林 雅之Masayuki Hayashi
経歴
1995年、日本電信電話株式会社に入社。前橋支店に配属となり、法人営業に携わる。入社4年目、海外研修制度を利用してNTT MSC(マレーシア)に赴任する。帰国後、NTT再編成によりNTTコミュニケーションズ株式会社(以下、NTT Com)に所属。ビジネスユーザー事業部首都圏支店で、事業計画や営業計画、外資系営業などを担当。その後、本社の第二法人営業本部公共営業部に所属し、教育・医療分野などを担当する。この頃から独自にクラウドの情報発信を始め、政府のクラウド関連団体にも所属。2012年からはパブリッククラウドサービス『Cloudn(クラウド・エヌ)』の立ち上げ、その後、企業の基幹システム向けクラウドサービス『Enterprise Cloud(2021年5月より、SDPF クラウド/サーバーに名称変更)』の広報・マーケティングを任される。現在は、NTT Comのプラットフォームサービス本部データプラットフォームサービス部サービスクリエーション部門に所属し、Smart Data Platform(以下、SDPF)を構成するパートナーとのリレーション構築や社内イネーブルメント業務を担当。社外では、国際大学GLOCOMの客員研究員やベンチャー起業のマーケティングアドバイザーなども務めている。趣味は40代前半から始めたマラソン。身体を動かすことが好きで、トライアスロンやヒルクライムなどにも挑戦している。座右の銘は「夢あるところに行動がある。行動は習慣を作り、習慣は人格を作り、人格は運命を作る」
活動履歴
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記事掲載 |
講演動画
「IOWN」始動へ
インタビュー
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01
エバンジェリストとしての得意分野とミッション
NTT Comでは、長きにわたりクラウドを基盤としたデジタルトランスフォーメーション(以下、DX)全般に携わってきました。私が最初にクラウドを意識したのは、2006年にAmazonがAWSでElastic Compute Cloud(EC2)のサービスを始めたときです。「なぜ、日本企業にできなかったのだ」と衝撃を覚えました。そこから独学でクラウド分野について学び、ブログなどで発信。当時、日本ではまだクラウドの情報が少なかったこともあり、企業の勉強会や各団体やコミュニティーの講演にお声掛けいただくことが増えていきました。最終的には、クラウド技術の開発や標準化を目指す団体の立ち上げから参加。その流れで、NTTグループもこの団体に名前を連ねることにもなりました。
現在は、エバンジェリストとして、引き続き講演や企業の勉強会、政府の分科会などに参加し、クラウドが持つ可能性やその先にある社会変革などの話をしています。私は営業出身なので、エンジニアのようにスペシャリストとして技術論を語るわけではありません。ゼネラリストの立場で、データ活用やDXも絡めた「クラウドから始まるデジタル変革」などについて啓発するようにしています。また、最近では企業のCDO(最高デジタル責任者)やベンチャー企業、SDPFと連携するパートナー事業者との対談も多く、それがNTT Comにとって新規パートナーの開拓やエコシステムの形成にもつながっています。
今、クラウドは市場でも認知され、意識せずとも自然に使っている水のような存在です。しかし、まだまだ進化の余地はある。方向性は2つで、一つは、これまでの基盤をクラウドに移行し、ビジネスの効率化を図る。いわば、トラディッショナルな方向性です。もう一つは、ビジネスの効率化により生まれたリソースを活用してデジタル化し、新しい価値を創造する。この両輪が重要であることを、エバンジェリストとして伝えていきたいと考えています。
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02
これまでの活動を代表するプロジェクト
自らのキャリアで大きな存在となったプロジェクトは、2つ。2012年3月にサービスを開始したパブリッククラウドサービス『Cloudn(クラウド・エヌ)』の立ち上げと企業の基幹システム向けクラウド『Enterprise Cloud』のマーケティング業務です。
特にCloudnは思い入れが深い。「AWSに負けないクラウドを国産で作ろう」という気概で立ち上げて、アーキテクチャーや課金体系の構築などをゼロから学びました。それまでは外側からクラウドのビジネスモデルを分析していましたが、Cloudnのおかげでサービス事業者側の視点から事業モデルを理解することができたと思います。
当時、Cloudnの開発陣は、その開発過程で日本でもトップクラスの技術を身に付けました。こういった人材を国内で育てられたのは、大きな収穫の一つです。またEnterprise Cloudは、企業の基幹システムを見据えたサービスとしては、AWSよりも先んじてお客さまにご提案し、利用者を増やしていたと思います。そういった意味では、開拓者の自負があります。
残念ながら、Cloudnは2020年12月末でサービスを終了。報告はリリース1枚で済ませず、あえて記者会見を開き、私も出席しました。サービス開始から終了まで、最初から最後まで見届けましたが、Cloudnをご利用いただいたお客さまには、申し訳ない気持ちでいっぱいです。しかし、このCloudnやEnterprise Cloudがあったからこそ、NTT Comはインフラだけでなく、クラウドでも勝負できる事業者であることが認知されるようになりました。またわれわれにとっても、インフラの上のデータレイヤーまで意識したサービスへ目を向けるきっかけとなり、データ利活用に必要なすべての機能をワンストップで提供する、SDPFの構想につながったのではないかと思います。
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03
NTT Comと共に描く未来
「太陽系モデル」と自分では呼んでいますが、NTT Comはデータという太陽に対して、クラウドやネットワーク、セキュリティ、モバイルなどさまざまな惑星を持っています。太陽系を構成できるような宇宙感・全体感が強みですので、お客さまに対して多方面からアプローチし、レイヤーの組み合わせを考えながら提案・設計していきたいと思っています。
同時に、さまざまなデータを持つ異業種がつながることも重要だと考えています。公共データから各業界に特化したデータまで、社会におけるさまざまなデータが共通プラットフォームに集まり、それぞれのステークホルダーがうまく活用して、Win-Winの関係になるのが理想です。NTT Comはサービスプラットフォーマーとしての期待値も高いことから、SDPFをさらに発展させて、最終的にはSmart Worldの実現を目指したいと思っています。
もう一つ実現したいと考えているのが、サステナビリティ・トランスフォーメーション[企業の稼ぐ力とESG(環境・社会・ガバナンス)の両立を図る経営のこと。以下、SX]。DXはかなり浸透してきましたが、これから企業にとって重要なのはSXになると考えています。今、多くの企業が導入しているDXは、業務改善や新しいビジネスの創出が目的で、短距離競争的な要素が強い。しかし、業界や社会全体のことを考えると、中長期的な視点で、不確実性に備えた仕組みを作っていかなくてはなりません。そして、クラウドをはじめとしたデジタルを活用して企業や社会の最適化を図り、持続可能性を高めていく。これからは、長いスパンでトランスフォーメーションするというSXの考え方を提案するとともに、それを実現する仕組みを整えていきたいと考えています。