基礎控除とは?控除額や申請方法計算事例についてわかりやすく解説!

基礎控除とは?控除額や申請方法計算事例についてわかりやすく解説!

公開日:2023/3/8

年末調整や確定申告時に出てくる言葉の中に「基礎控除」があります。

「この基礎控除は何ですか?」と従業員に問われ、頭を悩ませる担当者の方もいるでしょう。2019年以前は全ての人が「基礎控除」の対象でしたが、2020年以降は改正されているため、注意が必要です。

本記事では基礎控除について、控除額や申請方法、計算事例などを解説します。

基礎控除は所得控除の1つ

基礎控除とは所得控除の1つです。

所得とは、手取り総額(収入)から経費を差し引いたものが所得です。なお、会社員の場合は個別に経費を計算することはありません。そのため、経費の代わりに給与から「給与所得控除」を差し引いて所得を計算しています。
・総収入-経費(会社員の場合は「給与所得控除」)=所得

税金の計算をする場合、上記の「所得」からさまざまな「所得控除」を差し引いたものが「課税所得」となります。

課税所得を元にして、納税金額を計算します。
・所得-所得控除=課税所得

上記の式の「所得控除」の中の1つが基礎控除です。基礎控除について、さらに詳しく解説します。

源泉徴収について詳しく知りたい方は、こちらの記事をどうぞ。
源泉徴収の仕組みから源泉徴収票との関係性までを解説

基礎控除の歴史

基礎控除は1947年に「納税者本人や配偶者・扶養親族の生活維持のため最低限の収入を守る」という趣旨の元、開始された制度です。当初は全納税者に一律に同じ金額が適用されていました。

しかし、2020年の所得税からは改正されており、現在では一律の適用とはなっていません。

所得金額が2500万円超なら発生しない

現在の基礎控除額は次のとおりです。(2023年2月現在)

納税者の合計所得金額 基礎控除額
2400万円以下 48万円
2,400万円超2,450万円以下 32万円
2,450万円超2,500万円以下 16万円
2,500万円超 0円

所得合計が2400万円以下の場合基礎控除額は1人48万円です。改正(2019年)以前の基礎控除額は38万円でしたので、10万円引き上げられています。

一方、2500万円を超えると基礎控除額は0円となります。基礎控除については、以前は全員一律で同額でしたが、2020年以降は適用されない人がいる点に留意しましょう。

基礎控除以外の人的所得控除

基礎控除以外の人的所得控除には次のものがあります。

・配偶者・配偶者特別控除
・扶養控除
・障害者控除
・ひとり親控除
・寡婦控除
・勤労学生控除

それぞれについて、詳しくみていきましょう。

配偶者控除・配偶者特別控除

配偶者が一定以下の所得である場合に次の所得控除が設けられています。

・配偶者控除
・配偶者特別控除

この2つの控除は併用できません。また、納税者本人の所得合計額が1,000万円を超えている場合、この控除はうけることができない点を把握しておきましょう。

配偶者控除

所得税控除については、婚姻届を受理された人に限られます。内縁関係の場合、配偶者控除の対象とはなりません。

配偶者控除の条件は次のとおりです。
・納税者と同一生計である(送金している場合、別居でも適用される)
・年間の合計所得金額が48万円以下であること
・青色申告者の事業専従者として、給与の支払いを受けていない
・白色申告書の事業専従者ではない

合計所得金額48万円の収入額について解説します。例えば給与収入のみの場合は次のとおりです。
・(合計所得金額)48万円+(給与所得控除)55万円=(給与収入)103万円

つまり、給与収入が「103万円以下」の場合、配偶者控除の対象となります。

なお、配偶者の年齢が70歳以上(その年の12月31日現在)の場合、「老人控除対象配偶者」となります。それぞれの控除額は次のとおりです。

納税者本人の合計所得額 控除額
70歳未満の控除対象配偶者 老人控除対象配偶者(70歳以上)
900万円以下 38万円 48万円
900万円超950万円以下 26万円 32万円
950万円超1000万円以下 13万円 16万円
1000万円超 0円 0円

