確定申告の医療費控除とは。セルフメディケーション税制との違いを解説
公開日:2023/2/8
確定申告を行う際に、医療費控除の申請を行う事によって還付金を受け取ることが可能です。しかし、医療費控除の申請に関しては、 一年間の医療費が10万円を超えなければ活用することができません。そのため、セルフメディケーション税制を活用して還付を受けたいというケースもあるのでしょう。
本記事では、確定申告の医療費控除の仕組みや限度額、セルフメディケーション税制との違い、実際の年収と医療費からの還付金額について解説していきます。
目次
確定申告の医療費控除とは
確定申告における医療費控除とは、1年間で支払った医療費が10万円を超えた場合に発生する控除を意味します。そのため、10万円を超えなければ医療費控除の申請は不要といえます。
また、整骨院や美容整形の費用は医療控除には含まれません。ただし、確定申告の際には親族や配偶者のために支払った金額も含まれます。
限度額は200万円
医療費控除の限度額は200万円です。ただし、課税所得が200万円以下であれば、課税所得の5%の金額が差し引かれます。
計算式は次のようになります。
・(1年間に支払った医療費―保険金などで支払われた金額)―10万円か総所得の5%のうち少ない金額=医療費控除額
また、医療費控除によってどのくらいの金額が返ってくるのかを計算する場合は、さらに給与控除の金額から所得控除の金額を引き、課税所得と所得税率を明確にする必要があります。
その後、課税所得の税率(所得税、住民税)に医療費控除の金額をかけると、医療費控除による還付金の金額が把握できます。
対象となる代表的な費用
医療費控除の対象となる医療費には、次のような項目が含まれます。
・病院での診察から入院費
・処方箋を元にして購入した医薬品の費用
・医療器具の購入に使用した費用
・保険適応外も含む歯の治療費
・介護保険対象の介護費用
医療費として不妊治療や入院費、治療と関連する検査であれば医療費控除の対象とすることが可能です。
セルフメディケーション税制とは併用できない
セルフメディケーション税制は、ドラッグストアで購入できる一般医薬品と要指導医薬品(OTC医薬品)を購入した場合に12,000円以上の費用が発生していた場合、その金額分の控除を受けられるというものです。セルフメディケーション税制の場合は、健康の保持増進及び疾病の予防への取組みとして、定期健診やがん検診などを受ける必要があります。
セルフメディケーション税制を適用できる条件をまとめると次のようになります。
・年間で12,000円以上OTC対象となる医薬品を購入している
・定期健診をはじめとした健康の保持増進及び疾病の予防への取組みを行っている(全額自己負担はNG)
・所得税、住民税の滞納がない
また、セルフメディケーション税制と医療費控除は併用することができず、限度額は88,000円と決まっています。そのため、1年間のOTC医薬品と医療費については、把握できる仕組みをつくっておくことも大切です。
健康保険を使用する場合は、医療費通知などでハガキが送付されてくることが多く、サービスとして医療費情報をインターネット上で参照できるケースもあるため、健康保険証の発行元に問い合わせを行ってもよいでしょう。
医療費控除の流れ
医療費控除は次のような流れで適用されます。
1.対象となる医療行為を受け、医療費通知は領収書なので合計額を把握する
2.医療費控除額を計算し、医療費控除の明細書を作成し、確定申告と共に税務署に報告する(医療通知書があれば明細書は不要)
3.確定申告後、1カ月から1カ月半で還付金が振り込まれる
医療費控除の明細書は国税庁からダウンロードすることが可能です。領収書の提出は必要ないものの、最低でも5年間は保存義務があるため、保管しておきましょう。
確定申告の医療費控除に必要な書類
ここからは、確定申告の医療費控除に必要な書類について解説していきます。 年間の医療費の合計が分かればいいだけではなく、書類に記載して提出する必要がある点は覚えておきましょう。
医療通知書
加入している健康保険の組合や協会から送られてくる医療通知書は、確定申告の際に医療費控除の証明として使用することが可能です。受診した年月日、病院名、金額などが細かく書かれており、領収書がなくても内容を把握することができます。
ただし、次の条件を満たさなければ、医療通知書を確定申告の書類には使用することができません。
・氏名の記載がある
・治療を受けた年月日が記載されてある
・診療や薬を貰い受けた医療機関や薬局の名前が記載してある
・支払った医療費の金額が記載してある
・被保険の名前が明確である
とくに金額に関しては、通知書であっても記載していないケースもあるため、場合によっては領収書の準備も必要です。
明細書
明細書は、医療通知書と同様の内容を記載する書類です。国税庁のホームページからダウンロード可能です。明細書を金融市確定申告書と合わせて提出することで、還付が可能となります。
明細書を作成する場合、確定申告では領収書の添付は必要ありません。しかし、保存義務があるため、通知書と合わせて領収書を貰い、保存する習慣を作っておくことが大事です。
確定申告書
確定申告書は以前AとBに分かれていましたが、2023年から統合され、Bのみを提出する様式に変化しました。記載項目によって、給与所得や事業所得などのあらゆる所得額、医療費も含めた控除の金額、税金などを把握することができます。
確定申告書の内容を証明するために、明細書や医療通知書を添付しなければならないといえます。
医療費控除の計算例
ここからは医療費控除の計算例について解説していきます。年収と医療費によってどのような変化があるのかみていきましょう。
年収700万、医療費50万円
1年間の医療費が50万円であれば、医療費控除の対象となるのは40万円です。
そして、40万円の医療費控除の対象額に対して、13万2,000円が医療費控除による還付金となります。
・内訳
年収700万円であれば所得税率は23%。
そのため、医療費控除40万円に対して23%をかけると9万2,000円。
住民税は10%であるため、40万円に10%をかけると4万円。
合計して13万2,000円となります。
年収500万、医療費20万円
1年間の医療費が20万円であれば、医療費控除の対象となるのは10万円です。
そして、10万円の医療費控除の対象額に対して、3万円が医療費控除による還付金となります。
・内訳
年収500万円であれば所得税率は20%。
そのため、医療費控除10万円に対して20%をかけると2万円。
住民税は10%であるため、10万円に10%をかけると1万円。
合計して3万円となります。
年収300万、医療費15万円
1年間の医療費が15万円であれば、医療費控除の対象となるのは5万円です。
そして、5万円の医療費控除の対象額に対して、1万円が医療費控除による還付金となります。
・内訳
年収300万円であれば所得税率は10%。
そのため、医療費控除5万円に対して10%をかけると5,000円。
住民税は10%であるため、5万円に10%をかけると5,000円。
合計して1万円となります。
まとめ
年間10万円以上の医療費がかかっていると判断できる場合は、確定申告の医療控除を活用しましょう。
保険適用外の治療であっても合算することが可能であるため、適用対象となる人々は多いと想定されます。
また、市販の医薬品を購入して控除額とするセルフメディケーション税制は限度額が8万8,000円となっています。医療費控除とセルフメディケーション税制は併用することができないため、一年間の医療費を計算した上で当てはまる控除を確定申告を行いましょう。
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