中小企業倒産防止共済制度とは?加入条件やメリット、経費にする方法など徹底解説!
公開日:2023/4/6
新型コロナウイルス感染症をはじめ、さまざまな影響による不景気のなかで、資金調達や節税に悩む企業は多いといえます。そして、安定的な経営に役立つ制度の1つとして、中小企業倒産防止共済制度があります。
本記事では、中小企業倒産防止共済制度の概要から具体的なメリット、活用上のポイントまで解説します。制度の内容を理解し、自社の資金繰りや節税対策に役立てていきましょう。
中小企業倒産防止共済制度とは
中小企業倒産防止共済制度(経営セーフティ共済)は、取引先事業者の倒産が原因となり、中小企業が連鎖倒産や経営困難に見舞われないように支援するための制度です。本制度を活用することで、中小企業経営者は安心してビジネスを展開できます。
加入条件がある
中小企業倒産防止共済制度への加入には条件があり、事業を1年以上継続している中小企業者であることが必要です。具体的な加入要件は、資本金の額・出資の総額、常時使用する従業員数のいずれかに該当する中小企業者が対象となります。また、本制度の中小企業者には会社だけでなく、個人事業主も含まれます。
なお、対象業種ごとの加入条件として、資本金や従業員数の範囲が具体的に定められているため注意が必要です。以下の表は、具体的な加入要件となります。
業種 | 資本金の額または出資の総額 | 常時使用する従業員数 |
---|---|---|
製造業、建設業、運輸業その他の業種 | 3億円以下 | 300人以下 |
卸売業 | 1億円以下 | 100人以下 |
サービス業 | 5,000万円以下 | 100人以下 |
小売業 | 5,000万円以下 | 50人以下 |
ゴム製品製造業(自動車または航空機用タイヤおよびチューブ製造業ならびに工業用ベルト製造業を除く。) | 3億円以下 | 900人以下 |
ソフトウェア業または情報処理サービス業 | 3億円以下 | 300人以下 |
旅館業 | 5,000万円以下 | 200人以下 |
資金調達の1つの手段になる
資金調達の選択肢が限られる中小企業にとって、中小企業倒産防止共済制度は貴重な資金調達手段となる場合があります。加入している企業は共済金の借り入れを行い、資金繰りの改善や事業拡大に活用できるためです。
中小企業倒産防止共済制度を有効活用すれば、資金調達における選択肢を広げられるため、経営者にとって有益な制度といえるでしょう。
40カ月以上の納付で100%払い戻し
中小企業倒産防止共済制度においては、40カ月以上の納付期間が経過していれば解約時の払い戻し率が100%となります。長期間にわたって制度に加入していた企業も、解約時に納付した掛金が全額戻ってくると保証されます。
さらに、同一会計期間内であっても、一度解約手当金を受け取った後であれば新たに契約して再加入することが可能です。企業の経営状況や資金調達ニーズに応じて、効果的に中小企業倒産防止共済制度を活用できます。
中小企業倒産防止共済制度のメリット
ここでは、中小企業倒産防止共済制度がもたらすメリットについて、2つのポイントに焦点を当てて解説します。資金調達における無利子・無担保の貸付や節税効果など、制度の活用で得られる利点を知っておきましょう。
無利子・無担保での貸付となる
取引先の会社が倒産した場合、「回収不能となった債権や前渡金の返還が求められた際には、中小企業倒産防止共済制度を利用して無利子・無担保での貸付を受ける」ことができます。ここでいわれる倒産の条件は以下の通りです。
・金融機関からの取引停止処分
・法的整理(破産、再生、更生、特別清算)
・私的整理
・災害による債権の支払不能
貸付が受けられる額は、基本的に回収不能となった売掛金債権と前渡金返還請求権の額、および倒産防止共済制度の掛金総額の10倍を比較し、いずれかの額が小さい方になります。制度の活用によって企業は資金繰りの悪化を防ぐと同時に、連鎖倒産リスクの軽減が可能です。
節税効果がある
中小企業倒産防止共済制度に加入した場合は、節税効果を享受することもできます。加入者が毎月共済に支払う掛金は、法人であれば損金に算入が認められ、個人事業主の場合でも必要経費として計上可能です。企業の税負担を軽減し、経営資源の有効活用につながります。
節税効果は中小企業にとって大きなメリットとなり、資金繰りや経営の安定化に寄与します。中小企業倒産防止共済制度を上手に活用することで、企業経営者は経営リスクを軽減し、事業の発展に向けた取り組みを進められるでしょう。
