厚生年金の加入条件とは?保険料の支払額と受給額の計算例も解説

厚生年金の加入条件とは?保険料の支払額と受給額の計算例も解説

公開日:2023/5/25

厚生年金は加入義務のある法人が加入しなかった場合、懲役や罰金などを科せられる可能性があります。そもそも、加入条件がわからないというケースもあるのではないでしょうか。実際に、多くの企業では加入義務があります。

そこで、今回は厚生年金の加入条件について解説します。また、保険料の支払額と受給額の計算例や厚生年金のポイントについてもみていきましょう。

厚生年金には加入条件がある

厚生年金には加入条件があります。加入義務のある法人は加入しなければなりません。また、加入義務のない法人も条件を満たした場合に限り、加入できます。

ここからは、加入条件について詳しくみていきましょう。

加入義務のある法人がある

日本年金機構によると、厚生年金への加入義務のある法人は次のとおりです。

・常時従業員を使用する法人事業所
・常時5人以上の従業員が働く事務所・工場・商店などの個人事業所

法人事業所においては、従業員を雇用せず経営者のみの場合でも、厚生年金に加入する義務があります。加入義務のある法人が未加入の場合、次のような大きなペナルティが科せられるため注意が必要です。

・強制加入、過去2年分の未払保険料の納付
・6ヵ月以下の懲役または50万円以下の罰金

悪質な場合、懲役または罰金に処されるケースもあります。社会的信用を失い、取引に悪影響を与えるでしょう。

一方、加入義務のない業種や事業所もあります。

・弁護士などの法務業
・農業、漁業などの農林水産業
・宗教業を営む個人事業所

上記のケースでは5人以上の従業員を雇用していても、加入義務が適用される事業所としてみなされません。

任意加入できる事務所

加入義務のない事務所でも、任意加入できるケースがあります。任意加入できる条件は、従業員のうち半数以上が厚生年金加入に同意した場合です。

任意加入の場合、同意した従業員のみではなく、事業所単位で加入する必要があります。そのため、同意していない従業員も加入しなければならない点を知っておきましょう。

任意加入の申請は事務所の所在地にある年金事務所の窓口または郵送で行います。加えて、日本年金機構のホームページから電子申請も受け付けています。

フリーランスは厚生年金に加入できない

フリーランスは厚生年金には加入できません。会社員からフリーランスに転向した場合、厚生年金を脱退し、国民年金に加入する必要があります。

基本的には、退職と同時に勤務先の企業が脱退の処理を行います。ただし、国民年金への加入は自分で行う必要があるため注意しましょう。

厚生年金の保険料計算のポイント

ここでは、保険料の支払・受給額の算出方法をみていきます。なお、保険料は給与や条件によって大きく異なるため、一概にはいえません。あくまで参考例として確認しておきましょう。

支払の計算例

以下は支払の計算例です。保険料率は2023年5月時点で18.3%です。

保険料額 計算方法
月々の保険料額 標準報酬月額×保険料率
ボーナスの保険料額 標準賞与額×保険料率

上記の計算方法で算出した保険料額の半分の額を会社と従業員がそれぞれ支払います。従業員と会社が保険料額の半額ずつ支払うことになります。

標準報酬月額とは、残業代や扶養手当などを含めた税引前の額面の給与総額です。各種保険料を控除した手取り額とは異なるケースがほとんどです。

基本的に4月から6月の給与を基に算出し、毎年9月以降の1年間適用されます。標準報酬月額については全国健康保険協会の保険料額表で確認しましょう。

保険料の支払額の具体例をみていきましょう。標準報酬月額が34万円の場合、保険料額は次のようになります。

・34万円×18.3%÷2=31,110円

従業員と会社がそれぞれ31,110円の保険料を支払います。基本的に、会社が従業員の保険料を給与天引きで預かり、会社負担分を併せた保険料全額を納付する仕組みです。

ボーナスの保険料を算出する際には標準賞与額を用います。標準賞与額は税引前のボーナスから1,000円未満の端数を切り捨てた額です。標準賞与額はボーナスや期末手当、年末手当、繁忙手当など年3回以下の回数で支給されるものが対象になります。

