減損損失とは何か?概要から考え方まで徹底解説
公開日:2022/09/14
減損損失は、会計処理方法の1つです。しかし、具体的にどういったものなのかを把握できていないケースもあるのではないでしょうか。
そこで、今回は減損損失の概要、減損会計との違い、対象資産などについて詳しくみていきます。とくに、投資を行った資産に対して、客観的な判断を行いたい場合、参考にしてみてください。
目次
減損損失とは
減損損失とは、過去に投資した資産に対して、資産価値を切り下げて会計を行い、損益計算書に反映したものを意味します。会計を行うことは減損会計とよばれ、下落した価値は全て損失として扱われます。大企業では必ず計算しなければならないものの、中小企業においては計算する義務がありません。
また、利益からマイナスする会計処理では、減価償却もあるものの、次のような違いがあります。
・減価償却・・・一定期間に分けて利益からコストをマイナスする(定額、定率がある)
・即時償却・・・初年度にコストの全額を利益からマイナスする
減損損失の場合は、特別損失として計上されるため、減価償却とは会計上の項目も異なります。加えて、資産価値を減少させる処理であり、「あくまでも回収できる価値までに引き下げる」という目的がある点も知っておきましょう。
減損損失の対象となる資産
減損損失の対象となるのは次の3点です。
・有形固定資産(土地、設備、建物など)
・無形固定資産(借地権、商標権など)
・投資に関する資産(投資用不動産など)
投資有価証券やソフトウェアなどは、他の税法で処理が決まっているものもあります。そのため、判断が難しい場合は、専門家の意見などを取り入れつつ実施していかなければなりません。
減損損失のメリット
減損損失を行うメリットは、資産の価値そのものが減少するため、翌年の利益が増加する点です。一時的に、利益率や自己資本率が悪化する可能性もあるものの、長期的な視点で経営に対するマイナスの影響を緩やかにすることができます。
また、一定期間の投資に対する費用対効果を表すことができるため、想定ではなく、実状に合わせた事業計画を練りやすくなります。
減損損失のデメリット
どの程度の金額を減損損失をするのかによって、企業の経営が傾く可能性がある点はデメリットです。中小企業ではなく、大企業が行う会計処理ということを考えると金額がある程度大きくなると予想されます。
そのため、世間的な評価や株式の価値、金融機関からの評価などに悪影響を残す可能性があるといえます。減損損失は、投資が成功した際には行わない処理である点は知って おきましょう。
減損損失の流れと必要な理由
ここからは減損損失の流れと必要な理由についてみていきます。 減損損失の計算方法は、固定資産の簿価から回収可能価額を引くだけであるものの、判断が難しいため、参考にしてみましょう。
減損損失の流れ
減損損失は次のような順番で行っていきます。
1.資産のグルーピング
資産のグルーピングは、最小単位で考えるものの、相互で保管しあっている場合は、それもグループとして考える。最終的にグループごとに減損損失の影響を計測・測定していく。
2.兆候の把握・判定
減損損失は次のような兆候がある資産に対して行う。
また、必ず行うものではなく、行うかどうかは経営者の判断による。
・連続して2期以上マイナスが続いている(営業活動も含める)
・計画として設定した回収可能額を著しく下回る可能性があると想定できる
・投資時期から比較して、会社自体の経営環境が著しく悪化すると想定される
・投資を行った資産が市場において著しくか価値を下げている
事業の廃止や再編成、予定よりも早く資産を処分・売却するなどといった場合は減損損失を検討する。市場価格については少なくとも50%以上、下落した場合やそもそも価格を把握できない場合も検討する。
判定は減損損失を実行するかどうかを決める段階。減損損失を適用する資産が生み出す利益(割引前将来キャッシュフロー)と帳簿価格を対比する。この場合、現在だけではなく一定の期間に対する計算を行う。
3.測定
将来的なキャッシュフローの定義や範囲を決めた上で、継続的な使用によって利益がどれだけ生まれるのか、処分や売却によってどの程度のキャッシュフローが生まれるのかを踏まえて測定を行う。 回収可能価格は、売却価格・使用価値のどちらか高い方の金額を使用する。期間は20年を1つの範囲とすることが多い。
減損損失を行う理由
減損損失を行う理由は大きく分けて、次の2つになります。
・企業の現状をステークホルダーなどの関係者に知らせる
・企業の投資に対する資産効効率を向上させる
減損損失・会計を行う場合、以上が想定していた計画に沿っていないと想定できるため、 企業の経営を改めて考える機会の1つとなっているといえます。
会計処理について、さらに詳しい内容を知りたい方はこちらの記事へ。
減損損失のタイミング
減損損失を行うタイミングは、営業損失と景気の変化などの外的要因です。例えば、多額の資金を投入したとしても計画よりも損失が大きくなり、結果として利益につながっていないケースはよくあるといえます。
また、損失が計画通りであれば、全く問題ないものの、 市場の状況によって事業の売り上げが立たないことも想定されるでしょう。その場合は、事業の将来性を見直し、採算が取れないとなった場合に減損損失を行うタイミングだといえます。
減損損失の大切なポイント
ここでは減損損失を実施する際のポイントをみていきましょう。減損損失は、比較的緊急性の高い会計処理だといえます。そのため、財務諸表や企業の経営状況に対して、影響力が高く一時的に株価が下落する可能性もあります。
財務諸表へ影響がある点を把握しておく
貸借対照表では、減損損失によって固定資産の簿価が減少します。また、損失であるため、損益計算書の特別損失にも計上されるため、純利益の減少も発生するといえるでしょう。
キャッシュフロー計算書に関しては、計算を行った年でも影響はありません。しかし、来期以降のキャッシュフロー計算書の数値が悪化する可能性があります。
財務諸表に対して影響力が強いということは、減損損失によって短期的に株価が暴落するケースも少なくありません。そのため、ダメージをカバーできる大企業でしか実施されていないといえます。
経理部門の業務を把握し、ツールで効率化しておく
減損損失が影響を与える損益計算書は、経理部門が総力を挙げて作成する書類の1つです。とくに外部に向けて発信する書類であるため、ミスが許されず、仮に計算ミスがあった場合には企業の信頼を失う可能性が高いといえます。
そして、仮に大量の書類を処理する場合、経理部門のコスト削減や業務効率化は不可能となってしまいます。そのため、減損損失をスムーズに行うためにも、経理精算ツールやシステムの導入が大切になるでしょう。
減損損失を行う場合にも効率化が必要
減損損失は会計処理の1つとして扱われます。つまり、経理部門の業務です。上記でもふれたように、経理部門の業務は効率化が求められており、一部だけでなく、会社全体で対応していかなければなりません。
経理部門に関わる問題点は次の3つの項目が代表的です。
・業務過多を解消できていない
・適材適所になっていない
・人為的ミスが多い
実、業務効率化がうまくいけば経理部門に関わるほとんどの問題は解決できます。企業内の課題に目を向ける必要があるものの、優先順位をつけて一つずつ解決していけば、生産性の向上や適正な業務量の調整も可能です。そのため、マンパワーに頼るのではなく、ツールやシステムの活用を前提とした業務を検討してみましょう。
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まとめ
減損損失は、過去に投資した資産に対して、資産価値を切り下げて会計を行い、損益計算書に反映したものを意味するものです。企業にとっては、マイナス要素であることに加え、経営そのものに大きな影響を与えるケースもあるため、確実な判断と計算が必要となります。
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