雇用保険とは?適用条件や手続きが必要なケース、罰則について解説
公開日:2023/2/8
従業員を雇用している企業は、原則的に雇用保険が適用されます。雇用主には労働保険料の支払い、各種書類の提出などさまざまな義務が発生するといえます。
また、雇用保険は2016年〜2020年にかけて、改正が4回行われており、現在の雇用保険被保険者や手続きなどについて、改めて確認したいと考える担当者の方も多いのではないでしょうか。
本記事では雇用保険の要件や適用条件、加入手続きの流れ、手続きを要するケースについて解説します。
目次
雇用保険とは
雇用保険は労働者が失業、または雇用継続が困難となる事由が発生した場合に、労働者のスキルアップや就労支援などを促進するため、必要な給付を政府が行う制度です。ほとんどの事業において、1人でも労働者を雇用していれば、雇用保険が強制的に適用されます。
3つの要件がある
労働者が以下に挙げる3つの雇用保険加入要件を満たしている場合、事業主と労働者の意思や雇用形態にかかわらず加入が必要です。
31日間以上の継続雇用見込みがある
同一の事業主が経営する雇用保険適用事業において、労働者の雇用期間が31日以上見込まれる場合、雇用形態に限らず加入対象となる可能性があります。他にも雇用期間の規定がないケース、雇用規約に更新規定があるケースなども含まれます。
また、当初の雇い入れ時点で雇用期間31日未満として契約し、後に31日以上へ変更した場合については、変更時点から雇用保険の適用対象です。
所定労働時間が週20時間を超える
契約内容のうち所定労働時間が週20時間を超えている労働者は、雇用保険の加入対象となる場合があります。アルバイト・パートや4週5休制などの形態で、週あたりの所定労働時間が短期的かつ周期的に変動する場合は、当該1周期における平均値で判断します。
昼間学生でない
昼間学生のアルバイト社員などは原則、雇用保険には加入できません。一般的に学生は学業に専念するものとされており、雇用保険法における労働者の定義から外れるためです。
しかし、31日間の継続雇用見込みと週20時間以上の所定労働時間に加え、以下3つの要件のいずれかに該当する場合は学生でも雇用保険の被保険者となります。1項目でも当てはまれば、通信教育・定時制・夜間の学生は雇用保険に加入できます。
・事業主の命令または承認を受けて、雇用関係を継続したまま大学などに在学している場合
・休学している場合(事実証明書が必要)
・課程終了条件が所定の出席日数でない学校の生徒であり、なおかつ当該事業で他の労働者と同様に勤務しえると認められる場合(事実証明書が必要)
非正規雇用と正規雇用の違い
雇用保険の被保険者は一般被保険者、高年齢被保険者、短期雇用特例被保険者、日雇労働被保険者の4種類に分けられます。それぞれの適用範囲を以下にまとめました。
類型 | 適用範囲 |
---|---|
一般被保険者 | 他の3類型に当てはまらない正社員・パート・アルバイト |
高年齢被保険者 | 65歳以上の高齢労働者 ※新規加入も可 |
短期雇用特例被保険者 | 短期的に雇用され、雇用契約が4ヶ月以上1年未満かつ、所定労働時間が週30時間以上 |
日雇労働被保険者 | 日雇いでの雇用または契約時の雇用期間が30日以内 |
正規雇用(正社員)を受けた労働者は全員「一般被保険者」となり、雇用保険への加入義務が発生します。雇用契約書の有無や試用期間中などの場合も、先述した加入要件をすべて満たしていれば適用対象です。
非正規雇用の場合は3パターンに分類されます。パート・アルバイト、派遣社員の場合は3つの加入要件を満たしていれば「一般被保険者」です。季節労働者の場合では「短期雇用特例被保険者」、日雇いの労働者であれば「日雇労働非保険者」となり、それぞれ通常とは異なる被保険者として雇用保険が適用されます。
また、65歳以上の高齢労働者は雇用形態にかかわらず「高年齢被保険者」の対象です。事業主側の対応において更新手続きは不要なものの、毎年6月1日時点の「高年齢者雇用状況等報告」を提出する必要があります。
雇用保険を適用する条件として、労働時間も管理する必要があります。そのうえで、時間内の業務効率を改善するためにはどうしたらよいのか、気になる方もいるでしょう。その場合は、こちらの記事から。
条件が変われば対象が変わる
雇用契約の変更によって所定労働時間が週20時間以上から週20時間未満となった場合、変更した時点で雇用保険の対象外となります。なお、所定労働時間が元から週20時間未満のケースでは、残業などにより一時的に週20時間を超過しても加入要件を満たしたことにはなりません。
