「ものづくり補助金」は、何のために生まれたのか?
日本の経済を支える中小企業。国や自治体では、中小企業に向けたさまざまな助成金・補助金を用意し、サポートを行っています。
「ものづくり補助金」(※)もそのひとつです。ものづくり補助金とは、中小企業庁と独立行政法人中小企業基盤整備機構実施している制度で、中小企業が革新的なサービス開発や試作品開発、設備投資を支援するための補助金となります。正式には、「ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金」といいます。支援の対象となるのは中小企業だけではなく、小規模事業者、NPO法人などの特定非営利活動法人、個人事業主なども該当します。
(※) 中小企業庁、独立行政法人中小企業基盤整備機構、全国中小企業団体中央会「ものづくり補助金総合サイト」
ものづくり補助金は「一般型」「グローバル展開型」「ビジネスモデル構築型」という3種類の型に分けられており、それぞれ補助金の上限額と補助率が異なります。一般型についてはさらに細かく枠が設定されており、「通常枠」「回復型賃上げ・雇用拡大枠」「デジタル枠」「グリーン枠」の4つに分類されています。一般枠での補助上限は、750万円から2,000万円となっており、補助率は1/2~2/3となっています。
2022年7月現在、一般型とグローバル展開型の募集が行われており、申込期限は2022年8月18日(木)までとなっています。ビジネスモデル構築型については、5月の時点で募集が終了しています。
ものづくり補助金には「4つの枠」がある
先ほども触れた通り、ものづくり補助金にはさまざまな種類が用意されています。すべてを詳細に取り上げるのは難しいため、本記事では一般型における4つの枠を中心に紹介します。
一般型の1つ目の枠「通常枠」は、製品・サービスの開発、生産プロセス・サービス提供方法の改善に必要な設備・システム投資等の支援に充てられる枠です。機械装置やシステムの構築費、技術を導入するための費用や専門家への経費、クラウドサービスの利用費など、単価50万円(税抜き)以上の設備投資が補助の対象で、補助率は1/2となります(小規模事業者など、一部の事業者は2/3)。
補助金額は100万円からで、従業員の人数に応じて上限が異なります。5人以下では750万円、6人以上20人以下では1,000万円、21人以上からは1,250万円が上限となります。
2つ目の「回復型賃上げ・雇用拡大型」は、業況が厳しいながらも、従業員の賃上げや雇用拡大に取り組む事業者が、製品やサービスの開発、設備やシステムへ投資を行う場合に補助されます。ここでいう「業況が厳しい」とは、前年度の事業年度の課税所得がゼロであることを指します。
設備投資額、補助金の条件は通常型と同じですが、補助率は2/3となります。
DX化、脱炭素化を進めることで補助金が貰える
3つ目の「デジタル枠」とは、DXに資する革新的な製品・サービスの開発に関連した支援です。具体的には、AIを活用したシステムの構築や、需要を予測するために導入したシステムのクラウドサービスの導入により、生産性と付加価値の向上を目指す中小企業を補助するものとなります。設備投資額、補助金額、補助率は、回復型賃上げ・雇用拡大型と同じです。
4つ目の「グリーン枠」は、温室効果ガスの排出削減に貢献する革新的な製品・サービス開発に取り組む事業者を支援するものです。たとえばエネルギー効果に優れた機械の導入や、脱炭素化に寄与するシステムの構築に要する費用が対象となります。
補助金額は他の枠と同様、従業員の人数に応じて変動します。上限額は従業員5人以下の場合は1,000万円、6人~20人は1,500万円、21人以上では2,000万円となります。下限額は従業員の人数に関わらず100万円です。申請にあたっては、これまで実施してきた温室効果ガス排出削減の取り組みを示すなどの条件があります。
不正受給にご用心!
ものづくり補助金を申請する際には、いくつか注意するポイントがあります。
その1つが、申請時に「GビズID(gBizID)」というものが必要になる点です。GビズIDとは、1つのアカウントで複数の行政サービスにアクセスできる認証システムで、アカウントを1回取得すると、他の行政手続きや申請をネット上で行えるというメリットがあります。
GビズIDのアカウントの作成には、印鑑証明など必要書類の提出が求められ、取得までに一定の期間が必要となります。申請の際に慌てないように、あらかじめ取得しておくのが良いでしょう。
加えて、ものづくり補助金には不正受給における罰則規定も設けられています。罰則行為の対象となるのは、例えば、虚偽の申請による不正受給や、補助金の目的外利用といった行為が判明したケースです。
このようなことが起きた場合は、交付の決定が取り消しとなります。さらに、補助金が交付済みの場合は、加算金を課した上での返還が求められます。ほかにも、不正内容の公表と、「補助金に係る予算の執行の適正化に関する法律」第29条に基づいた罰則が適用され、5年以下の懲役もしくは100万円以下の罰金で、両方が課せられる可能性もあります。
申請を行う場合は、申請内容が誤りでないかを確認し、不正受給にならないよう配慮が必要です。
ものづくり補助金の締め切りについては、冒頭で触れた通り2022年8月までとなっていますが、これはあくまで11次の募集に関する締め切りです。同補助金は一年に何度か募集を行っています。補助金の活用を考えているものの、8月の募集に間に合いそうにない企業は、次回の募集に向け、事前に準備をしておくと良いでしょう。
※本記事は2022年7月時点の情報を元に作成されています。補助金・助成金の申請にあたっては、公式情報をご確認ください。