自治体DXが注目される理由とは?自治体DX推進計画や事例も解説

自治体DXが注目される理由とは?自治体DX推進計画や事例も解説

公開日:2023/5/24

近年、少子高齢化が進み、労働力の不足が懸念されます。民間企業だけでなく、自治体においてもDXによる生産性向上や業務効率化が求められています。しかし、自治体のDX化といっても、どのように始めたらよいのかわからないと悩んでいる方もいるでしょう。

そこで今回は自治体DXが注目されている理由にふれつつ、実際に取り組まれている自治体DXの事例を詳しくみていきましょう。

自治体DXが注目される理由

自治体DXとは、自治体がデジタル技術を活用し、行政サービスを向上させ、住民の利便性の向上を図る取り組みを意味します。近年、少子高齢化などを理由に自治体DXが注目されつつあります。ここでは、自治体DXが注目される理由について詳しくみていきましょう。

少子高齢化が進んでいる

日本では少子高齢化が進んでいます。総務省の調査によると、2020年における15歳以上64歳以下の人口は7,509万人、65歳以上の人口は3,602万人、高齢化比率は28.6%でした。

2030年には15歳以上64歳以下の人口は6,875万人、65歳以上の人口は3,716万人になり、高齢化比率は31.2%になると予測されています。2030年以降も高齢化比率が上がることが予想されており、生産年齢人口の減少による労働力の不足や経済規模の縮小などの課題の深刻化が懸念されています。

高齢者の人口は増え続け、労働力である世代の人口が減少するため、自治体においては地域の生活に必要なインフラやゴミ収集などの活動の維持が困難になるでしょう。

生産性、効率化が必要となっている

総務省の調査によると、地方公務員の職員数は平成6年のピーク時の328万人と比較すると、令和4年は280万人で15%減少しています。

地方公務員の職員数が減少すると、1人当たりの業務量は増加します。そのため、業務負担を軽減するために、生産性の向上や効率化を図る必要があるでしょう。生産性の向上や効率化の手段としてDX化が注目されています。

DX化も含め、業務効率化はツールやシステムの導入だけでなく、目的に合わせて行うことが大切です。業務効率化の方法についての詳しい記事はこちらをどうぞ。

アナログ文化に頼り過ぎている

自治体では、デジタルに移行せず、申請の手続きやデータの管理を紙で行っているなどアナログ文化に頼り過ぎているケースが多くあります。例えば、申請や管理をアナログで行っている場合、書類の保管場所が必要になるでしょう。加えて、書類を保存する手間や紛失のリスクがあります。

紙の管理などのデジタル化を進めることで、書類管理の手間の削減や紛失のリスク回避につながります。また、書類からデータをパソコンに入力する手間もなくなり、スムーズに業務を進められるでしょう。

自治体DX推進計画の概要

自治体DX推進計画とは、総務省がまとめた自治体DXを進めるための計画です。2021年1月から2026年3月までに自治体が取り組むべき内容を提示しています。ここでは、自治体DX推進計画の概要と6つの重点取り組み事項についてみていきましょう。

自治体DX推進計画とは何か

自治体DX推進計画は、デジタル社会の実現に向けたデジタル・ガバメント実行計画を基に、自治体向けの参考資料として提示されました。

国が目指すデジタル社会を実現するためには、地域社会と密接に関係する自治体のDX化が不可欠であるという内容が記されています。自治体DX推進計画において、自治体に求められている取り組みは次のとおりです。

・行政サービスにおいてデジタル技術やデータを活用し、住民の利便性を向上させる
・デジタル技術やAIなどを活用し業務効率化を図る
・効率化によって削減できた人的資源を行政サービスの向上につなげる

6つの重点取り組み事項

総務省は自治体が取り組むべき重点事項として次の6つを挙げています。

重点事項 内容
自治体の情報システムの標準化・共通化 ・住民基本台帳や印鑑登録など、20の基幹系業務システムを国の策定する標準仕様に準拠したシステムに移行する
マイナンバーカードの普及促進 ・2020年度末までに、ほぼ全国民にマイナンバーカードが行き渡ることを目指す
・申請を促進するために、臨時交付窓口の開設や土日開庁など、交付体制を充実させる
行政手続きのオンライン化 ・2022年度末には、行政手続きについて、マイナンバーカードを利用し、マイナポータルからオンライン上での手続きを可能にする
AIやRPAの利用促進 ・国が提示するAI・RPAの導入ガイドブックを参考に、AIやRPAの導入を進める
・データ集積の機能向上や導入費用の負担軽減を意識し、複数の団体で共同利用を検討する
テレワークの推進 ・在宅勤務だけでなく、サテライトオフィス勤務やモバイルワークを含めたテレワーク対象業務の拡大に取り組む
セキュリティ対策の徹底 ・総務省とデジタル庁が提示するガバメントクラウドの活用に向けて、情報セキュリティ対策の徹底に取り組む

自治体DXにおける壁

DX化はデジタル技術による効率化を図れるため、業務負担の軽減や人的資源の確保につながります。さまざまなメリットがあり、職員や住民がより快適に生活を送れる仕組みを作れるでしょう。

