インボイス制度で経費精算が変わる?経理に求められる5つの対応
公開日:2022/09/14
インボイス制度は2023年10月1日から導入される予定です。しかし、インボイス制度という言葉はよく耳にするものの、どのような対応をしなければならないのかわからないという経理担当者の方もいるのではないでしょうか。
本記事では、インボイス制度に必要となる対応について詳しく解説します。また、対応において大切なポイントにもふれていくため、事前準備を進めたいと考えている方はぜひ参考にしてみてください。
目次
インボイス制度に必要となる対応
インボイス制度とは、消費税における仕入税額控除の適用に適格請求書が必要となる制度です。適格請求書(インボイス)とは、税率ごとの適用税率や消費税額など所定の要件が記載された請求書をさします。発行には、適格請求書発行事業者への登録申請が必要です。
また、売手と買手の双方に適用される点を把握しておきましょう。売手と買手は、それぞれ次のような対応をしなければなりません。
・売手…買手に対し、適格請求書を発行する
・買手…仕入税額控除を受けるために、適格請求書を保存する
制度導入後に一定の経過措置期間が設けられているものの、取引に必要な請求書の記載内容や発行方法などのルールが大きく変化するため、相応の対応が必要になるでしょう。
インボイス制度のさらに詳しい記事はこちらをどうぞ。
区分記載請求書への項目追加
2019年10月1日の軽減税率の適用から2023年9月30日までは、区分記載請求書等保存方式となっています。2023年10月1日以降は適格請求書等保存方式(インボイス制度)となる予定です。
では、区分記載請求書と適格請求書にはどのような違いがあるのでしょうか。それぞれ記載しなければならない項目は、次のとおりです。
区分記載請求書 | 適格請求書 |
---|---|
・発行者の氏名または名称 ・取引年月日 ・取引内容 ・取引金額 ・交付を受ける者の氏名または名称 ・軽減税率の対象品目である旨 ・税率ごとに合計した対価の額 |
・発行者の氏名または名称 ・取引年月日 ・取引内容 ・取引金額 ・交付を受ける者の氏名または名称 ・軽減税率の対象品目である旨 ・税率ごとに合計した対価の額 ・税率ごとの消費税額及び適用税率 ・登録番号 |
適格請求書には「税率ごとの消費税額及び適用税率」と「登録番号」の項目を追加する必要があります。そのため、制度導入までに、請求書や帳簿などのフォーマットを追加項目に適したものに変更しておくとよいでしょう。
取引相手によって適格請求書の発行が必要
取引相手によって適格請求書の発行が必要となります。一般の消費者または免税事業者と取引を行う場合、適格請求書を発行する義務はありません。取引相手が課税事業者の場合、適格請求書を発行する必要があります。
次のような業種は一般の消費者と課税事業者のどちらも顧客になり得るため、請求書を発行する際には適格請求書が必要かを判断しなければなりません。
・小売業/飲食業
・タクシー業/運送業
・不動産貸付業/駐車場業
・カメラマンやライターなどのサービス業
経過措置を把握しておく
インボイス制度導入から2029年9月30日までの6年間は、経過措置期間が設けられています。適格請求書発行事業者以外と取引をしたケースでも、期間内であれば次のように一定割合の仕入税額控除が適用になります。
・2023年10月1日~2026年9月30日までは80%
・2026年10月1日~2029年9月30日までは50%
・カメラマンやライターなどのサービス業
インボイス対応で経理に求められる業務と影響
インボイス制度に対応するためには適格請求書に記載された項目の確認だけでなく、税率に合わせた経費精算が必要となるため、経理担当者の負担が大きくなるでしょう。
また、紙媒体での計算が煩雑になる可能性も懸念点となるでしょう。
記載事項の確認と請求書の判別
従来の区分記載請求書と比較すると、「税率ごとの消費税額及び適用税率」と「登録番号」の記載を追加しなければなりません。取引先から請求書を受領する際も追加項目が記載されているかを確認する必要があります。
また、課税事業者と免税事業者の請求書は記載項目が異なるため、さらに判別や管理の手間がかかるでしょう。
税率に合わせた経費精算
現行制度では請求書の品物ごとの経費精算と端数処理が可能です。しかし、インボイス制度では税率に合わせて、税込み金額を集計し、消費税を計算しなければなりません。端数処理も税率に合わせて1回ごとに計算する必要があります。