年4回以上支給される場合、標準賞与額の算出には含まれません。月々の給与としてみなされ、標準報酬月額の対象になります。

受給額の計算例

65歳以上の受給対象者が受け取る場合、次のように計算します。

・報酬比例年金額+経過的加算+加給年金額

それぞれの用語の概要は次のとおりです。

項目 概要
報酬比例年金額 加入時期に応じて、次のように計算が異なる
【加入時期が2003年3月以前の場合】
平均標準報酬月額×7.5/1000×2003年3月以前の加入月数

【加入時期が2003年4月以降の場合】
平均標準報酬月額×5.769/1000×2003年4月以降の加入月数
経過的加算 ・昭和61年4月以降の年金制度改正に伴い、差額を補う項目
・60歳以降も加入を継続すると加算額として受給額が増額する
・20歳以前または60歳以降に加入していた定額分の厚生年金を加算する
・上限は480ヵ月
加給年金額 ・65歳未満の配偶者および18歳到達年度の末日までの対象者に加算される
・年金における扶養手当のようなもの

厚生労働省の「令和3年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」によると、令和3年度末における厚生年金の受給額の平均は14,6万円でした。

また、年金は繰り上げ受給と繰り下げ受給で受け取れるパターンもあります。

・繰り上げ受給:65歳以前に受給
・繰り下げ受給:66歳以降に受給

項目 可能年齢 1ヵ月あたりの増減額率
繰り上げ受給 60~64歳 0.4%減額
繰り下げ受給 66~75歳 0.7%増額

たとえば、60歳の受給対象者が受け取るケースの計算例は次のとおりです。受給額は13.8万円から約10万円まで下がります。

項目 受給額
65歳から受給する場合の受給額 国民年金5.6万円+厚生年金8.2万円=13.8万円
60歳で受け取る場合 13.8万円×24%=33,120円
差額 13.8万円-33,120円=104,880円

次に、75歳で受け取る繰り下げ受給のケースです。75歳で受給する場合、本来の受給額に対し約11万円増額になり、受給額の総額は25万円になります。

項目 受給額
65歳から受給する場合の受給額 国民年金5.6万円+厚生年金8.2万円=13.8万円
75歳で受け取る場合 13.8万円×84%=115,9200円
合計 13.8万円+115,9200円=253,920円

厚生年金のポイント

厚生年金の種類は3つです。それぞれの年金を受給する場合、自分で手続きを行う必要があります。

ここでは、厚生年金を把握するポイントをみていきましょう。

区分 特徴
老齢厚生年金 ・65歳以上の受給資格を得た対象者が受給できる
・加入期間がある人が対象
障害厚生年金 ・加入期間に病気やケガなどで障害が生じた場合に受給可能
・身体障害だけでなく、がんや糖尿病に疾患した場合も受給対象になる
・医師の診療を受け、障害等級1級・2級・3級のいずれかに当てはまる状態に限る
遺族厚生年金 ・被保険者が死亡した場合、遺族に受給される
・生計が同一であり、収入要件を満たしている場合に限る

それぞれ受給対象や条件が異なるため把握しておきましょう。

厚生年金をもらうための手続きが必要

受給するためには手続きが必要です。自動では支給されないため、受給の手続きを事前に確認しておきましょう。

65歳の誕生日の3ヵ月前に日本年金機構から年金請求書が届きます。年金請求書に氏名や受取口座などを記入の上、受給の手続きを進めましょう。

紛失した場合、日本年金機構のホームページからダウンロードできます。また、最寄りの年金事務所や年金相談センターで再度受け取ることも可能です。手続きを行わずに5年間経過した場合、手続きをしていない期間の年金は受給できないため注意しましょう。

保険料は定期的に変化する

保険料は標準報酬月額と標準賞与額を基に計算するため、定期的に変化します。変化のタイミングは9月です。

残業が増えたり、昇給によって基本給が上がったり、といった理由で4~6月の給与が増えると、昨年よりも保険料も上がります。保険料は一定ではない点を知っておきましょう。

まとめ

加入義務のある法人が厚生年金に加入しなかった場合、懲役または罰金が科せられ、社会的信用を失うため注意が必要です。支払額や受給額は給与や賞与、加入年数、受給年齢などによって大きく異なります。

支払額は4~6月までの給与を基に計算するため、残業の増加などによって定期的に変化する点を知っておきましょう。受給額は報酬比例年金額・経過的加算・加給年金額から求めることが可能です。

支払額や受給額は、さまざまな用語を理解しなければ計算できません。年金に関する専門知識を身につける必要があるでしょう。

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