しかし、アナログ文化に頼っていた自治体においては意識の変化が求められます。加えて、デジタル技術を適切に活用できるデジタル人材の確保も欠かせません。自治体DXを進めるには、いくつか壁があります。ここでは、自治体DXにおける壁について詳しくみていきましょう。

意識の変化が必要

自治体DXにおいて、職員の意識の変化が求められます。1990年代以降、パソコンの導入により、インターネットの普及やソフトの活用が始まり、さまざまな業務がデジタル化されるようになりました。そのため、デジタル化によるDXが進んでいるかのように捉えている職員も少なくありません。

しかし、デジタル化とDX化は目的が大きく異なります。デジタル化はデジタル技術の導入が目的です。一方、DX化はデジタル技術によって自治体の住民がより快適に過ごせるような仕組みを作ることが目的です。そのため、DX化はデジタル技術の導入に留まりません。

職員一人ひとりのDXに対する意識が変わらなければ、DX化は進まないでしょう。

デジタル人材の確保

DX化においてデジタル技術の導入は不可欠であるものの、技術を導入・活用できるデジタル人材の確保が困難な状況です。DXではアナログ作業をデジタルへ移行するだけでなく、住民へのメリットを考慮した上でデザイン設計を行う必要があります。

デジタル人材はさまざまな企業から求められているため、確保は難しいでしょう。そのため、外部からの補填をはじめ、デジタル人材の育成も検討する必要があります。デジタル人材の確保が困難な場合、民間企業と協力しつつ人材育成を行うことも視野に入れておきましょう。

権限の付与が適切ではない

一般企業では、DX化の権限は組織全体をまとめる人物に付与されるケースがほとんどです。一方、自治体では次のような課題があります。

・DX化の権限を付与する人物や権限を付与する人物の選出方法などについては明確なルールがない
・権限の付与が難しく、目的に合わせて業務や意識を改革していくリーダー的存在がいない

適切な人物に権限を付与しなければ、DX化を進めることはできないでしょう。

自治体DXの事例

ここからは、実際に自治体におけるDX化はどのように進めたらよいのかわからないという声に応えるため、愛媛県・北海道・東京都における自治体DXの事例をみていきましょう。

愛媛県

愛媛県では、県が中心となり、管内市町村とともにDXを推進する体制の整備を行っています。令和3年度には愛媛県・市町DX推進会議を設置しました。

愛媛県・市町DX推進会議では、県内自治体の現状把握や意見交換などを行っています。加えて、県・市町のDX担当と現場職員を集めた研修会の開催や取り組み事例の共有を行うことで、横連携の促進を図ります。

令和4年度における主な取り組みは、次の2つです。

取り組み 内容
高度デジタル人材シェアリング事業 ・自治体DXを推進できる人材を確保し、県と市町でシェアする
デジタルデバイド対策事業 ・地域市業者と連携し、支援を求めている住民が気軽にワンストップで相談できる場や継続的な学びの機会を提供する

令和4年度は国の支援策である地方創生推進交付金を活用し、DX推進に取り組んでいます。

北海道

北海道では全職員を対象にデジタル人材の育成計画を策定しました。令和4~7年度を計画期間とし、デジタル人材の育成を推進しています。

具体的な取り組みとして、デジタル人材を講師とした研修の実施やデジタル関連の国家試験などの資格取得に向けた情報発信を積極的に実施しています。また、内部の職員だけでなく、民間企業や研究機関などの外部から高度な知識を身につけた人材を確保することも視野に入れ、自治体DXを推進している点が特徴です。

東京都

東京都では、東京デジタルアカデミーを新設し、全職種向けにデジタル研修を実施しています。デジタル研修ではデジタルリテラシー向上やリスキリングによるデジタル人材の養成に注力しています。

都職員だけでなく、区市町村職員の育成事業や共同調査なども実施しており、都全体でDX推進に向けた研修を行っている点が特徴です。

DXはSaaS・ICTツール導入からスタートしよう

DX化において、いきなり全ての業務をデジタル化してしまうと、業務形態の変化に対応できない可能性も否定できません。そのため、DX化はSaaS・ICTツール導入といったスモールスタートから検討するとよいでしょう。

SaaSとは、サービスやアプリケーションをインターネット上で利用できるサービスです。在宅勤務など働く場所を選ばずに利用できる点が特徴です。ICTツールとは手動で行っていた業務を自動化し、業務効率化を図れるツールを指します。

たとえば、勤怠管理ツールや業務管理ツールなどリモートワークに役に立つものが挙げられます。また、部分的に導入する場合は、1つのPC単位から導入し、どんな過程を経てどうなるのかを周りを巻き込んで理解を得ていくコミュニケーションも意識しましょう。

ICTツールに対してもっと詳しく知りたい方はこちらからどうぞ。

まとめ

少子高齢化により、労働力となる人材不足が懸念されています。民間企業だけでなく、地方自治体においてもDX化による生産力の向上や業務効率化を図り、1人ひとりの業務負担を減らさなければなりません。

しかし、現状ではアナログ文化に頼り過ぎており、デジタル人材も不足しているため、デジタル化が困難な自治体も多いでしょう。いきなり全ての業務をデジタル化した場合、職員が対応できない可能性もあります。そのため、SaaS・ICTツールなどの導入といったスモールスタートを推奨します。

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