Web会議の機会は、コロナ禍を経て増加した
新型コロナウイルス感染症の流行を経て、ビジネスシーンでは「Web会議(オンライン会議)」が当たり前になりつつあるようです。
帝国データバンクがコロナ禍の2021年9月、約2万5千社に対して行った働き方に関する調査によると、新型コロナの感染拡大をきっかけに開始した働き方の1位が「オンライン会議の導入」(49.4%)でした。
さらに、同社が2023年3月に実施した会議に関する調査では、社内会議は「主に対面で実施」が多数派(61.8%)だったものの、社外との会議については「主にハイブリッドで実施」が50.2%と最も多く、特に企業規模が大きいほど、Web会議を積極的に取り入れる傾向が見られるといいます。
Web会議の登場により、会議自体も増加傾向にあるようです。弁護士ドットコムが2024年8月に発表したWeb会議に関するアンケート調査では、調査対象となった企業の62.2%が、Web会議の普及によって、会議への招待・参加の頻度が「増えた」「やや増えた」と回答しました。
会議の途中で接続が切れる!聞き手の表情が分からない!議事録作成が面倒!
このようにビジネスシーンではWeb会議が当たり前になりつつある一方、不満を抱く人も増えているようです。
先に挙げた弁護士ドットコムの調査では、「オンライン会議でイラっとすること」の1位に「途中で接続が切れる」が挙がりました。割合は57.0%で、調査対象の半数以上の人が、Web会議の接続に不満を抱いている結果となりました。以下、「参加者の環境音が入る」(39.5%)、「画面共有が遅延する」(38.3%)、「会議への参加・入室がうまくいかない」(37.5%)と続きます。
Web会議の接続に不満を抱く声は、別の調査でも見られました。事務用品メーカーのイトーキが2023年5月に発表した調査でも、Web会議で不便・不満を感じる点の1位は「途切れや遅延などの通信品質」(38.9%)でした。
同調査の2位には「相手のカメラがオフで、反応/表情がわからない」(32.6%)が挙がっています。調査では62.1%の人が「基本的にカメラをオフ」に設定していると回答しているものの、「相手の顔を見て話したい」「相手の表情が見えず発言がしづらい」という声も一定数見られたといいます。
Web会議の議事録の作成に苦労している人も多いようです。IT企業の株式会社RevCommが、オンライン会議の議事録作成を担当しているZ世代(22歳~26歳)に対して行った調査によると、議事録の作成は情報共有や備忘録として役立っているものの、全体の6割が議事録の作成作業に不満を感じており、その理由として「議論内容に集中できない」(53.0%)「工数がかかり非効率的」(48.1%)という声が多く見られたといいます。
これらの調査をまとめると、「音や映像の途切れ・遅延」という通信品質の問題、「カメラがオフで、相手に伝わっているかわからない」という心理的な不安、「議事録の作成が面倒」という作業の煩わしさの3点が、Web会議の不満の原因といえそうです。
Web会議で「イラッ」とする場面はどうすれば解決できるのか
Web会議におけるこうした「イラッ」とするポイントを解消するためには、いずれも従業員個人の努力では難しく、会社としての対応が必要といえそうです。
たとえば「カメラがオフ」の問題は、会社が「Web会議中は基本的にカメラをオンにする」など、Web会議時におけるルールを設けるなどの対応が求められます。イトーキの調査でも、Web会議で質の高い議論をするためには“顔の見えるコミュニケーション”など、話しやすさを改善する工夫が必要としています。
「議事録の作成」については、最近ではAIが自動的に会議の内容を文字起こしし、議事録を作成するツールも登場しています。たとえば「Microsoft Teams」のWeb会議では、同じくMicrosoft社の生成AI「Copilot」と連携することで、議事録を自動で作成します。文字起こし→議事録作成の作業の大半をこうしたツールに任せ、最終的な調整だけ人間が行えば、大幅な作業時間の短縮が見込めます。
「通信品質の問題」は、先に挙げた2点以上に従業員だけでは解決できない問題です。社内の多くの従業員がWeb会議を同時に行うことで、社内の通信回線が混雑すると、映像や音声が途切れやすくなります。特にWeb会議時にカメラをオンにすることで、音声だけの場合よりも通信量は増加し、映像や音声の乱れがさらに発生しやすくなります。
対策としては、Web会議など特に負荷の高い通信を、インターネットなど別のルートに振り分ける「ローカルブレイクアウト」のような通信サービスや、法人向けの専用回線の導入などが挙げられます。
Web会議がビジネスシーンに定着したのはここ数年の話です。多くのビジネスパーソンが、今もWeb会議中に「イラッ」としているかもしれませんが、先に挙げたような対策で解決することで、他社よりもスムーズにコミュニケーションが取れるようになり、ビジネスも円滑に進むことでしょう。