雇用保険とは?個人・企業の加入条件や注意点を徹底解説!

雇用保険とは?個人・企業の加入条件や注意点を徹底解説!

公開日:2023/4/6

企業を運営するうえで、雇用保険への加入は義務の一つです。しかし、雇用保険の加入条件や加入対象となる従業員の範囲、法的な罰則を把握しきれていないケースもあるのではないでしょうか。

本記事では、雇用保険の適切な手続きを行うための概要や加入条件、注意点などを解説します。雇用保険に関する知識を得て、人事労務管理を円滑に進めましょう。

雇用保険とは

雇用保険とは、労働者が失業や労働力の低下による収入減に対処するための社会保険制度の一つです。ここでは、雇用保険の種類、雇用形態との関係性について解説します。

複数の種類がある

雇用保険には主に求職者給付・就職促進給付・教育訓練給付・雇用継続給付の4種類があり、総称して失業等給付と呼ばれています。種類ごとの内容は以下の通りです。

給付の種類 内容
説明 失業者に対して一定期間給付が行われるもの。生活費の補填が目的。
就職促進給付 再就職に向けた支援を行うために提供される。求職活動にかかる費用の補助が目的。
教育訓練給付 失業者が新たな職業に就く際にスキルを習得するための研修・訓練に参加する際に支給される給付。
雇用継続給付 一時的な業務停止や減少により収入が減少した労働者に対して支給される給付。雇用継続の支援が目的。

給付の種類を理解し適切な手続きを行うことで、労働者が困難な状況に対処しやすくなるといえるでしょう。

雇用形態に関係なく加入する必要がある

雇用形態に関係なく、企業は加入要件を満たす労働者に対して雇用保険への加入手続きが義務付けられています。正社員だけでなく、アルバイトやパートタイム労働者も対象となるため、正確な手続きを行いましょう。

従業員が雇用保険の給付を受ける権利を確保できるだけでなく、企業も法令遵守の面で問題がない状態を維持できます。

雇用保険の加入条件

ここでは、非課税となる年収についてみていきます。計画的に所得税・住民税が非課税となる年収で働くのは難しいものの、非課税になる条件を知っておきましょう。

1ヶ月以上働く見込みがある

雇用保険加入の条件として「1ヶ月以上働く見込みがある」という要件があるものの、31日間以上働く見込みが明確にない場合も対象となります。例外は、次のように雇用を31日間以上継続しないことが明確に決まっているケースです。

・雇用契約において「更新する場合がある」という規定がある
・31日未満で雇い止めすることが明示されていない

また、雇用契約に更新規定が存在しなくても、過去の実績として実際に31日以上働いていた場合も対象となります。

そのため、1ヶ月以上働く見込みがある労働者に対しては、企業は雇用保険への加入手続きを行う必要があります。適切な判断と手続きを行うことで法令遵守を確保し、従業員の福利厚生にも寄与できます。

20時間以上の労働時間が見込まれる(1週間)

所定労働時間が週20時間以上の労働者に対しては、雇用保険への加入手続きが必要です。なお、本要件では契約上の「所定労働時間」が週20時間以上であることを指しています。つまり、たとえ一時的に週20時間以上働いた経験があっても、契約における所定労働時間が週20時間未満であれば、この条件は満たされないと判断されます。

企業は労働者の雇用契約に記載されている所定労働時間を確認し、週20時間以上であるかどうかの検討が必要です。適切な加入要件を把握することで、必要な手続きを行えます。

学生ではない

基本的に学生は雇用保険に加入できません。ただし、例外として次の要件を満たせば雇用保険の加入対象者となります。

・卒業が見込まれる証明書を所持していて卒業前に就職
・卒業後も同じ事業主に勤務する予定であり、一般労働者と同じように働くことが認められる

また、通信教育や夜間、定時制の学生も雇用保険への加入対象者として認められます。学生であっても雇用契約を結び労働を行う場合、企業は適切な手続きを行い、雇用保険に加入させなければなりません。

個人・企業の加入条件

ここでは、雇用保険の加入条件を個人と企業の観点から分けて解説します。個人が対象となる条件や企業が遵守すべき手続きや注意点についてもみていきましょう。

企業

企業は、雇用保険の被保険者となる労働者に対して一定の手続きを行う義務があります。労働者が雇用保険の被保険者となる場合、企業は「資格取得届」を提出し、労働者が被保険者となった事実を公共職業安定所(ハローワーク)の長に確認してもらう必要があります。

提出期限は被保険者となった日の属する月の翌月10日までです。適切な手続きを行い労働者の権利を守ることで、企業は良好な労働環境を構築できます。

個人

個人においても雇用保険の適用に関して留意すべき点があります。従業員の場合、雇用者が適切に手続きを行うことで被保険者となるものの、個人事業主の場合は異なります。

個人事業主本人は「労働者」に該当しないため、雇用保険には加入できません。しかし、自営業を廃業する際に受給資格が残っている場合は、失業等給付を受けられます。

従業員と個人事業主では雇用保険の加入条件や受給資格が異なるため、自身の立場に応じた適切な手続きや権利を理解しておくことが重要です。労働者の福利厚生や自営業者の廃業時のサポートが確保され、安心して働けます。

雇用保険の加入条件に対する3つの注意点

ここでは、雇用保険の加入条件に対する3つの注意点を解説します。事業主が従業員に対して遵守すべき義務や未加入に対する罰則などを知っておきましょう。

従業員がいれば強制的に適用する必要がある

雇用保険は強制的な保険制度であり、事業主は雇用保険法の適用基準を満たす労働者を雇った場合、事業主および労働者の意向に関係なく加入が必須です。法律によっても規定されており、遵守が求められます。

従業員が適用基準を満たしている場合、事業主は適切な手続きを行い、労働者を雇用保険に加入させましょう。義務を怠れば法的な制裁が科される可能性があります。

社会保険の適用要件も確認する

企業は、社会保険に加入する際に強制適用事業所と任意適用事業所に分類されます。そのため、事業主は自社がどちらに該当するかを把握し、強制適用事業所の条件を確認しておく必要があります。

社会保険の強制適用事業所となる条件は2つあり、1つ目は法人や国・地方公共団体で、事業主のみを含めて常時1名以上の従業員を雇用している場合です。2つ目は、農林水産業やサービス業など一部の事業を除いた個人事業所で常時5名以上の従業員を雇用している企業が該当します。

強制適用事業所となる場合、事業主は社会保険への加入が義務付けられ、適切な手続きを行わなければなりません。一方、任意適用事業所の場合は任意加入となるものの、労働者の福利厚生や労働環境の向上を考慮して加入を検討することが望ましいといえます。

未加入の場合は罰則がある

適用要件を満たしながらも雇用保険への加入がなされていない場合、雇用保険法による罰則(最大6ヵ月の懲役または最大30万円の罰金)が課せられる可能性があります。さらに、雇用保険料の追徴金や延滞金の支払いが求められるケースも想定されます。

未加入が労働者に大きな影響を及ぼし、社会的信用の低下につながるリスクを考慮しつつ、適切な手続きを行うことが重要です。そのため、一つの方法として、弁護士に雇用保険手続きを委託することも検討しましょう。

まとめ

雇用保険は労働者を支援するための重要な制度であり、企業や個人事業主は適用要件を満たす場合には加入が義務付けられています。加入条件は1ヶ月以上働く見込みがある、週の所定労働時間が20時間以上、学生でないことの3つです。

要件をクリアした労働者は、雇用保険に加入する義務があります。適切な手続きや運用を怠れば罰則や社会的信用の低下につながるため、注意が必要となります。

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