交際費とはどんなものか。概要から範囲、基準まで解説
公開日:2022/09/14
企業の活動として、接待を行うケースは多いといえます。場合によっては、取引先との飲食だけでなく、旅行まで含めて接待が必要と感じている企業もあるのではないでしょうか。
しかし、どこまでが交際費として扱われるのかを知らないケースも想定されます。
そこで、今回は交際費の概要や範囲、各費用との違いなどについて詳しくみていきましょう。
目次
交際費とは
交際費とは、得意先や仕入先に対して、コミュニケーションの一環として接待などを行う際の費用をさすものです。経費として認められるものの1つです。
国税庁の定義では、『交際費等とは、交際費、接待費、機密費その他の費用で、法人が、その得意先、仕入先その他事業に関係のある者等に対する接待、供応、慰安、贈答その他これらに類する行為(以下「接待等」といいます。)のために支出するもの』となっています。
引用|国税庁|No.5265 交際費等の範囲と損金不算入額の計算から
また、交際費に該当しないものも具体的に言及されています。
1.福利厚生と考えられるもの
2.一人あたり5,000円未満の飲食費となるもの
3.宣伝や広告費と考えられるもの
4.寄付金と想定されるもの
5.会議費とされるもの
この中でも一人当たり5000円未満の飲食に関しては、交際費から除外するため、次の項目がわかる書類を用意しなければなりません。
・年月日や参加した得意先の名称
・人数
・飲食店の所在地
例えば、取引先の経営陣3名と自社社員3名で焼肉屋で食事を行い、費用が6万円だったとしましょう。この場合は、全額交際に該当します。
また、交際費とは別に、接待先に対して飲食のサービス料を支払うといった接待飲食費に該当する費用もある点は知っておきましょう。
損金算入に関しては、会計処理にも関わってきます。会計処理に関する詳しい内容はこちらから。
各費用との違い
交際費と似た費用は次のようになります。
・会議費―会議に関連した飲食、 会議のための部屋代
・福利厚生費―会社の従業員を対象とした旅行や冠婚葬祭に支給される金品
・宣伝広告費ー社名が入ったカレンダーや手紙、一般消費者に対して抽選で送る商品
・寄付金―金銭を無償で贈与する
・接待飲食費―自社の従業員が得意先を飲食店に接待して提供する飲食費
交際費とは明確に扱いが異なるものもあるため、それぞれの費用が何に該当するのか想定しつつ企業活動を行いましょう。
交際費の範囲
交際費の範囲は次のように明確に定められています。
・資本金が1億円以上である法人
交際費の50%。ただし資本金及び出資金が100億円を超える場合は損金にすることができない
・資本金が1億円以下である法人(5億円以上の法人の子会社ではないことも条件)
年間800万円か交際費の50%のどちらかを選択できる。年間で1,600万円を超えなければ、年間800万円を選択した方が損金の金額が高くなる。
交際費の範囲は明確に決められており、企業規模によって金額まで制限されているといえます。加えて、交際費を損金に算入できる制度は2014年4月からスタートしており、2022年の税制改正では2年延長されることが決定しました。
交際費損金不算入制度の概要
交際費損金不算入制度は、中小企業の営業手段の一つとして交際費を認めるためにできた制度です。法人の交際費に関しては、この制度があることによって損金算入が可能になるといえるでしょう。
特に、2020年の税制改正においては飲食店に対する需要喚起や経済活性化を狙って延長となったという経緯があります。また、資本金が100億円以上の企業に関しては、特例によって交際費が大きく変化しているわけではないため、制度から除外されています。
どのような費用が交際費に該当するのか把握し、他の経費の要件と照らし合わせて損金算入を行いましょう。
交際費を計算する際の3つのポイント
ここからは交際費を計算する際の大切なポイントについて解説していきます。 とくに、個人的な支払いと法人単位での支払いなのか、勘定科目として交際費と他の費用を混同していないかはよくチェックしておきましょう。
勘定科目をしっかり分けておく