雇用保険の適用条件とは
事業における雇用保険の適用条件では、労働者を雇用する事業全般を指します。そのため、1人の従業員であっても要件を満たしていれば、原則加入が必要です。しかし、常時5人未満の従業員を雇用している個人事業主の農林水産業は、加入が強制されていません。
農林水産業のうち一定の農林・畜産・水産・養蚕業については「暫定任意適用事業」に分類されます。雇用保険への加入を希望する場合は、従業員のうち2分の1が同意したうえで申請できます。同意が必要な理由は、雇用保険料の一部を当該従業員が負担することになるためです。
雇用保険の加入手続きの流れ
ここでは、雇用保険に関する必要書類の準備からハローワークへ提出するまでの流れをみていきます。ケースにより異なる項目もあるため、自社事業がどれに該当するのかを確認しましょう。
1.必要書類の準備
雇用保険の加入手続きに必要な書類は以下の通りです。
・事業所設置届
・雇用保険被保険者資格取得届
・雇用保険被保険者資格喪失届、離職証明書
・労働保険関係成立届控(労働基準監督署に提出したもの)
・保険関係成立届
・交付後3ヶ月以内の登記簿謄本または登記事項証明書
・労働者名簿
雇用保険被保険者資格喪失届、および離職証明書については労働者の離職があった場合のみ提出します。また、労働者名簿はハローワークが労働者の雇用実態を把握するために必要です。
2.ハローワークに提出
必要書類をハローワークへ提出後、雇用保険被保険者証と雇用保険資格取得等確認通知書(被保険者通知用)が発行されます。この2つは、被保険者本人が雇用保険に関して確認するためのものです。事業主は2つの交付書類を確実に本人へ届ける必要があります。
雇用保険の手続きが必要となるケース
雇用保険に関する手続きが発生するケースは主に、雇い入れの発生・従業員の退職・事業所の名称または所在地変更の3種類です。それぞれ必要書類も異なるため、併せてみていきます。
従業員の雇い入れが発生した
開業後に初めて従業員を雇い入れた場合は事業所設置届、雇用保険被保険者資格取得届の2種類を用意しましょう。2回目以上の雇い入れとなる場合は、雇い入れが発生する度に、管轄のハローワークへ雇用保険被保険者資格取得届を提出する必要があります。
なお、届出後に交付される雇用保険被保険者資格取得等確認通知書(被保険者通知用)、雇用保険被保険者証の2つは雇用主から労働者本人へ直接渡すことになっています。
従業員が退職した
労働者が離職した場合は、雇用保険被保険者資格喪失届に加え、給付額を判断するための離職証明書が必要です。離職証明書に記載している離職理由において、事業主と離職者の主張が異なるケースでは、事実関係を調査したうえでハローワークに判断を委ねることになります。
事業所の名称や所在地を変更した
事業所の名称や所在地が変更になった場合にも、雇用保険に関する手続きが必要です。名称・所在地などを変更した日の翌日から10日以内に、雇用保険事業主事業所各種変更届の提出、交付後3ヶ月以内の登記簿謄本または登記事項証明書の確認を行います。
法人でない場合は登記簿謄本が存在しないため、事業主の住民票(マイナンバー表記がないもの)などの証明書類を代わりに確認します。
未加入の場合、罰則がある
労働局からの是正勧告を無視して従業員を雇用保険に加入させなかった場合、事業主は雇用保険法により6ヵ月以下の懲役、または30万円以下の罰金を受けます。なお、やむをえない事情や不注意により手続きの遅延、失念などが発生する場合もあるため、即処罰となるわけではありません。
雇用保険に関する手続きは提出・確認すべき書類が多く、同時に労働保険関連の手続きも必要となる場合があります。2020年4月1日より電子申請が可能となったため、以前より効率的に手続きを行えます。
まとめ
近年、働き方改革や適用範囲の拡大により、雇用保険制度は頻繁に改正されている状況です。今後も、被保険者や保険率などが変更されていく可能性は十分に考えられます。最新情報の把握と適切な対応が求められている時代です。
現在は電子申請の開始により、e-Gov(イーガブ)やマイナポータルなどのサービスを通じて、雇用保険手続きがオンライン上で完結します。メンテナンス中以外の時間であれば24時間365日いつでも書類作成と手続きが行えるため、業務効率化の一手として活用しましょう。
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