社会保険の概要|加入条件や手続きの方法も解説
公開日:2023/5/25
社会保険とは国民に起こり得るリスクに対し、サポートするための制度です。しかし、加入条件は事業所や雇用形態などによって大きく異なるため、十分に把握できていないというケースもあるのではないでしょうか。
そこで今回は社会保険の概要や加入条件、手続きの方法についてみていきましょう。
社会保険の概要
社会保険とは、国民の生活上で想定される多様なリスクに備えるための制度です。国や自治体が運営している制度で、疾病や老齢、障害などのリスクに直面した場合、金銭的なサポートを受けられます。国民の生活を支える社会保障制度の1つに社会保険が含まれます。
ここでは、社会保険の概要について詳しくみていきましょう。
広義の社会保険
広義の社会保険は、次の5つの制度を指します。
項目 | 被保険者 | 概要 |
---|---|---|
医療保険 | ・全ての人 | ・医療費の負担軽減 |
年金保険 | ・20~59歳の全ての人 | ・老後の生活費のサポート ・配偶者や親を亡くした遺族のサポート |
介護保険 | ・40歳以上の全ての人 | ・介護サービスの利用料金などのサポート |
雇用保険 | ・会社員 ・個人事業の従業員など |
・金銭面における再就職の支援 |
労災保険 | ・業務中にケガや病気をした場合の治療費などのサポート |
公的制度であるため、民間の生命保険や損害保険とは加入条件や補償内容などが大きく異なります。社会保険は一定の要件を満たしている人であれば、加入可能です。
社会保険は国民の安定した生活を保障する制度です。社会保険では補償内容に不安があるという場合、民間の生命保険や損害保険で補いましょう。
狭義の社会保険
狭義の社会保険は、次の3つを指します。
・医療保険(健康保険)
・年金保険
・介護保険
介護保険は40歳以上が負担する保険です。加えて、健康保険料とともに介護保険料が徴収されるため、健康保険に介護保険を含めると解釈するケースもあります。狭義の社会保険は健康保険と年金保険の2つの保険を指すケースも多いといえるでしょう。
国民年金は全国民加入義務がある
日本は国民が年金制度に加入しなければならない国民皆年金の制度を導入しています。導入目的は、安定的な保険集団の構成と国民の老後所得への対応です。
基本的に20歳以上60歳未満の全ての国民は公的年金制度の対象になっており、全国民に加入義務があります。ただし、会社員などで厚生年金の保険料を支払っている場合、国民年金への支払いは不要です。
2023年現在の社会保険の加入条件とは
事業所の種類によって加入条件は大きく異なります。また、パートやアルバイトでも、条件を満たした場合、加入可能です。ここからは、2023年現在の加入条件についてみていきましょう。
強制、任意、除外がある
事業所は次の3つに区分され、それぞれ加入条件や対象が大きく異なります。
・強制適用
・任意適用
・除外
それぞれの加入要件と対象となる事業所は次のとおりです。
項目 | 加入要件 | 対象 |
---|---|---|
強制適用 | 加入必須 | ・農林漁業やサービス業などではない ・従業員が5人以上 ・法人、地方自治体、国で常時従業員を雇用している |
任意適用 | 加入に対し、従業員のうち半数以上の同意を得た場合 | ・農林漁業やサービス業など ・常時従業員を雇用している |
適用除外 | 保険への加入を不要とする | ・労働時間や日数が少ない ・事業所の所在地が定まらない ・国民健康保険組合の事業所 ・健康保険または国民健康保険に加入している ・75歳以上 ・65歳以上75歳未満で一定の障害を持っている ・船員保険の被保険者 |
パート、アルバイトも加入できる
パート・アルバイトのうち次の条件に当てはまる場合、加入対象者となります。
・常時雇用されている
・週の所定労働時間がフルタイムの4分の3以上
・1ヵ月の所定労働日数がフルタイムの4分の3以上
また、次の要件に該当する場合、雇用形態に関わらず加入が必須となるため注意が必要です。
・週の所定労働時間が20時間以上
・継続的に2ヵ月以上の雇用契約を結ぶ予定がある
・月額賃金が8.8万円以上になる(年額約106万円以上)
・定時制や夜学などを除く学生以外
・従業員が101人以上の事務所に勤務している