一時貸付も可能
中小企業倒産防止共済制度では取引先が倒産していない状況でも、緊急で事業資金が必要な場合に「一時貸付金」として利用できます。納付期間に応じて最大95%の金額の借り入れが可能です。納付期間ごとの借入限度額を以下の表にまとめました。
掛金納付月数 | 一時貸付金の借入限度額 |
---|---|
1カ月~11カ月 | 0円 |
12カ月~23カ月 | 掛金総額×75%×95% |
24カ月~29カ月 | 掛金総額×80%×95% |
30カ月~35カ月 | 掛金総額×85%×95% |
36カ月~39カ月 | 掛金総額×90%×95% |
40カ月以上 | 掛金総額×95%×95% |
掛金総額が800万円の場合 | 800万円×100%×95%(760万円) |
引用:中小機構「経営セーフティ共済」
2023年3月現在、一時貸付金の返済期間は1年で利率は年0.9%となっており、金融情勢に応じて利率が変動する場合があります。このような柔軟な対応が可能な中小企業倒産防止共済制度は、企業経営者にとって非常に有益な資金調達手段となります。
中小企業倒産防止共済制度のポイント
ここでは、中小企業倒産防止共済制度を活用する際の重要なポイントや注意点について解説します。制度を最大限に活用し、経営の安定化や資金調達を円滑に進めるためにも把握しましょう。
加入できないケースもある
加入条件を満たしていても、以下のような状況では、中小企業倒産防止共済制度への加入が認められないケースが存在します。
・企業が頻繁に住所や主要な事業内容を変更している
・経理内容が不透明で事業運営に関する情報が明確でない
過去に納付や返済の怠り、不正行為がみられる場合も加入が認められない可能性があるため、事前に確認し必要な対策を講じることが重要です。加入できないケースを理解し、適切な対応を行うことで、制度の加入申請をスムーズに進められます。
納付期間が40カ月未満では元本割れとなる
中小企業倒産防止共済制度において納付期間が40カ月未満の場合、払い戻し率が100%には達しない点に注意が必要です。特に、納付期間が12カ月未満の場合は、掛金が全額戻ってこないため掛け捨てとなってしまいます。
加入前に納付期間や解約時の払い戻し率を確認しておくことが重要です。
掛金の上限は800万円
中小企業倒産防止共済制度では、個人事業主・法人ともに積み立てができる掛金の上限が800万円と定められています。
ただし、掛金が上限の800万円に達した場合、倒産防止対策として維持しておく、任意解約を行い解約手当金を受け取るなどの出口戦略が必要です。共済制度の利用を検討する際は、掛金の上限や出口戦略についても考慮して、最適な選択を行いましょう。
申し込みの流れを把握しておく
中小企業倒産防止共済制度の申し込みには、次のような手続きが必要です。
1.口座確認を行った上で申込書を郵送
2.初回掛金の支払い方法を選択
3.申込締切日を確認
4.申込み控えおよび締結証書が送付される
加入翌月の初旬~中旬に、申請者へ申込書控が届きます。約2ヶ月後には中小機構から直接「契約締結証書」が加入者宛に郵送されるため、共済契約者番号を含む証書は大切に保管しましょう。
2年目以降に前納を継続希望する際は、毎年「前納申出書」を提出する必要があります。申込月の約2ヶ月前に中小企業基盤整備機構から前納終了の案内ハガキが届くため、前納希望月の前月20日までに中小機構HPから前納申出書を印刷し、提出しましょう。
経費にする方法を知っておく
倒産防止共済の掛金を経費にするためには、確定申告書に必要な書類を添付することが求められます。個人事業主の場合「中小企業倒産防止共済掛金の必要経費算入に関する明細書」が必要です。
法人の場合は「社会保険診療報酬に係る損金算入、農業生産法人の肉用牛の売却に係る所得又は連結所得の特別控除及び特定の基金に対する負担金等の損金算入に関する明細書(適用額明細書)」が求められます。
まとめ
中小企業倒産防止共済制度は無利子・無担保での貸付や節税効果があり、一時貸付も可能で有益な制度だといえるでしょう。制度の活用によって事業のリスクを軽減し、安心して経営に取り組むことが可能となります。
しかし、加入できないケースや掛金が元本割れとなるケースもあるため、申請の際には注意が必要です。また、必要書類を確定申告書と併せて提出すると、倒産防止共済の掛金を経費にすることができます。
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