勘定科目に関しては、前述した会議費などが該当するものの、実は事業主が個別の名称を付けられます。しかし、一般的に知られている名前や名目でなければ、事業者以外の法人や税理士が把握できなくなってしまいます。そのため、勘定科目はしっかりと分けておく必要があるといえるでしょう。
例えば、会議費などは一般的な名称でありどのような内容なのか名前から推測できます。
証明書類の準備をしておく
プライベートと企業活動による飲食なのかは明確に分けておく必要があります。電子帳簿保存法の改正によって、クレジットカード支払いの履歴によって証明が可能となったものの、念のために参加者や関係性、人数などは記録しておくとよいでしょう。
証明手段だけでなく、電子帳簿保存法への対応は必須事項だといえます。さらに詳しい内容はこちらの記事からどうぞ。
基準の確認を行っておく
交際費の基準金額は5,000円以上かどうかが判断材料の1つとなります。各勘定科目を把握したうえで、どのように扱われるのかを把握しておかなければなりません。また、一人あたりの金額に関しては、企業として税別・税抜で処理しているかどうかで変化するケースもあります。
例えば、会議に社外の人々を呼んで会議を行い、飲食も発生したとしましょう。この場合は、飲食費が1人あたり5,000円に満たない場合も会議費に該当する点などの基準はよく確認する必要があります。
交際費の経費精算上で必要な対応
ここからは、経費精算上で交際費を扱う場合に必要な対応についてみていきましょう。とくに電子帳簿保存法に関しては、これまで通りの支払い方法との違いを知っておく必要があります。
電子帳簿保存法に対応したデータの保存
電子帳簿保存法に対応する場合、データであればPDFによる保存が必要です。飲食が関わる場合でも、 クレジットカードの履歴などからさかのぼり保存しておけば問題はないといえます。
ただし、紙の領収書を電子化する場合は次のような対応が必要です。
・領収書の受領、自筆による署名
・領収書の撮影やアップロード
・タイムスタンプの付与
そして、本人が電子化を行う場合は3日以内に行わなければならないものの、経理担当者などが領収書をまとめてスキャンや撮影する場合には、1か月と1週間の期日がも設けられています。そのため、領収書の処理方法に頭を悩ませる場合は、ペーパーレスやキャッシュレス化を推進し、電子帳簿保存法の保存形式に合わせる方が経理部門の負担は軽減されるといえるでしょう。
消費税の扱いを把握しておく
交際費における消費税の扱いは、8%か10%のどちらかになります 。外食であれば10%、社内であれば8%である点は覚えておきましょう。また、取引先との国内旅行やゴルフ料金は10%の消費税が課されます。
取引先に対して、どのような接待を行うのかによって税率が変化するため、それぞれの税率の把握が必要です。
交際費の経費精算上で必要な対応
交際費に関しては経費精算システムを導入することによって、申請内容との相違があるかどうかを自動的にチェックすることが可能です。また、申請内容がどの勘定科目に分類されるのか自動的に判断できます。
経理担当者だけではなく、申請を行う従業員の負担を軽減するためにも、経費精算ツールやシステムの導入は必要だといえるでしょう。また、不正利用が目的ではなくても人為的なミスは何時でも発生する可能性があります。
仮にすべてが現金支払いだった場合、経理精算を行う担当者の負荷は決して低くありません。そういった場合は、法人プリペイドカードやクレジットカードを契約することで連携することが可能となるため、金額の間違いはなくなります。
交際費も含めて経理部門の負荷に頭を悩ませている場合は、経費精算ツールやシステムの導入を検討してみましょう。
まとめ
交際費は、得意先や仕入先に対して、コミュニケーションの一環として接待などを行う際の費用をさすものです。企業の規模によって、特例として損金に算入できるものの、他の費用と混同した場合、計算のし直しや利益の変動が起こる可能性があります。
そのため、経費精算では、他の勘定科目との違いや税率などの違いを把握したうえで交際費を扱う必要があるといえるでしょう。
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