そのため、現状の経費精算の課題を早急にクリアし、対応する仕組みを構築しなければならないといえます。
経費精算の課題と解決方法に関する記事は、こちらをどうぞ。
紙での計算が煩雑になる可能性が高まる
取引先に免税事業者がいる場合、課税事業者と分けて計算しなければなりません。そのため、紙での計算が煩雑になる可能性が高まり、経理の負担が大きくなってしまいます。
経理の負担を軽減するために、インボイス制度に対応できる会計システムなどの導入も検討しましょう。紙での計算を減らし、経理業務の負担を軽減する方法として経費精算のキャッシュレス化があげられます。
インボイス対応に大切な5つのポイント
ここでは、インボイス対応に大切な5つのポイントをみていきましょう。導入直前に準備を始めた場合、適格請求書発行事業者の申請などは間に合わなくなるため、よく把握しておく必要があります。
事前準備をしっかりしておく
インボイス制度導入に先駆け、2021年10月から適格請求書発行事業者の登録申請が始まりました。適格請求書を発行するためには、適格請求書発行事業者になるための登録申請が必要になります。
2023年10月1日の導入にあわせて適格請求書を発行するためには、原則として2023年3月31日までに登録申請を行わなければなりません。
2023年3月31日以降に登録申請を行った場合、2023年10月1日から適格請求書を発行できないため注意が必要です。まだ登録を行っていない場合、早めの申請を心掛けましょう。
制度開始後のルールを作っておく
制度開始後、仕入税額控除の適用は、適格請求書に課税事業者が記載した税額に限ります。取引先に免税事業者がいる場合、課税事業者と分けて会計処理を行わなければなりません。加えて、請求書は分けて管理する必要があります。
請求書の管理は今まで以上に煩雑になるでしょう。制度開始後に運用しやすくなるように、請求書の会計処理や管理方法などのルールを作り、社内に周知させることが大切です。
簡易インボイスとの違いを把握しておく
不特定かつ多数の顧客と取引を行う課税業者は、適格請求書の代わりに簡易インボイスを発行可能です。簡易インボイスとは「レシート」のことで、適格請求書における一部の記載項目を省略して作成できます。
省略可能な記載項目は、次のとおりです。
・「税率ごとの消費税額」または「適用税率」のいずれか一方
・交付を受ける者の氏名または名称
適格請求書と簡易インボイスの両者を発行する可能性がある場合、それぞれに適したフォーマットを作成しておくとよいでしょう。
簡易インボイスを発行できる業種は、次のとおりです。
・小売業/飲食業
・タクシー業
・旅行業
・写真業
・駐車場業(不特定多数に対して営業している場合)
・上記に準ずるそのほかの不特定多数の者と取引を行う事業
経費精算などの紙で行う業務を減少させておく
導入に向けて、紙で行う業務を削減しましょう。取引先に課税事業者と免税事業者がいる場合、分けて計算しなければならないため、紙で経費精算を行うと経理担当者の負担が大きくなってしまいます。
負担軽減のために、経費精算などにおいて業務のデジタル化を図りましょう。
また、紙で行う業務を減らすと、印刷代や書類購入費、郵送費などのコストを削減できるため、SDGsの取り組みにもつながるでしょう。
SDGsに関する記事は、こちらからどうぞ。
対応できるシステムを導入しておく
インボイス制度に対応できるシステムの導入を検討しましょう。例えば、レジや受発注、請求書の管理システムがあげられます。
しかし、システムを導入するためには、導入費用だけでなく、現場で使用する社員の教育などの準備も必要です。システムを導入してもすぐに使いこなすのは、困難だといえます。そのため、直前ではなく、スケジュールに余裕を持って導入できるように準備を始めましょう。
まとめ
モバイルSuicaは、カードで存在していたSuicaをモバイルで扱えるようにしたアプリです。年会費が発生せず、iPhoneやAndroidでも使用できます。また、経費精算を行う場合、クレジットカードやプリベイトカードとの連携も可能であるため、ツールでの管理にも向いているといえるでしょう。
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