アイティアクセス株式会社 取締役/事業部長
FT事業部 増田 修一氏

アイティアクセス株式会社
取締役/事業部長
FT事業部

増田 修一氏

「NTT Comに新しい技術やサービスを提案していただいたことが、新サービスにつながりました。今後も課題解決の糸口として、新技術やサービス提案に期待しています」

 

課題

端末のセキュリティ対策にかかるコストが
スケーラブルなサービス展開のネックに

アイティアクセス株式会社はさまざまな機器がインターネットにつながるIoT時代の到来を予見して、“商社×SI”の機能を持つユニークなソフトウェアベンダーとして、2000年に創業した。「ITで世界を楽しくする会社」をビジョンに掲げ、グローバル戦略でマーケットNo.1を目指すための挑戦を続けている。同社FT事業部は、電子マネーや二次元バーコードに対応したクラウド型の非対面型決済端末の提供から決済データ処理業務までを一括して対応する「ワンストップ決済サービス」を提供している。これらのサービスは、自動販売機や券売機などに特化した決済情報やセキュリティ対策をサーバー側に持たせるシンクライアント型を採用。端末の機能を抑えることで安価な提供を可能にし、多様化するキャッシュレス決済に対応できるというメリットがある。

「国内のキャッシュレス化比率は、2023年末現在で40%を超える勢いとなっています。当社は非接触のクレジットカード決済ができるサービスに加え、二次元バーコードやNFCタグを使用した安価なサービスの開発を進めてきました。エントリーからハイエンドまでを網羅したスケーラブルなサービス展開によってお客さまの多様なニーズに対応し、キャッシュレス化の裾野を拡大したいと考えてきました」と語るのは、同社FT事業部長の増田修一氏だ。

安価なサービスを開発する際の妨げとなっていたのが、端末のセキュリティ対策だった。なぜならクラウド上に主要な決済アプリを置いても、端末のセキュリティ条件となる耐タンパ性(内部情報の不正な読み取りや改ざんに対する耐性)をクリアする必要があったからだ。「決済方法にはそれぞれ厳しい規格が定められていて、規定を上回るセキュリティを担保することでクリアできます。しかし複数の重点箇所をカバーする高い耐タンパ機能を搭載すると、端末が高価になってしまうのです」(増田氏)

耐タンパ機能の搭載は、とりわけ安価なエントリーモデルの価格に響くため、スケーラブルなサービス展開の妨げになっていた。それは、さまざまな対策を検討してみても解決策を導けない悩ましい課題だった。

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対策

eSIM内のアプレット領域に機微情報を格納
画期的なソリューションが新サービス開発を後押し

端末のセキュリティ対策を模索していた増田氏に、転機が訪れた。同社にSIMを納めるNTTコミュニケーションズ(以下、NTT Com)から、新しいeSIMの機能を紹介されたのだ。それはeSIM内のアプレット領域にオリジナルのアプリケーションを搭載でき、サーバーと連携するソリューションだった。「20年以上前に住基カードの開発に関わった際に、同じような仕組みに触れました。その経験から直感的に使えるかもしれないと思いました。SIM自体が耐タンパ機能を持つデバイスのため、ここに機微情報(慎重に取り扱うべき個人情報など)を置き、必要なときに認証して取り出すことができれば、セキュリティ問題の一部が解決できる、より安価なサービス開発ができると判断し、導入を決めました」(増田氏)

図 新しいソリューションを使ったeSIMの仕組み
図 新しいソリューションを使ったeSIMの仕組み

増田氏が導入を決めた「IoT Connect Mobile® Type S」は、NTT ComのeSIMに対応したIoT向けモバイルデータ通信サービスだ。端末のスペックや必要なセキュリティレベル、映像アップロードに使いたいといった目的など、ユーザーの要望に合わせて柔軟にプランを選択できる。さらに、これまでキャリア側にしか管理できなかったアプレット領域を、ユーザー側でも管理・活用できる「アプレット領域分割技術(NTT Comにて特許出願中)」をベースとした画期的なサービス「eSIMアプレット」を利用できることが決め手となった。

新たなサービス開発の道のりが見えたものの、前例のない挑戦だったため開発は難航したという。「これまで、いろいろな環境で開発に携わってきましたが、初の試みとなるアプレットの開発には苦労しました。その際、NTT Comには開発環境を提供する会社へのお問い合わせなど、技術面や段取りで手厚くサポートしていただき、新サービス実装の目途がつきました。ちなみに私自身が開発のゴーサインを出せる立場にいなかったら、さらには新しいチャレンジを推す会社の雰囲気がなかったとしたら、このようなチャレンジは無謀とされ却下されていたかもしれません(笑)」(増田氏)

こうして、約1年がかりの開発プロジェクトは無事終了し、次のフェーズへと進んでいく。

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効果

新サービスでキャッシュレス決済の普及を加速
海外も視野に決済にとどまらない新たな価値創造へ

2024年春、新たなeSIMを搭載した“松竹梅”のスケーラブルなサービスラインナップを網羅した新サービスがリリースされた。増田氏は、安価に安全が担保できたことでキャッシュレス決済の裾野はさらに拡大していくと見込んでいる。「機器本体とSIM内に2つのマイコンが入っており、それぞれが別ルートでネットワークにつながります。2系統でソフトウェアを管理することで、セキュリティが強化できる仕組みです。今後、機器内のマイコン同士で通信できるようにすれば、さらに強固なセキュリティを実装できると考えています」

さらにeSIMのアプレット領域に機微情報に限らず、多様なユーザーデータが格納できるようになったことで、セキュリティ面のみならず、さまざまな可能性が広がった。「私が取り組んでいるテーマは“空間のマネタイズ”です。自動販売機が置けない狭い空間であっても、小型のIoT機器を置いて安価に運用できるようになれば、新たな決済型ビジネスにつながります。そういった機器が街に広がっていけば、キャッシュレス決済はさらに浸透していくのではないでしょうか」(増田氏)

次なる増田氏のチャレンジは、顔、指紋、静脈などの生体認証に対応したIoT機器を広く普及させて、ユーザーの消費行動から得たデータを外部サービスとつなげることによる新たな価値創造だ。「福利厚生やヘルスケアといったサービスを提供するパートナーと連携することで、決済にとどまらないさまざまなサービスの創出ができると考えています。日本国内のみならず、世界172の国と地域で利用できるeSIMの強みを生かした海外進出の可能性も十分にあります。決済方式だけをローカライズすれば対応できますし、健康などを切り口にした画期的なサービスが生み出せれば、きっと世界でも通用するでしょう」(増田氏)

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導入サービス

IoT Connect Mobile® Type S

NTT Comとの契約のみで、日本だけでなく172の国と地域で、eSIMを活用したIoT向けモバイル通信が利用できるサービス。アプレット搭載可能なeSIMは本サービスの付加機能「eSIMアプレット」として提供される。

アイティアクセス株式会社

アイティアクセス株式会社

事業概要
2000年、IoT時代の到来を見越して、“商社×SI”の機能を持つソフトウェアベンダーとして創業。以来、国内外の先端優良ソフトウェアの導入とソフトウェア開発を通じて、数々のプロジェクトを成功に導く。近年はフィンテックビジネスの拡大とともに、多数の新サービス、新製品を創出している。

URL
https://www.itaccess.co.jp/


(掲載内容は2024年3月現在のものです)


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