帯雨林についても1分間に約215,000平方メートルずつ失っているといわれています。具体的には、フットボール競技場30個分に相当する面積です。 人類によって進行した自然環境の悪化により、過去40年間で野生生物が約60%と半数以上も減少しているとのデータも出ています。SDGsでは、人類だけでなく地球全体の未来を考えなければなりません。
生活環境・労働環境の改善
日本国内ではあまり問題視されていないものの、劣悪な労働環境、生活環境、貧困などの問題を抱える国は少なくありません。事実、7億人を超える人々が1日あたり2米ドル(約253円)未満の極端な貧困生活を送っています。 貧困問題を解決できれば、世界中の人々の生活が豊かになり、児童労働問題や栄養失調などのさまざまな問題も同時にクリアされるでしょう。
企業がSDGsに注目する3つの理由
新型コロナウイルスの影響で、世界中の企業を取り巻く環境が一転しました。ここでは、今SDGsが企業に注目されている理由を3つ解説します。
環境負荷を軽減できる
自然環境の悪化によって気候変動や異常気象が発生し、未来の企業が経済的リスクを被るのではないかと危惧されているのが現状です。アメリカでは、将来的にみて大きく2つのリスクが生じるといわれています。 1つ目は、企業・投資家がサプライチェーンや作物、建築物などへの実害により被る損失。2つ目は、政府や消費者が再生可能エネルギーへ乗り換え、化石燃料に依存している企業の株価が急降下するリスクです。 国全体でSDGsに取り組み、環境破壊を食い止められれば、将来的な企業の存続を図ることができます。
社会的信頼性を高められる
SDGsへの取り組みは、企業における社会的信頼性が高められるのもメリットです。SDGsに積極的に取り組んでいるとアピールすれば、企業のイメージアップや優秀な人材から注目されるなどの効果も見込めます。 また、SDGsに対して相応しくない行動や表面上だけの努力を「SDGsウォッシュ」と呼びます。SDGsウォッシュに該当する場合、かえって顧客や他企業からの信用を落とす可能性があるため、企業との関連付けが必要です。 SDGsウォッシュを避けるため「SDG Compass」という企業行動指針が存在します。多国籍企業向けに策定されているものの、中小企業や組織などもSDG Compassの内容を自社に合わせて変更し、活用することが可能です。
DXを含めた取り組みに挑戦できる
SDGsには、大企業と中小・零細企業の格差を解消するという課題も含まれています。企業間格差の中でも、近年特に問題視されているのが「DX化のレベル」です。SDGsに取り組み、DX化についても挑戦しましょう。 日本SDGs協会では「業務フローDX化支援コンサルティング」を提供しているため、必要に応じて相談が可能です。
SDGsとDXの関連性
SDGsの取り組みとDX化には深いつながりがあります。ここでは、SDGsとDXの関連性についてみていきます。
DX推進でSDGsの達成につながる
DXの推進は、SDGsを達成するために存在する手段の一つです。日本政府や経団連でも、AIやIoTなどの導入により具現化する新たな未来社会の姿「Society 5.0」を提唱しています。 また、サプライチェーンにおける「Scope」の達成にも、DXを含む最新技術の導入が必要です。温室効果ガス排出量の算出は単純作業に該当するため、人の手で行うよりもDXを利用する方が効率よく把握できます。
業務効率化でSDGsにつながる
企業で業務効率化のために実施した取り組みがSDGsへとつながる場合もあります。書類をデジタル化するだけでも、紙媒体購入や郵送費などのコスト削減が可能です。 リモートワークを実施した場合、電気の使用量と廃棄物の量は約2分の1、OA用紙の使用量は約10分の1まで減少したとのデータも判明しています。
SDGsの目標9につながる
SDGsの目標9(インフラ構築・産業化促進・イノベーション推進)を達成するにあたって、スマートグリッドを始めとするDXの活用は必要不可欠です。目標9のターゲットには、以下のように記されています。 “9.4 2030年までに、資源利用効率の向上とクリーン技術及び環境に配慮した技術・産業プロセスの導入拡大を通じたインフラ改良や産業改善により、持続可能性を向上させる。全ての国々は各国の能力に応じた取組を行う。” デジタル活用により新たなビジネスを創り出すことが可能になれば、労働力となる範囲の拡大に期待できます。
SDGsの事例
ここでは、実際に大手企業が取り組んでいるSDGsの事例について解説します。
富士通
数多くのIT技術を提供している富士通株式会社では、関西学院大学と連携し、5G技術を応用した遠隔体験学習を実施しました。高精細映像により沖縄美ら海水族館の餌やりや水中の様子を生徒が体験し、命について触れる授業です。 SDGsにおける目標4「質の高い教育をみんなに」の観点から評価され、SDGs推進本部により「第4回ジャパンSDGsアワード特別賞(SDGsパートナーシップ賞)」を受賞しています。
パナソニック
家電業界において名高いパナソニックは、SDGsに対して大小さまざまな規模の取り組みを行っています。神奈川県藤沢市に創設された「サスティナブル・スマートタウン」は、SDGs達成のために企画された大規模な取り組みの一つです。 目標11「住み続けられるまちづくり」や目標17「パートナーシップで目標を達成」の実現に向け、パナソニックの強みであるエネルギー・セキュリティ・モビリティ・ウェルネス・コミュニティという5つのスマートビジネスを活用しています。
アサヒビール
アサヒビールで行われている取り組みは、産業廃棄物の無害化・リサイクルの拡大、CO2排出量の削減など気候変動抑止が目的です。取り組みの一例として、新規施設における廃棄物発電の導入が挙げられます。 廃棄物発電とは、産業廃棄物の焼却による熱エネルギーを利用した火力発電です。単純に燃やすだけよりも、発電量相当のCO2削減効果が期待できます。 また、既存施設については電力会社の見直しを始め、近い将来にはCO2フリー電気やエコカーへの切り替えなどを宣言しています。
まとめ
SDGsはすべての国・企業が優先的に取り組まなければならない重要な課題です。地球を守るための取り組みは、企業の社会的信頼につながるため、過酷なビジネス環境で生き残るための戦略にもなります。ビジネスにおけるさまざまな問題が同時に解消可能となるため、自社にできることから始めていきましょう。
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