CASE of Re-connect X 02
医療データを暗号化したまま
安心安全に管理・分析・活用する
秘密計算ディープラーニング
医療データの活用ニーズが高まっている
日本の医療技術は世界的にも高水準にある一方、DX によってさらなる高度化が期待される分野です。従来、日本では医療・疾患にかかわる情報をビッグデータとして共有し、研究や診療の現場に活かす取り組みは、患者のプライバシー保護の観点から進展してきませんでした。しかしながら昨今、少子高齢化や労働力不足、地域格差といった医療の行く末に深くかかわる社会課題の存在を背景に、政府が国策としてデータヘルス改革を掲げるほか、新型コロナウイルス感染症の拡大の影響もあり、医療ビッグデータの積極的な利活用のニーズはこれまでになく高まっている状況です。
秘匿化した医療データをそのままAI 分析に活用する
ソリューション 千葉大学医学部附属病院との共同研究を推進
NTTコミュニケーションズと千葉大学医学部附属病院は、NTTの独自技術「秘密計算ディープラーニング」などを活用した臨床データ分析の共同研究を2020 年10 月に開始しました。本技術では、機微性の高い診療情報を含む臨床データを暗号化したまま保存し、復号することなくディープラーニングを行い、AIモデルを生成します。分析者は解析結果のみを取得可能なことから、データの秘匿性は守りながら、さまざまな利活用の可能性を広げます。現在、「脳神経内科」「消化器内科」「感染症内科」などの診療科にて、複数の施設から収集した臨床データの分析、AIモデルの生成を行うことで臨床現場における課題解決につながることを検証しています。
例えば、単一の医療施設では症例数が限定され解析が困難な希少疾患のAI 診断支援ツール開発および臨床データの解析や、多施設共同研究による患者参加型長期観察研究など、さまざまなAIモデル生成、データ解析に有効です。今後も私たちは各診療科との共同研究を推進する中で、安全性を確保した上で、データの利活用を促し、多様な臨床課題・研究課題の解決を目指します。
医療データを安全に活用するプラットフォームを構築
NTTコミュニケーションズは、予防・治療・ケアに至る各ステージにおいてデータを収集・蓄積し、それらを安全に分析・活用するためのプラットフォームを構築することで、新たなヘルスケアサービスの提供を目指します。また医療機関や関連する企業などとの積極的な協業を試み、医療情報を活用した高度で先進的な医療の提供とともに医療従事者の負担軽減に貢献し、それぞれの豊かな生活(=Smart Life)の実現につなげていきます。
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スマートワールドビジネス部
スマートヘルスケア推進室
担当課長
櫻井 陽一秘密計算ディープラーニングを活用した臨床の現場におけるDXの推進は、多様な課題を解決に導く可能性を秘めています。データを活用する上では、患者さんたちの同意を必ず得なければなりませんが、「医学の進歩のため」と積極的に提供を認めてくださる方も多いと聞いています。共同研究を進める中では、臨床医の先生方の期待の大きさも感じています。多くの仲間たちの思いに応えるためにも、真に役立つ仕組みを作り上げたいです。
※本記事の内容は2021年12月現在の事実に基づくものです。