DXはビジネスに必要?活用方法や成功事例までを徹底解説
公開日:2022/06/28
DXを意識してはいるものの「自社に必要性を感じていない」「認識不足により取り組めない」などと考える企業は多いでしょう。企業においては、どの業界も直ちにDX推進に取り組む必要があります。今回はDXがビジネスに必要な理由、活用する方法やポイント、成功事例について解説していきます。
目次
DXのビジネスへの浸透状況
2018年に経済産業省より発表された「DXレポート」を機に、近年ではDXの言葉を日常的に耳にすることも多いのではないでしょうか。経済産業省は「2025年の崖」という警鐘を鳴らした後、翌年2019年7月に「DX推進指標」を策定し、日本企業のDX推進状況の調査を行いました。
各企業のDX推進状況における自己診断結果を収集し、2020年10月の時点で約95%の企業は全く取り組んでいない、もしくは散発的な実施に留まっていることが明確となっています。しかし、2020年に発生した新型コロナウイルスの影響により、ここ数年で各企業のデジタル化は急速に進みました。
これは、コロナ禍によって事業継続に対する危機意識が高まり、多くの日本企業がDXの必要性に迫られたためです。新型コロナウイルス感染拡大防止対策が求められ、現在もテレワークや新規システムを導入する企業は着実に増え続けています。
DXを意識している企業は多い
新型コロナウイルス感染拡大防止における出社制限の影響により、従来の対面会議や紙を用いた事務処理といった業務プロセスが停滞した企業は多くあります。そのため、非常事態により自社のDX化の遅れを実感し、多くの企業がDXを意識していると予測できます。
電通デジタルは、2021年9月29日から同年10月8日までの期間、従業員数500人以上の国内企業を対象に「日本における企業のデジタルトランスフォーメーション調査(2021年度)」を行いました。
その結果、DXに着手している企業は81%にも上っていることがわかっています。大企業では65%以上がDXに着手しており、中小企業でも3割近くが取り組み始めているものの、完了済みの企業は11%と低いのが現状です。
コロナ禍により日本でも急速にデジタル化が進んだものの、まだDXは一部の企業しか着手していないと捉えてよいでしょう。
既存事業の加速にもDXは重視されている
既存事業の成長を加速させるために、業務のデジタル化は必要不可欠です。そのためDXが重視されており、従来のビジネスモデルをデジタル化し、既存業務を変革する新規システムの構築が求められています。
DXレポート公表後も日本企業のDX推進は停滞気味となっていたため、2020年経済産業省より「DXレポート2」が新たに発表されました。
既存事業においてデジタル化を加速させる政策の検討が行われた「DXレポート2」では「既存産業を従来以上の競争力のあるデジタル産業として変革させるためには、DXをより一層加速させることが不可欠であるが、そのような新産業の創出には長期の時間を要する。」とあります。
そもそも日本ではIT人材が不足しているため、中小企業は最小単位からDXをスタートさせるしか術はありません。今後はDXで事業を加速させるための人材育成も、重要な課題となるでしょう。
業界によって認識に差がある
DXの認識は、業界により大きな差が生まれています。帝国データバンクによる「DX推進に関する企業の意識調査」では、DXを理解し取り組んでいる企業は15.7%しかなく、7社に1社の割合といった結果が出ています。
業界別に見ると、金融は25.2%、サービス業(情報サービス等を含む)が24.1%とある程度は理解されているものの、建設、農・林・水産はあまり認識できていない状態です。また、DXの意味を認識している企業では、オンライン会議システムの導入やペーパーレス化、テレワークやリモートシステムの導入など、積極的な実施も行われています。
しかし、認識していない企業は意識しつつも、DXの取り組みには至っていないのが現状です。企業にとってDXの意味を認識することは、DX推進を加速させるための重要なポイントといえます。
DXがビジネスに必要な理由
業界によっては「自社にDXは必要ない」と考える企業もあるのではないでしょうか。しかし、どのような企業においてもDX推進の対象から外れることはありません。ここでは、DXがビジネスに必要な理由について解説します。
生産性の向上
DXの実現は、業務効率化や生産性の向上につながるため重要です。デジタルツールを導入し活用することにより、既存業務の自動化や業務工数の削減ができます。
例えば、従来のパソコン業務を自動化できるRPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)を導入すると、作業効率は大幅にアップします。飲食店やホテル・旅館など、予約管理や顧客管理を一元化できるシステムを活用する宿泊施設も増えました。
デジタルツールが24時間365日休みなく稼働し予約の取りこぼしを防ぐため、集客率のアップが見込めます。既存の業務プロセスにおけるデジタル化は、迅速な処理やスタッフの負担を減らせるだけではありません。
DX推進はヒューマンエラーの抑制にもなるため、業務の効率化や品質向上といった成果が得られることも予測できます。