納税者本人の合計所得額により、控除額は異なります。

配偶者特別控除

合計所得金額が48万円を超える場合でも合計所得が133万円以下であれば、「配偶者特別控除」が受けられます。なお給与収入だけの場合、配偶者特別控除が受けられる給与収入額の上限は201万円です。

配偶者特別控除の控除額は下記のとおりです。

配偶者の合計所得額 納税者本人の合計所得額
900万円以下 900万円超950万円以下 950万円超1000万円以下
48万円超
95万円以下
38万円 26万円 13万円
95万円超
100万円以下
36万円 24万円 12万円
100万円超
105万円以下
31万円 21万円 11万円
105万円超
110万円以下
26万円 18万円 9万円
110万円超
115万円以下
21万円 14万円 7万円

配偶者の合計所得金額及び納税者の合計所得金額などにより異なります。

扶養控除

条件を満たす「扶養家族」に対し、扶養控除が受けられます。その条件は次の6つです。

・配偶者以外の親族(6親等内の血族・3親等内の姻族)
・16歳以上
・同一生計である
・合計所得金額が48万円以下
・青色申告者の事業専従者として給与収入を得ていない
・白色申告者の事業専従者でない

扶養控除額は年齢や同居の有無などにより異なり、次のとおりです。

区分 控除額 区分の説明(12月31日現在の年齢)
一般の扶養親族 38万円 16歳以上19歳未満または23歳以上70歳未満
特定扶養親族 63万円 19歳以上22歳未満
老人扶養親族(同居老親等) 58万円 70歳以上の直系尊属(父母・祖父母等)で同居している
老人扶養親族(同居老親等以外) 48万円 70歳以上の直系尊属(父母・祖父母等)で同居していない

別居している親族を扶養していることを証明するために、「送金関係書類」の添付が必要になります。

扶養控除申告書について詳しく知りたい方は、こちらの記事をどうぞ。
扶養控除申告書はなぜ必要?配偶者控除の違いも違いも解説

障害者控除

障害者控除は、同一生計の配偶者や扶養親族が対象者となる場合に適用されます。扶養控除の適用のない16歳未満の扶養家族であっても、配偶者控除の適用は可能です。

金額は次のとおりです。

区分 控除額
障害者 27万円
特別障害者 40万円
同居特別障害者 75万円

障害が特に重い場合が「特別障害者」に該当します。

特別障害者のうち、納税者本人・その配偶者・納税者と同一生計のその他の親族のいずれかと道教している方が「同居特別障害者」です。

ひとり親控除

ひとり親控除とは、ひとりで子どもを育てている親に対する所得控除です。納税者本人の合計所得金額が500万円以下の場合に適用されます。

控除額は35万円です。

総所得金額等が48万円以下の同一生計の子が子がいる場合に控除対象となります。その年の12月31日で婚姻関係にないことが条件です。

未婚の親・離婚した人どちらもひとり親控除の対象です。また、控除対象者に性別の区別はありません。父親・母親どちらであっても控除対象となります。

事実婚の場合はひとり親控除の対象外となる点を把握しておきましょう。

寡婦控除

夫と死別または離婚した妻が使用できる所得控除です。なお、先ほど紹介した「ひとり親控除」と重複しての控除は受けられません。条件が重複する場合は、「ひとり親控除」が優先されます。納税者本人の合計所得金額が500万円以下の場合に適用されます。

控除額は27万円です。

控除対象者の性別は女性に限定されています。

基本的には扶養親族がいることが条件となります。扶養親族の要件は次のとおりです。
・配偶者以外の親族・都道府県知事から養育を委託された児童・市町村から看護を委託された老人
・納税者と同一生計
・年間合計所得金額が48万円以下
・青色申告者の事業専従者として給与収入を得ていない
・白色申告者の事業専従者でない

