総勘定元帳と仕訳帳と何が違うのか?項目から考え方まで解説
公開日:2023/2/8
企業は事業を行う場合、決算書を作成する必要があります。そして、経理担当の方であれば、総勘定元帳の数字は決算書に大きな影響を与えるという知識は既に持っているでしょう。
しかし、業務としてこなしていても、そもそも総勘定元帳がどういったものでどんなタイミングで使用されるものなのかを具体的に説明できないというケースもあるのではないでしょうか。
今回は、総勘定元帳と仕訳帳の違い、書類の必要性について詳しくみていきます。
目次
総勘定元帳とは
総勘定元帳とは、勘定科目ごとに取引が記録される帳簿を意味します。例えば、資産や負債などの項目にわけたうえで勘定科目をみれば、それぞれの状況を明確に把握できる状態となります。そのため、総勘定元帳の数字から、経営判断やお金の流れの分析なども可能です。
記載方法も大きくわけて次のように分かれます。
・標準式ー借方・貸方の数字をすぐに把握できる。しかし、現在の残高は計算する必要がある
・残高式―残高をすぐに把握でき、会計業務の主流となっている
また、総勘定元帳のみでは、1つ1つの取引の内容が把握できるわけではないため仕訳帳と組み合わせて使用していく必要があります。
総勘定元帳の数字に影響のある領収書について知りたい方はこちらから。
仕訳帳との違い
総勘定元帳と仕訳帳はどちらも必ず作成が必要な主要簿であり、取引を記載するという意味では、大きな違いはないといえます。しかし、総勘定元帳は日付ごとの勘定科目の数値が記載されるため、複数の勘定科目で扱われる取引だった場合は、詳細な内容までは把握できません。そのため、勘定科目のお金の流れを把握したい場合に使用します。
対して、仕訳帳は勘定科目も含めて日々の詳細な取引を記載するものです。そのため、日付から取引の内容を正確に把握するために使用されるケースが多いといえるでしょう。
法律で記帳義務がある
総勘定元帳と仕訳帳は、次のように法律で作成が義務付けられています。
法人税法施行規則の第54条 取引に関する帳簿及び記載事項より
「青色申告法人は、全ての取引を借方及び貸方に仕訳する帳簿(次条において「仕訳帳」という。)、全ての取引を勘定科目の種類別に分類して整理計算する帳簿(次条において「総勘定元帳」という。)その他必要な帳簿を備え、別表二十一に定めるところにより、取引に関する事項を記載しなければならない。」
引用:財務省『法人税法施行規則(昭和四十年大蔵省令第十二号)』より
仮に、作成しなかった場合は100万円以下の罰金を課せられると想定されます。また、青色申告の特別控除が取り消しとなる点も知っておきましょう。
代表的な記載項目
総勘定元帳の記載項目は次のようになります。
1.日付―取引のあった日付
2.借方金額―資産や費用
3.貸方金額―純資産・負債
4.相手勘定科目―相手方の勘定科目
5.仕丁―仕訳帳のページ数
6.残高―残高となる金額
7.摘要―取引の内容
総勘定元帳だけでは完結せず、仕訳帳から転記するものが多いため、毎日の仕訳帳の記述が大切なポイントになります。
総勘定元帳を利用する理由
ここからは、総勘定元帳を利用する理由についてみていきましょう。法律的に作成が義務付けられているだけでなく、経営の方向性や決算書の作成において役立ちます。
勘定科目ごとのお金の流れが把握できる
勘定科目ごとに残高・流れを把握できるようになるため、次のような金額の確認が容易となります。
・勘定科目ごとの借入金の残高
・預金額
預金額が予想よりも高くなった場合は、借入金を早く返すといった判断もしやすくなるでしょう。また、勘定科目を前期と比較することも可能です。前期と今期で、金額に大きな差が生じた場合も総勘定元帳によって確認できます。
経営の方向性も検討できる
企業として、どの部分にコストを掛けているのか、採算性の取れている勘定科目はどこかといった経営的な判断にも利用できます。例えば、ある勘定科目の金額が前期よりも高額となっていても、サービスや商品がより多く販売でき、預金額も残った状態であれば大きな問題とはなりません。
しかし、前期と同等の売上ではあるものの、残った預金額が少ない場合はコストがかかったと判断できます。総勘定元帳を活用することで、経営の方向性を見直す際にも役立つでしょう。
決算書が作りやすくなる
総勘定元帳の数値は、次の決算書類を作る際に必要となります。
・貸借対照表
・損益計算書
・試算表(作成義務はない)
試算表に関しては、決算前の総勘定元帳の数値が正しいかどうかを計算を確認するための書類です。借方・貸方の合計を表した合計試算表や借方・貸方のどちらかの残高を表す残高試算表などがあります。
また、上記の財務諸表の金額を確認する場合にも役立ちます。
総勘定元帳は保存期間が決まっている
総勘定元帳は、法律によって7年間保存することが決まっています。個人事業主は確定申告の提出後7年間、法人であれば期末後2ヶ月からカウントされる点は知っておきましょう。
また、青色申告を行ったうえで、赤字による欠損金が確定した場合、保存期間は9年となります。会社法では10年であるため、総勘定元帳は10年間は保存しておきましょう。
紙ではなく、電子でも保存期間は変わりません。
総勘定元帳を効率的に作る方法
ここからは、総勘定元帳を効率的に作る方法についてみていきましょう。紙で記述する方法もあるものの、管理が難しく、業務量も膨大となります。そのため、会計ソフトや経費精算システムを導入し、効率的な書類作成を行うことが大切だといえます。
会計ソフトを使用する
借方・貸方といった単語を使用せず、収入と支出に分けることで総勘定元帳を作成できます。また、手入力で間違いを発見した場合も簡単に間違いを修正できるため、 業務効率化につながります。
ただし、導入する場合は社内で使用している他の管理システムや経費精算システムと連携できるかどうかをよく確認してから導入しましょう。
経費精算システムを導入する
経費精算を行う機会が多い場合は経費精算システムやツールを導入することによって効率化が可能です。例えば、移動が発生する機会が多く、移動費を事業上の経費として扱う場合、旅費交通費として自動的に計算することもできます。
また、会計ソフトのように総勘定元帳が作れるわけではないものの、連携も可能です。そのため、手入力で時間を割くことに限界があるといった場合は、経費精算システムの導入を検討してみましょう。
経費精算について課題のある方はこちらから。
まとめ
総勘定元帳は、勘定科目ごとの総計を一目で把握できる帳簿です。細かい取引内容は分からないものの、残高の状態を確認できるため、経営方針やキャッシュフローの状態なども確認可能です。
決算書を作成する場合の数字の根拠ともなるため、仕訳帳と合わせて間違いのない書類作りを行いましょう。
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