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OJT教育が、新入社員の個性を潰している!? 解決法とは

OJT教育が、新入社員の個性を潰している!? 解決法とは

パーソル総合研究所の調査によると、新入社員を現場で指導するOJT教育によって、新人の個性やモチベーションが失われているといいます。どうすれば回避できるのでしょうか

目次

新入教育のスタンダード「OJT教育」に課題アリ

ビジネスパーソンであれば、「OJT」で仕事を教えた経験、あるいは教わった経験があるという人は多いでしょう。OJTとは「On-the-Job Training」の略で、先輩従業員が新しく配属された従業員に対し、職場での実務を通じて、教育訓練を行うことを指します。

OJTと逆の概念に「OFF-JT」というものも存在します。OFF-JTは「Off the Job Training」の逆で、日常の業務からは離れて行われる研修やセミナーといった「座学」を指す言葉です。

OJTとOFF-JTを比べた場合、実際に現場で働いている先輩従業員から学べるという点で、OJTの効率は高そうにも見えます。しかしながら、パーソル総合研究所が2025年1月に発表した「OJTに関する定量調査」という資料によれば、OJTで指導を受ける側の新人、指導する側の従業員の双方が、OJTに課題を抱えているようです。

OJTが、新人の個性を潰している!?

この調査は、パーソル総合研究所が2024年10月にインターネットによって調査したものです。調査対象は、過去3年以内にOJTを経験した、全国の正規雇用就業者4,000人です(年齢は男女20~59歳)。

資料によると、新卒の新入社員がOJTを受ける際に感じる課題としては、「人によって指示や教える内容が異なっている」(35.6%)が1番でした。一方、中途採用の新人の場合は「マニュアルや書類・業務ツールが揃っていない」(38.2%)がトップでした。

OJTで指導する側(教える側)の課題でも「人によって指示や教える内容が異なっている」が1番でした。加えて、指導する側の年齢が高ければ高くなるほど、「ハラスメントに気を付けなければいけない」「効率よく教えないといけない」といった意識を強く感じているといいます。

OJTでは指導する側が、他人の仕事の仕方を真似する指示を出したり、厳しい指導をしてしまいがちです。新人側も、OJT中に仕事の単調さや多忙さ、会社の成果主義的な姿勢を感じがちです。

しかし、こうしたOJT中に起きる“あるある”は、新人が「自分の個性を潰された」「この会社では自分の意見や主張は求められていない」「大きな歯車のひとつになる」といったマイナスの感情を抱く原因になり、新人の「没個性化」を招く恐れがあると指摘されています。

複数の先輩が教えるのも良いが、
OJTのネットワークが広すぎるのも問題

OJTによる指導には、新人のやる気や個性を奪う恐れがあることがわかりました。こうした事態を避けるためには、どうすれば良いのでしょうか。

資料では、新人のパフォーマンスを高めるOJTの指導方法として、新人の仕事ぶりを褒めたり励ますこと(勇気づける)、担当業務の全体を理解することから教えること(位置づける)、短期・中期・長期で目標を設定すること(跡づける)という、3つの教え方が重要としています。新卒の新人に対してはこれらに加え、行動や結果の良い点と改善点を具体的に伝えること(振り返る)も良い影響があるといいます。

1人の新人が複数の先輩から仕事を教わることも、個人のパフォーマンスを高めたり、新人が組織/仕事/文化に馴染みやすくなる効果があるといいます。似たようなこととして、先輩が社内の知り合いに対して新人を積極的に紹介する行動も、新人のエンゲージメント向上に良い影響を与えるとしています。

一方で、指導する側の人数が多く、OJTのネットワークが広すぎると、指導者によって指示や教える内容が異なり、新人が不安になる“OJT迷子”が発生する危険性も指摘されています。この事態を防ぐ方法としては、外部メンターを活用することにより、新人が業務を俯瞰できる視点を採り入れることや、新人同士がチームを編成したり、新人に対するアンケート結果を指導する側で共有するなど、OJTネットワーク内部の情報共有を促進することなどが挙げられています。

OJTの散逸化・OJT迷子の防止
OJTのネットワークを広げることは有効だが、新人が“OJT迷子”になる恐れもあるため、対策が必要になる
(パーソル総合研究所「OJTに関する定量調査」11ページより引用)

新人がOJTで成長しやすくなる5つの力とは

資料では、新人自身がOJTにおいて自身のパフォーマンスを向上する方法として、5つのポイントを勧めています。

その5つとは、わからないことがあれば質問したり助言を求める「訊く力」、仕事のプロセスを予想して、自分で問題解決を図る「先を読む力」、教わったことを自身でマニュアル化する「記す力」、行事や集会に参加するなど、自ら社内のメンバーに関わろうとする「会う力」、上司や先輩、同僚の仕事を見て真似する「真似る力」の5点です。この実践度が高い新人のほうが、実践度が低い新人よりも“仕事に慣れた”と感じる時期が早い傾向にあるといいます。

この5つの力のうち「会う力」については全体的に低い傾向が見られ、特に中途採用の新人、それも40代以降は顕著に低いといいます。企業としては、この新人特有の「会う力」の低さを向上するような取り組みが必要かもしれません。

新卒・中途別の主体的行動力
新卒・中途別の主体的行動力。「会う力」は、特に中途入社の新人に低い傾向が見られる
(パーソル総合研究所「OJTに関する定量調査」36ページより引用)

企業の多くは、「早く新人に馴染んでもらおう」「現場で働いた方が話が早いだろう」と、OJTを実践しているかもしれません。しかし、この資料で指摘されているとおり、OJTは新人が自身の個性やモチベーションを失う危険性をはらんでいます。「OJTで教えればいいだろう」と深く考えず新人を指導することは、せっかく採用した新人の心が、企業から離れていく原因になってしまう恐れもあります。

資料では、伝統的なOJTは「自組織に馴染ませる」ことがメインだったといいます。しかしこれからのOJTは、指導する側もされる側も「学び合う&変わり合う」べきであるとしており、新人の加入とOJTによる教育を、古い知識やスキルを刷新する好機とすべきとしています。そのためには、人事がOJTを現場任せにせず、組織全体で変わる機会に転換させる仕掛けが求められていると主張しています。

本稿で触れたように、OJTが失敗する原因は指導する側だけではなく、指導を受ける新人側にもあります。双方がOJTの欠点を認識し、その落とし穴にはまらないように気を付ければ、指導する側もされる側もともに成長し、企業の力もさらに強まっていくことでしょう。

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