「IT導入補助金」とは?
「IT導入補助金」とは、中小企業や小規模事業者が、業務効率化やDXを図るためにITツールを導入することを支援する補助金です。
対象は、たとえば製造業・建設業・運輸業であれば、資本金の額または出資の総額が3億円以下、常勤の従業員が300人以下の企業となっているように、業種や組織形態に応じて細かく設定されています。
加えて、この補助金の特徴は補助対象が「枠」ごとに用意されていることです。現在の「IT導入補助金2024」では、自社課題に合わせたデジタル化を目的にITツールやシステム導入のサポートをする「通常枠」のほか、サイバー攻撃などのサイバーインシデントに関する対処を目的にした導入を支援する「セキュリティ対策推進枠」、サプライチェーンや商業集積地に属してITツールを導入する取組みをサポートする「複数社連携IT導入枠」があります。
さらに、本年度からは「デジタル化基盤導入枠」が撤廃され、インボイス制度に対応した会計ソフトや受発注システムなどの導入支援をする「インボイス枠」が新設されました。
詳しくは、「IT導入補助金2024」でご確認ください。
「IT導入補助金」申請の流れ
中小企業(申請者)は、IT導入補助金事務局に登録された「IT導入支援事業者」と協力して申請する必要があります。申請から交付決定までの具体的な流れは、下記のとおりです。
- ①【申請者】IT導入支援事業者・ITツールを選定する
- ②【申請者】提出書類など申請のための準備をする
- ③【IT導入支援事業者】申請者を「申請マイページ」(申請のためのサイト)に招待する
- ④【申請者】「申請マイページ」を開設し、基本情報などを入力する
- ⑤【IT導入支援事業者】申請者の入力した内容を確認し、情報を追加入力する
- ⑥【申請者】申請内容などの入力した情報を最終確認する
- ⑦【申請者】SMS認証による本人確認を行い、IT導入補助金事務局へ提出する
- ⑧【IT導入補助金事務局】IT導入補助金事務局および外部審査委員会で審査を行う
- ⑨【IT導入補助金事務局】採択・交付決定する
詳しくは、「IT導入補助金2024・交付申請の手引き」でご確認ください。
「IT導入補助金」の申請状況
IT導入補助金は、すでに多くの企業が申請し、採択されたものは交付されています。2024年1月に締め切られた「IT導入補助金2023」のデータ*1を見てみると、最も申請数が多かったのは、2024年版では撤廃となった「デジタル化基盤導入枠」。申請数が8,879件に対して、交付決定数は6,315件。その採択率は約71.1%という結果でした。
次に多い「通常枠」では、申請数が3,401件に対して、交付決定数は2,573件。その採択率は約75.6%。そのほか「セキュリティ対策推進枠」は、申請数30件、交付決定数は20件、採択率は約66.6%という結果になっています。
このように、IT導入補助金は申請すれば必ずもらえるものとは限りません。不採択の主な原因としては、そもそも公募要領に当てはまっていなかったり、交付を併用している、もしくはすでに交付決定を受けていたりなどが挙げられます。申請時にはしっかりと、公募要領を確認するのはもちろん、「IT導入支援事業者」のサポートを受けることを検討してもいいでしょう。
*1:「交付決定事業者一覧及び交付申請件数2023(後期事務局)」
「IT導入補助金」が開始された背景とは?
