減価償却とは?計算方法や範囲、注意点などについてわかりやすく解説!
公開日:2023/3/8
建物や設備、車両などの固定資産は取得した年に一括で全額経費計上せず、何年もかけて少しずつ資産価値を減少させていきます。これが減価償却です。
「減価償却は難しい」「計算方法がわからない」と、頭を悩ませる担当者の方もいらっしゃるでしょう。
本記事では、減価償却の計算方法や範囲、注意点などについて解説しますので、参考にしてください。
目次
減価償却とは
建物・車両・構築物・機械設備などの固定資産を購入した時に、一度で経費計上せず、何年にもわたり少しずつ資産価値を減少させていくことを「減価償却」といいます。
減価償却の対象となる固定資産が「減価償却資産」です。
減価償却には耐用年数が定められています。また、償却方法には定額法と定率法があります。
それぞれの違いについて詳しく解説します。
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耐用年数はある程度の決まりがある
耐用年数とは、その固定資産が「どれくらい使えるのか」という期間を指します。
減価償却に用いるのは「法定耐用年数」です。資産の種類・利用用途などにより規定されています。例えば次のとおりです。
・自動車:6年
・主に金属性の事務机・いす・キャビネット:15年
・金属製以外の事務机・いす・キャビネット:8年
・パソコン(サーバー用以外):4年
・時計:10年
定額法と定率法がある
減価償却方法には定額法と定率法があります。どちらを利用する場合も、法定耐用年数が過ぎても資産がまだ残っている間は、1円だけ残さなければなりません。この1円を備忘価額と呼びます。
建物や無形固定資産など、一定のものは定額法を使わなければなりません。また、個人事業主も原則として定額法と定められており、変更を希望する場合税務署への届け出が必要です。
それ以外は、1つずつ定額法・定率法を選択できます。メリット・デメリットを見極めて自社に適した方を採用しましょう。
それぞれについて詳しく見ていきます。
定額法
定額法は、毎年一定金額を償却する計算方法です。
計算法は次のとおりです。
・減価償却費 = 取得価額×定額法の償却率
例えば1月1日に300万円の自動車を購入し、耐用年数が6年であれば、1年あたりの減価償却費は50万1000円になります。(耐用年数6年の定額法償却率:0.167)
・300万×0.167=50万1千円
毎年の償却費がわかりやすい点はメリットです。ただし、定率法と比較した場合購入した年に経費計上できる金額は少なくなります。
定率法
定率法は、一年目の償却額が最も大きくなりその後はゆるやかに減少していきます。
・減価償却費 = 未償却の残高(初年度のみ取得価額)×定率法の償却率
減価償却費が償却保証額を下回ると計算方法が変わります。それぞれの算出方法は次のとおりです。
・償却保証額=取得価額×保証率
・減価償却費=未償却残高×改定償却率
償却額が償却保証額を下回った場合、その年以降の償却額は毎年同額になります。
定率法のメリットは、購入した年に定額法と比較した場合多くの金額を経費計上できる点です。計算方法がややこしい点はデメリットですが、会計ソフトなどで自動計算する場合は、それほど気にする必要はないでしょう。
減価償却の必要性
減価償却は、「費用収益対応の原則」に即するために必要な制度です。
費用収益対応の原則とは、当期の利益に見合う当期の費用のみを計上し、それ以外の費用を資産として計上することを指します。
例えば、営業車を購入した場合、1年だけで乗り潰すことはまずありません。一般的には、毎年その営業車を利用して、会社は利益をあげていきます。
このように、複数年にわたって利用する資産の費用は、複数年にわたって経費計上することで、適正な期間損益を算出できます。
複数年にわたり費用配分するために、減価償却は必要です。
減価償却費と似た用語との違い
減価償却費と似た用語として、一括償却資産や少額減価償却資産があります。それぞれについて見ていきましょう。
10万円未満、20万円未満などの金額に消費税が含まれるかどうかの判断は、決算書で消費税を「税抜表示」しているか「税込表示」しているかで異なるため注意が必要です。
税抜で表示している場合は、消費税抜きの金額で判断します。一方、税込経理をしている場合は、消費税込みの金額で判断しなければなりません。
少額減価償却資産
取得価額10万円未満、または使用可能期間が1年未満の資産を少額減価償却資産と言います。消耗品費などの勘定科目を使用し、一括で経費計上が可能です。資産計上にあたって特別な条件はありません。
一括償却資産
一括償却資産とは、取得価額が20万円未満の資産を指します。一括償却資産は資産の種類や用途にかかわらず、3年間で均等に償却できます。
ただし、次に紹介する少額減価償却資産の特例が可能な中小企業等の場合は、こちらを利用する必要はありません。
少額減価償却資産の特例
少額減価償却資産の特例は中小企業等が対象です。特定の条件に合致する中小企業等であれば、取得価額30万円未満の減価償却資産を全額損金として処理できます。
特定の条件は次のとおりです。
・青色申告法人
・資本金・出資金の額が1億円以下
・常時使用する従業員数が500人以下
・連結法人でない
