小野薬品工業株式会社
共創により製薬企業に特化したAI翻訳エンジンの開発に参画
AI翻訳サービスを全社展開しグローバル展開を加速
小野薬品工業株式会社
デジタル・IT戦略推進本部
デジタル戦略企画部
DX戦略企画推進室
片山 英夫氏
「社内の随所でCOTOHA® Translatorを使っている文書を見かけます。全社的に広く使われているのは非常にうれしいですね」
小野薬品工業株式会社
研究プロジェクト統括部
プロジェクト評価課
新井 珠美氏
「質の高い英文を手軽に作成できるCOTOHA® Translatorの導入が、社内全体の行動変容につながったと感じています」
課題
グローバル化に向けて言語の壁を越えた
コミュニケーションを活性化したい
世界のフィールドで闘えるグローバルスペシャリティファーマを目指す小野薬品工業株式会社(以下、小野薬品)では、日本のみならず、欧米での自社販売を視野に入れた組織体制の整備、強化を進めている。そのため、言語の壁を超えたコミュニケーションの活性化が重要課題となっていた。同社の片山英夫氏は、グローバル化に向けた課題を振り返る。
「私たちはイギリス、アメリカ、韓国、台湾に拠点を設けて、事業を展開しています。当然、現地で使われる言語は異なります。社員の誰もが言語の壁を気にすることなく、円滑なコミュニケーションを図るための第一歩として、AI翻訳の導入を決意しました」
小野薬品の翻訳ニーズは、非常に多岐にわたる。海外拠点との連携を図るための日常的なメールでのコミュニケーションや情報共有のための資料作成のみならず、数百ページに及ぶ治験関連の文書や新薬の申請資料などに加え、製造販売後の安全性情報、照会事項などがある。これら当局に提出する資料には期限があり、翻訳には精度とスピードの両方が求められる。
「今後グローバル展開が加速すれば、社内の翻訳ニーズはさらに高まります。ですから、製薬業界の専門用語にも対応できる翻訳精度の担保やスピードの向上は継続的で重要な課題でした」と同社の新井珠美氏は語る。
同社は複数のAI翻訳サービスを比較検討し、当時最も高性能だった他社AI翻訳サービスを導入した。しかし、社内での利用率が上がらないという新たな課題に直面したという。翻訳精度は高かったものの、従量課金制でユーザー数が限られた。さらに、翻訳結果にたどり着くまでの複雑な操作も利用率伸び悩みの一因と考えられた。
「当時、外部サイトへのアクセス状況を見ると、多くの社員が無料の翻訳サイトを利用していました。もちろん情報漏えいに配慮して、マスキングなどの手間をかけていたと思われます。AI翻訳の潜在的なニーズは非常に高いものの、社員に幅広く利用されない状況だったのです」(片山氏)
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対策
AI翻訳エンジン共同開発プロジェクトに参画
製薬業界に特化したカスタムモデルを導入
同社の転機となったのが、NTTコミュニケーションズ株式会社(以下、NTT Com)を含めた3社が共催する、製薬企業に特化したAI翻訳エンジン共同開発プロジェクトを紹介されたことだった。通常、1社で翻訳エンジンをカスタマイズする際には膨大なコストや稼働が必要になるが、複数の企業による共創体制で推し進める開発の場合、それらが大幅に抑えられるというメリットがある。
ちなみに当プロジェクトでは、小野薬品をはじめとする複数の製薬企業が自社のコーパスデータ(製薬業界の現場で使われている言葉の用例を集めたAI学習用の対訳データベース)を提供し、それを翻訳エンジンに落とし込むチューニングをNTT Comのパートナーであるみらい翻訳社が行う仕組みになっている。
「プロジェクトへのお誘いは他社のAI翻訳サービスを導入することを決定した直後でしたので、正直タイミングは最悪でした(笑)。しかし、製薬企業がコーパスデータの基となる実務文書を持ち寄るという構想が素晴らしく、データ学習時の機密情報漏洩対策もしっかりしていました。これまでにない大規模の学習により翻訳の精度が向上することが見込めましたので、これが実現すれば必ず良いものができると確信できました」(新井氏)