なお、夫と死別した後再婚していない人、夫の生死が不明な人に対しては扶養親族の要件が設けられていません。

勤労学生控除

一定の条件を満たした学生が利用できるのが勤労学生控除です。勤労学生控除の条件は次のとおりです。

・給与所得などの勤労による所得がある
・1年間の合計所得金額が75万円以下
・勤労以外の所得が10万円以下
・高校・大学・高等専門学校・職業訓練校など特定の学校の生徒である

給与所得だけの場合、年間合計所得金額は130万円以下でなければなりません。勤労以外の所得とは、株や不動産投資による収入や、自営業を行って稼いだ所得を指します。

基礎控除の申請方法

基礎控除は、確定申告または年末調整で申請します。それぞれについて見ていきましょう。(2023年2月23日現在)

所得税について詳しく知りたい方は、こちらの記事をどうぞ。
所得税とは?種類や計算方法、納付期限について解説!

確定申告

確定申告では第一表の「所得から差し引かれる金額」のなかに、「基礎控除欄」があります。そこに、該当の金額を記入しましょう。

確定申告の医療費控除について詳しく知りたい方は、こちらの記事をどうぞ。
確定申告の医療費控除とは。セルフメディケーション税制との違いを解説

年末調整

年末申請として配布される「給与所得者の基礎控除申告書 兼 給与所得者の配偶者控除等申告書 兼 所得⾦額調整控除申告書」に記入します。

年間の所得の概算を算出し、それに見合った場所に従業員にチェックを付けてもらいましょう。

なお、所得の合計が2,400万円以下であれば、基礎控除額は一律48万円です。2,400万円以上の場合に基礎控除額に変更が生じます。

年末調整の対象者は給与等の金額が2,000万円以下の人です。そのため、年末調整対象者の基礎控除額は一律48万円と考えて差し支えありません。

基礎控除の計算事例

基礎控除の計算事例について解説します。個人事業主・給与所得者それぞれの例について見ていきましょう。

個人事業主

個人事業主で、事業による収入が1年間に300万円、経費が100万円の場合、事業所得は次のとおりです。
・(収入)300万円-(経費)100万円=(事業所得)200万円

この事業所得から基礎控除を差し引いて課税所得を計算します。このとき、基礎控除以外にも所得控除がある場合は、全て差し引かなければなりません。(※今回は、所得控除が基礎控除のみの場合で計算しています。)

事業所得は200万円なので、2400万円以下なので基礎控除額は48万円です。

・(事業所得)200万円-(所得控除)48万円=(課税所得)152万円

課税所得は152万円となり、ここに所得税率をかけて所得税を計算します。

給与所得者

給与のみを取得している給与所得者の事例を計算します。

1年間の年収が300万円の場合、給与所得は次のとおりです。
・(収入)300万円-(給与所得控除)98万円=(給与所得)202万円

※給与所得控除額=300万円×30%+8万円=98万円

この給与所得から基礎控除を差し引いて課税所得を計算します。このとき、基礎控除以外にも所得控除がある場合は、全て差し引かなければなりません。※今回は、所得控除が基礎控除のみの場合で計算しています。)

給与所得は202万円で、2400万円以下なので基礎控除額は48万円です。

・(事業所得)202万円-(所得控除)48万円=(課税所得)154万円

なお、給与所得は給与等の収入金額によって異なり、次のとおりです。

給与等の収入額 給与所得控除額
162万5千円まで 55万円
162万5千1円~180万円まで 収入金額×40%+10万円
180万1円~360万円まで 収入金額×30%+8万円
360万1円~660万円 収入金額×20%+44万円
660万1円~850万円 収入金額×10%+110万円
850万1円以上 195万円(上限)

実際の課税所得を計算する時は、基礎控除だけでなく全ての所得控除を差し引きます。

まとめ

基礎控除とは所得控除の1つです。所得額が2400万円以下の場合、48万円が基礎控除額となります。また、2500万円を超えると、基礎控除額はありません。

年末調整の対象となるのは、給与の年収が2,000万円以下の人です。そのため、会社で年末調整を行う担当者の方は、年末調整対象者の基礎控除額は一律48万円となることを把握しておきましょう。

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