上記の条件を全て満たしていても、大規模法人の子会社などは対象外となる点を把握しておきましょう。なお、この特例額には事業年度中に購入した少額減価償却資産は300万円までという上限があります。
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減価償却の対象
減価償却の対象となる資産には次のものがあります。
・有形固定資産:建物・工場・設備・車両・構築物など
・無形固定資産:ソフトウェア・特許権・商標権など
・生物:家畜・果樹など
建物や車両といった有形固定資産だけでなく、権利や生物なども減価償却の対象となる点を把握しておきましょう。
減価償却できない範囲
固定資産の中には、減価償却できないものがあります。減価償却できない固定資産を「非減価償却資産」と言います。
時間が経過しても、価値が減少しないものが非減価償却資産です。非減価償却資産の主な例は次のとおりです。
・土地
・借地権・地役権・地上権など土地に関する権利
・建設中の資産(建設仮勘定)
・1点100万円以上の美術品・古文書・工芸品・出土品など
なお、1点100万円以上の美術品等でも時間が経過すれば価値が下がると判断されるものは、減価償却資産の対象となる点を把握しておきましょう。
減価償却の仕訳方法
減価償却の仕訳方法は、2種類あります。
・直接法
・間接法
メリット・デメリットを知って自社に合ったものを利用しましょう。
直接法
直接法では、固定資産から減価償却費を差し引きます。直接法で車両を50万円減価償却費として処理する場合の仕訳方法は下記のとおりです。
借方 | 貸方 | ||
---|---|---|---|
減価償却費 | 500,000 | 車両 | 500,000 |
貸借対照表を見ると一目で残りの資産額が分かる点がメリットです。一方、取得価格は貸借対照表では確認できなくなる点はデメリットといえるでしょう。
間接法
間接法では、「減価償却累計額」という科目を用います。間接法で車両を50万円減価償却費として処理する場合の仕訳方法は下記のとおりです。
借方 | 貸方 | ||
---|---|---|---|
減価償却費 | 500,000 | 減価償却累計額 | 500,000 |
貸借対照表を見ると一目で取得価額が分かる点がメリットです。一方、現在の資産額は貸借対照表では確認できなくなる点はデメリットといえるでしょう。
総勘定元帳と仕訳帳との違いについて詳しく知りたい方は、あわせてこちらの記事をどうぞ。
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減価償却を行う際の注意点
減価償却を行う際に注意しなければならない点があります。主なものを見ていきましょう。
年の途中で資産を購入使い始めた場合
取得年は、使用開始した月から月割で資産を計上できます。
例えば、1〜12月が会計年度の企業が4月に300万円の車を購入し、5月から使い始めた場合を見ていきましょう。その場合、5〜12月までの8か月分の経費を計上できます。
6年間の定額法で処理する場合、初年度の計算方法は次のとおりです。
・300万×0.167×(8/12)=33万4千円
この年に計上できるのは33万千円です。
購入した月(この場合4月)から使い始めたのであれば、次のように計算します。
・300万×0.167×(9/12)=37万5750円
購入した月ではなく使い始めた月からの計算になる点に注意が必要です。
耐用年数には規定がある
耐用年数は法律により定められています。ただし、対応表に全ての固定資産が計上されているわけではありません。
表に記載がなく、耐用年数の決め方に迷った場合は顧問税理士や最寄りの税務署に相談してみましょう。
償却中の資産を廃棄・売却した場合
減価償却途中の資産を手放すことがあります。その時の会計処理について頭を悩ませることもあるでしょう。ここでは、廃棄・売却・除却した場合の会計処理について解説します。
廃棄
廃棄とは減価償却資産を処分することを指します。処分するにあたって費用が掛かった場合、「固定資産除却損」として計上しましょう。
除却
除却とは減価償却資産を今後一切使わない場合は、実際に廃棄しなくとも帳簿上除却処理が可能です。資産価値がなくとも、帳簿上に資産を残しておくと税金が発生します。今後一切使わない固定資産は、帳簿から除去することを検討しましょう。
売却
売却とは、減価償却資産を売り払った場合の会計処理です。帳簿上の減価償却累計額を上回る金額で売れた場合「固定資産売却益」が発生します。一方、下回る金額で売れた場合は「固定資産売却損」として差額を処理します。
過去に投資した資産の価値を切り下げて会計処理を行う減損損失について詳しく知りたい方は、あわせてこちらの記事をどうぞ。
減損損失とは何か?概要から考え方まで徹底解説
まとめ
減価償却とは、固定資産の価値を何年もかけて少しずつ償却していくことを指します。
計算方法には、毎年同じ金額を引いていく定額法と、初年度に多額の金額を差し引ける定率法があります。建物や無形固定資産など一部のものは原則として定額法で計算します。それ以外のものは個別に計算方法を設定できるため、自社に合ったものを使うとよいでしょう。
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