新事業の創出
DX化は企業の生産性をアップし、市場での競争力を高めるため新事業の創出につながります。DX推進において企業の生産性向上はもちろん、デジタル技術による新しいサービスや製品の開発により、人々の生活を豊かにするのが最終目標です。
デジタル技術が浸透するに従い、消費者の行動は「モノ」から「コト」へ、また「所有」から「共有」へと大きな変化を遂げています。それに伴い、買い物レシートで収益化できるアプリ、在宅勤務のバーチャルスタッフによって店舗運営を可能とする遠隔接客サービスなど、さまざまな新規事業が参入中です。
今後も消費者の行動は変化し続け、既存事業だけでは対応できなくなる事態が予測できます。そのため、新事業の創出にDXは必須といえるでしょう。
既存システムの刷新
DXは、日本企業における既存システムの刷新につながるため、将来的にはコスト削減も実現可能です。日本企業が抱えるレガシーシステムの維持には、多大なコストがかかります。 また、以下の3つの問題も起きてくるため、事態は深刻です。
- 技術面の老朽化
- システムの複雑化
- ブラックボックス化
既存システムに対応できる技術者は少なく、故障した場合には代替がきかなくなります。さらに、既存システムは内部構造が複雑化しているため、過去の履歴への追加や変更が困難です。そのため、属人化やブラックボックス化しやすい点も大きな問題となっています。
ブラックボックス化とは、トラブルが発生した際に原因がわからず、復旧までに多大な時間を要する状態です。万が一、2025年までに既存システムの刷新が行えなかった場合、経済産業省の発表どおり、最大12兆円もの経済損失は避けられない事実となるでしょう。
2025年の崖が迫っている今、企業は早急に既存システムを刷新するため、DXに取り組む必要があることは明確です。
DXをビジネスで活用する方法
ここでは、DXをビジネスで活用する方法を見ていきましょう。以下、ビジネスにおけるDXの3つの活用方法について解説します。
テレワーク制度の実施
DXを進めるにあたって業務効率化のため、テレワーク制度の実施を必要とする企業は少なくありません。働き方を選べるようになれば、優秀な人材獲得につながります。 テレワークの導入の際、以下の3つの課題に取り組むことが大切です。
- コミュニケーションの不足
- 従業員の勤怠管理
- セキュリティ問題
テレワークを導入するにあたり、社内のコミュニケーション不足を解消するため、ビジネスチャットツールやWeb会議システムなどのツールが必要となります。また、従業員の勤怠状況が把握できる勤怠管理ツールの導入も必須です。
デジタルツールの活用にはセキュリティ的な問題も発生するため、外部からの攻撃や不正アクセスへの対策も行う必要があります。
システム導入後は、ツールを適切に使いこなし業務効率向上を図るため、従業員への教育を行うことも重要です。さらに、導入したシステムツールの効果測定も、生産性向上のために必ず行いましょう。
バックオフィス業務の自動化
DX推進にバックオフィス業務の自動化は必要不可欠です。バックオフィス業務とは、総務や経理、一般事務といった社内業務全般を指します。日本では少子高齢化問題があるため、将来的には労働力不足による生産速度の低下が予測されています。
しかし、バックオフィス業務の自動化によりDXを実現すれば、少ない労働力でも業務を行うことが可能です。直接的な利益を生み出さないバックオフィス業務の効率化は、結果的に企業利益の貢献にもつながります。そのため、バックオフィス業務の業務効率化は重要といえるでしょう。
オンラインコミュニケーションツールの導入
DXの推進には、オンラインコミュニケーションツールの導入も必須です。テレワークにDXを活用しなければ、社内だけでなく取引先とのコミュニケーションにも悪影響を及ぼしかねません。
オンラインコミュニケーションツールは、チャットやWeb会議などが行えるITツールです。ビジネスチャットツールを導入すると、リアルタイムで連絡のやり取りが行えるため、気軽にコミュニケーションが取れます。文字でのやり取りはもちろん、通話やグループ会議を行うことも可能です。
Web会議ツールには、Zoomが多くの企業で活用されています。画面共有やホワイトボード、録画機能があるだけでなく、ブレイクアウトルームを作成しディスカッションも行えるため大変便利なツールです。対面式でコミュニケーションが取れるため、会議や面接、営業などのシーンでも利用できます。
DXのビジネス活用の成功事例
ここでは、DXをビジネスで活用した企業の成功事例を3つ紹介します。今後、DXに取り組む際の参考にしましょう。
BMW
ドイツの高級自動車メーカーとして知られるBMWは、DX化に伴い「BMW i
Visualiser」というAR技術を用いた(拡張現実)アプリを開発しました。さらに、鑑賞だけでなくライトやラジオもつけられるため、リアリティのある顧客体験が可能です。
アプリ内で車種や色、各種オプションを選択し、高精度なカスタマイズができます。ARを活用しているため、スマホの画面越しに実物大の車をさまざまな角度から鑑賞できるところも、注目すべきポイントです。