プロジェクトの話を新井氏から聞いて、片山氏の心も動いた。「DXのポイントは、いかにまわりを巻き込んでいくかです。こつこつ1社で精度向上に取り組んでも限界があります。創薬ではライバル企業でも、翻訳においては協力することで新薬の開発スピードが上がり、企業同士、ひいては患者さんへのメリットが生まれると考え、参加を決めました」(片山氏)
その後、各社の共創によりプロジェクトは順調に進み、製薬企業に特化した翻訳エンジンが完成。NTT Comが提供するAI翻訳プラットフォームサービス「COTOHA® Translator」のラインナップとして、「製薬カスタムモデル」として提供されることになった。
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効果
高精度&操作性の高さで全社展開後の利用が激増
グローバルな事業展開を加速に寄与
「製薬カスタムモデル」を社内でトライアルし、導入済みのAI翻訳サービスと比較検討したところ翻訳精度や操作性を含めて利用者の評価が非常に高かったため、小野薬品はいち早く導入を決断する。「定額制であったこともあり、全社員にIDを付与したところ、利用ワード数が飛躍的に増え、利用頻度・利用量ともに大幅に上昇しています」(片山氏)
用途としては情報収集のための英語資料や論文の和訳に使われることが多く、PDFなどのファイル翻訳の頻度が高い。
「以前は従量課金ということもあり、利用を控える傾向があったのですが、いまは定額で無制限に使えるようになったことで全社的に利用が拡大しています。ファイルをドラッグ&ドロップするだけで簡単かつスピーディに翻訳できる使い勝手の良さで、短時間でより多くの情報収集が可能になりました。日々のメールでも、文章作成の時間が短縮できた、逆翻訳機能で確認ができるので、質の高い丁寧な英文が作成できると好評です」(新井氏)
片山氏は、コミュニケーションが円滑化したことも大きな成果だと考えている。
「従来は社員が1日がかりで翻訳していたものが数分、数十分程度に短縮できたことで、リアルタイムな意思疎通、情報共有が可能になりました。グローバルな事業展開に追い風となったと感じています」(片山氏)
片山氏は、今後NTT Comとともに、英語以外の多言語対応や、グローバル共通の文書管理基盤として利用中のBoxと連動させた自動翻訳にも取り組んでいきたいと展望を語る。
「製薬カスタムモデルの共同開発と導入は、弊社におけるDXの先駆けでした。翻訳ニーズがある部門の意見を取り入れて全社展開ができたと感じています。今は韓国・台湾の社員とのコミュニケーション円滑化のために多言語対応が急務です。また、文書管理やリモート会議のシステムと連動させることでグローバルビジネスのさらなる加速を目指し、ネクストチャレンジのDXにも取り組んでいきます」(片山氏)
AI翻訳サービスを活用し、グローバルビジネスを拡大させるべくチャレンジを続ける小野薬品の取り組みは、グローバル展開を図る企業にとって参考になるものではないだろうか。
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導入サービス
COTOHA® Translatorビジネスプラン(製薬カスタムモデル)
最先端のAI技術を活用し、精度・スピード・利便性を兼ね備えた翻訳を実現。製薬カスタムモデルは製薬業界に特化したサービスとなっている。
詳しくはこちら小野薬品工業株式会社
事業概要
創業1717年(享保2年)、300年以上の歴史を持つ製薬企業。「病気と苦痛に対する人間の闘いのために」という企業理念のもと、独創的かつ革新的な新薬を創製し、世界のフィールドで闘える開発型国際製薬企業(グローバルスペシャリティファーマ)を目指している。
(PDF形式/386 KB)
(掲載内容は2022年3月現在のものです)
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