IT導入補助金は、業務効率化やDX等に向けたITツールの導入コストを支援することによる、中小企業・小規模事業者等の労働生産性の向上を目的として2017年に開始され、現在まで継続されています。
労働生産性とは、「2022年版中小企業白書」*2によれば「従業員1人当たり付加価値額」と説明されています。具体的には、従業員数や労働時間、人件費、営業利益などをもとに算出し、その労働に投入された労働力が効率的に利用されているかどうかを判断するものです。
中小企業庁は、「2021年版小規模企業白書」*3において、少子高齢化の加速による人口減少や、それに伴う人手不足のなかで国経済の成長のためには、「企業全体の99.7%を占める中小企業の労働生産性を高めることが重要」と示しています。つまり、中小企業こそIT導入補助金を利用するべきといえるのです。
*2:中小企業庁「2022年版中小企業白書 第1部・ 第1章・第6節・労働生産性と分配」
*3:中小企業庁「2021年版小規模企業白書 第1部・ 第2章・第2節・中小企業・小規模事業者の労働生産性」
「IT導入補助金 2024」の拡充点
「IT導入補助金2024」では、2023年10月1日に開始されたインボイス制度への対応に特化した「インボイス枠」が新設されました。この支援枠は、2つのタイプにわけられます。それぞれの詳細を見ていきましょう。
インボイス枠:インボイス対応類型
インボイス制度に対応した企業間取引のデジタル化を推進するため、インボイス制度に対応した会計ソフトや受発注ソフトや、ソフトウェアと併せてPC・レジなどを導入する際に支援するものです。
中小企業における補助率や補助額は、下記のとおりです。
補助対象 | 補助率 | 補助額 |
---|---|---|
会計・受発注・決済ソフト | 3/4以内 | 50万円以下*4 |
2/3以内 | 50万円超〜350万円以下*5 | |
PC・タブレット等 | 1/2以内 | 10万円以下 |
レジ・券売機等 | 20万円以下 |
*4:会計・受発注・決済のうち1機能以上を有することが機能要件
*5:会計・受発注・決済のうち2機能以上を有することが機能要件
詳しくは、「IT導入補助金2024・インボイス枠(インボイス対応類型)」でご確認ください。
インボイス枠:電子取引類型
取引関係における大企業も含めた発注者が、インボイス制度に対応した受発注ソフトを導入し、受注者の中小企業・小規模事業者等に対して、無償で利用できる場合に、その導入費用の一部を支援するものです。
中小企業における補助率や補助額は下記のとおりです。
補助対象 | 補助率 | 補助額 |
---|---|---|
受発注システム | 2/3 以内 | (下限なし)~350万円以下 |
詳しくは、「IT導入補助金2024・インボイス枠(電子取引類型)」でご確認ください。
「IT導入補助金 2024」を申請する上で
中小企業が気をつけるべき点は?
「IT導入補助金2024」を申請する際は、交付規程や公募要領に沿っているのかを事前に確認する必要があります。
特に、公募要領にある「申請の対象となる事業者及び申請の要件」にまとめられている、申請の対象となる企業の定義は、しっかりチェックするようにしましょう。そこには、「IT導入補助金2024」の申請対象となる企業の基準が、業種別に資本金の額や従業員数が示されています。
加えて、「交付申請の審査」も重要です。そこには、事務局が補助事業者を採択・交付決定する審査についてまとめられています。審査は加点・減点項目で見られ、具体的には、「自社の経営課題を理解し、経営改善に向けた具体的な問題意識を持っているか」などの事業面の審査や、「労働生産性の向上率」の計画目標値の審査、「国の推進するセキュリティサービスを選定しているか」などの政策面からの審査項目があります。
採択率を上げるためにも、交付規程や公募要領をよく確認し、審査項目・事項に沿った申請をするように気をつけましょう。
出典:「IT導入補助金2024 資料ダウンロード」
「IT導入補助金」が中小企業にもたらす成果は?
中小企業はIT導入補助金を利用することで、ITツールによる、サービス品質の向上や業務効率化が可能になります。そうなると、労働生産性をはじめ、働き方改革につながったりなど、企業にとって大きな成果が期待できるのです。
たとえば、ある建設・土木企業では、社員のほぼ半数が工事現場で勤務する状況でありながら、勤怠管理をタイムカードの打刻で行っていました。そのため、現場に向かう前と作業終了後には、タイムカードを打刻しに本社へ行かなければならなかったのです。それにより本来の労働時間に加えて往復の移動が必要になり、労働時間の超過や移動の負担などが常態化していました。
そこで、「IT導入補助金2020」の「通常枠」による補助金支援を受けつつ、勤怠・労務管理ソフトを導入してIT化を図りました。その結果、スマホなどの端末から打刻できるようになったので、本社に出社する必要がなくなり、直行直帰が可能になりました。さらに、残業時間の削減ができたほか、タイムカードの記録を手作業で入力していた勤怠管理業務の効率アップも可能になったのです。
この事例のように、「IT導入補助金」の支援を受け、企業課題に対してITツールなどを導入し業務効率化ができれば、働き方改革にもつながるのです。
出典:「IT導入補助金2024 ITツール活用事例(就業・勤怠管理ソフトの導入とオンライン会議の環境整備で働き方改革を推進!!)」
「IT導入補助金」で企業が抱える課題を
解決できる!
中小企業は現在、少子高齢化の影響もあり、深刻な人手不足問題を抱えている上、若いビジネスパーソンの大企業志向や離職率の増加などに追い討ちをかけられています。この先、中小企業はますます人材の確保が課題となるでしょう。
そのため、業務効率化やサービス品質の向上、労働生産性を高めることは、やはり重要なポイントとなるのです。そこで、IT導入補助金によるサポートを受けてITツールを導入し、企業が抱えている課題解決の方法の一つとして、申請の検討を進めましょう。
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