自宅付近の私道やガレージなど好きな場所で鑑賞できるため、顧客は実物を見に行く前に欲しい車のイメージが掴めます。顧客に実店舗で購入するまでの時間短縮効果を与えており、新たな販売マーケティングを実現しています。
DXへの取り組みにより新たな顧客層へのアプローチが可能となるため、収益の向上も期待できそうです。
メルカリ
フリマアプリとして有名なメルカリが実施しているDXの特徴は、フリーマーケット型の仕組みにあります。これまでCtoCビジネスは、ネットオークションサービスのヤフオクを中心として、多くのユーザーに利用されてきました。
しかし、オークション型は入札価格に上乗せされていく仕組みのため、心理的ハードルが大きい点がデメリットです。対してメルカリはフリーマーケット型の仕組みを採用し、インターネット上での売買によるハードルを下げることに成功しました。
スマホがあればどこでも出品できる、メルカリならではの手軽さが売りとなっています。AIによる不正管理や独自入金システムを活用し、顧客が安心・安全に取引を行える工夫が施されています。
スマホ決済サービス「メルペイ」も提供しており、メルカリでの売上を自動でチャージし利用できる点にも注目です。DXの活用により、現在メルカリは国内ダウンロード数8000万超、全世界では1億を突破しており、フリマアプリで堂々の1位を誇っています。
パナソニック
パナソニックは全社的なDXの加速により、ビジネスモデルや業務プロセスのあり方など、グループ事業の成長に直結する点の見直しを行いました。社員の働き方をはじめ、デジタル技術の導入によってビジネスモデルの変革を実現し、生産性と品質向上を高めることに成功しています。
パナソニックはDXプロジェクトをPX(パナソニック・トランスフォーメーション)とし、さらなる事業の先鋭化を目指した経営戦略として推進している点に注目です。「お客様サービスのDX」と「事業オペレーションのDX」といった2つの側面から、2021年より本格的に始動させています。
お客様サービスのDXとは、顧客への提供価値を継続的に高めることです。顧客や取引先、従業員にITによる本格的な価値を提供し、経営に直接貢献しています。事業オペレーションのDXでは、社内業務を徹底的に洗練させる取り組みが行われています。
パナソニックはデジタル技術により人々の暮らし、仕事に関わる一人ひとりの幸せへの実現に向けて、積極的に取り組むDX推進企業といえるでしょう。
企業がビジネスにDXを活用する際のポイント
ここでは、企業がビジネスにおいてDXを活用する際、どのような点に着目すべきかを解説します。それぞれのポイントを見ていきましょう。
どんな課題をどのレベルで解決したいのか決める
企業がDXを進めるにあたって、経営層によるコミットメントは必要不可欠です。自社にどのような課題があり、どういったレベルのものを解決したいのか、また何を目的とするのかを明確にする必要があります。
業界や状況により、DX推進における課題や目的はさまざまです。自社の課題や目的が不明瞭な状態でDX推進に取り組むと、不適切なシステムを構築するような失敗の原因となります。多大なコストをかけてデジタル技術を導入しても、成果に結びつかなければ意味を成しません。
そのため、AIのプロジェクトの性質やシステムツールをある程度理解した後、DXを実施しましょう。
経営層と現場の認識を合わせる
DX推進をスムーズに行うためには、経営層と現場で共有の認識を持ち、同じ目標を目指す必要があります。DXは経営層のみで推進するのは難しく、現場の従業員のみで進めることも困難です。
また、経営層と現場でDXの認識に違いがあってもスムーズに推進できなくなります。経営トップはDXプロジェクトを社内に向けて発信し、現場と共有して全社的な推進を実施することが重要です。
DXをすぐに実現するのは不可能なため、長期的な計画として考えるのもポイントとなります。自社のビジネスモデルをどのように変革しDXを実現させていくのか、経営層と現場とで意思の疎通を心がけ、経営トップを先頭に社内全体の意識改革を目指しましょう。
プロジェクトリーダーには裁量権を持たせる
DXを全社的に推進させるには、プロジェクトリーダーに裁量権を持たせることが重要です。DXを推進するにあたり、現場では既存業務の変化に対する不安や失業の危機を感じ、必ず抵抗勢力が現れます。
プロジェクトリーダーに権限がない状態では、既存の組織論に振り回される可能性が高いため、全社的なDX推進の障壁となります。正当な権限を持たせたプロジェクトリーダーの設置とDX推進の成果は比例しており、DXの実施をスムーズに進めるための大切なポイントです。
責任者を明確な状態にした上で力強いリーダーシップの下、長期的な視点でDXプロジェクトを推進していきましょう。
まとめ
日本のDX推進状況は世界的に見ると、未だ深刻な状況です。企業のビジネスにおける環境は、コロナ禍の影響により激変しています。現在、新型コロナウイルスは収束しつつあるものの、今後も不測の事態が発生する可能性は充分に考えられます。本記事のDXをビジネスで活用する方法やポイントを押さえ、成功事例を参考に長期視点で全社的なDX推進を実現させましょう。
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