2024年10月には法改正により、事業所の規模が101人以上から51人以上に変更になります。2023年の現状では社会保険に未加入の従業員の加入手続きを進めなければならないパターンもあるでしょう。トラブル防止のため事前に説明を行っておくことをおすすめします。
派遣社員も加入できる
派遣社員の場合、正社員・パート・アルバイトと同様の加入条件を満たすと、社会保険に加入できます。派遣社員の加入可否については、次の条件を満たすかを確認しましょう。
基本的にパートやアルバイトと加入条件は同じです。
・フルタイムと同じ労働時間か
・週の所定労働時間が正社員の4分の3以上であるか(週30時間以上)
・契約期間が2ヵ月以上あるか
社会保険の加入条件を満たしている場合の対処方法
ここでは、強制適用と任意適用の場合の対処方法についてみていきます。手続きの方法や提出書類を事前に確認しておきましょう。
強制適用の場合
強制適用の対象となった事業所は、加入条件を満たした日から5日以内に新規適用届を年金事務所に提出しなければなりません。新規適用届とともに、次の書類を添付し手続きを行います。
・法人事業所:法人登記簿謄本
・個人事業主:事業主の世帯全員分の住民票
任意適用の場合
任意適用の事業所が加入手続きを行うためには、次の4つの書類が必要です。
・任意適用申請書
・任意適用同意書
・事業主世帯全員分の住民票
・公租公課の領収書(1年分)
任意適用の場合、半数以上の従業員の同意を得る必要があります。同意を得た証明として、任意適用同意書を準備しなければなりません。
手続きは年金事務所やオンラインなどで行います。具体的な提出方法は次の3つです。
・電子申請
・郵送
・持参
企業が行わなければならない社会保険の手続き
本社と支社で適用事業所の区分が異なるケースもあります。そういった場合、条件を満たせば本社と支社の一括申請が可能です。また、社会保険に加入している従業員が転職する場合、会社側が手続きを行う必要があります。
ここでは、企業が行わなければならない手続きについてみていきましょう。
一括申請も可能
本社が支社の労務管理をまとめて行っている場合、本社と支社を1つの適用事業所として一括申請も可能です。本社と支社の社会保険の手続きを別々に行っていた場合、人事異動があれば社会保険の手続きや脱退などさまざまな手間が生じます。
1つの適用事業所として一括申請することで、異動における加入や喪失届などの手続きを行う手間がなくなり、業務効率化につながります。
転職の場合
転職の場合、従業員は社会保険の被保険者の資格を喪失することになります。従業員が転職する際には次の手続きを進めましょう。
・被保険者資格喪失届に必須事項を記入する
・協会けんぽの場合、健康保険被保険者証も返却する
また、各健康保険組合に加入している場合、資格喪失の別途手続きを行わなければならないため注意が必要です。
手続きミスで未加入は罰則がある
加入しなければならない従業員が手続きミスなどで未加入のままでいた場合、年金事務所の立入検査や指導が入る可能性があります。加えて、未加入が露見した場合、過去2年分の保険料を納付しなければなりません。
また、保険料を滞納し虚偽内容を報告する、などといった悪質な違反が発覚した場合、事業主に6ヵ月以下の懲役または50万円以下の罰金が科せられます。
加入条件の拡大に伴い、現状で未加入の従業員が加入対象になる可能性も否定できません。定期的に加入条件と従業員の労働状況を照らし合わせて確認しましょう。
まとめ
社会保険の加入条件は強制・任意・除外の区分によって異なります。また、正社員だけでなく、パートやアルバイト、派遣社員も加入条件を満たした場合、社会保険への加入が認められます。
社会保険に加入する場合、加入条件を満たした日から5日以内に手続きをしなければならないため注意が必要です。加えて、提出する書類も多くあるため、手続きのミスが生じる可能性も否定できません。
手続きのミスにより、未加入の状態が発覚した場合、懲役や罰金などのペナルティが科せられるケースもあります。今後も条件の変更により、加入しなければならない対象者も変化するでしょう。そのため、定期的に加入条件を把握し、従業員が社会保険の対象者かをチェックすることが大切です。
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