埼玉県庁

全国の自治体に先駆け、ヘルプデスクの業務効率化にAIを活用

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埼玉県 企画財務部 情報システム課 企画・支援担当 主事 高橋 勇介 氏

埼玉県
企画財務部
情報システム課 企画・支援担当
主事

高橋 勇介 氏

「COTOHA Chat & FAQを業務効率化の面で期待するとともに、多くの職員に慣れ親しんで利用してもらえるAIチャットボットに育てていきたい」

 

課題

ヘルプデスクでの応対稼働の軽減とともに、FAQの効果的運用が急務

埼玉県庁では平成30年度の重点施策分野として「スマート社会へのシフト」を掲げて、庁内で計画されるさまざまな事業の中でAI(人工知能)、IoTなどICTにおける新技術の導入検討を常時重ねている。

企画財政部の情報システム課と総務部の総務事務センターでは、庁内職員約2万5千人から、業務系システムの利用方法への疑問、職員各自のパソコンの操作方法への疑問や不具合が出た時のお問い合わせなどを電話やメールなどで受け付け、解決するヘルプデスク業務を情報システム課8名、総務事務センター14~21名ほどの職員で対応している。

しかし、システムやデバイス数の増加に伴い、ヘルプデスクへの電話お問い合わせ件数が増えてきた。特に新規採用者の入庁や職員の異動がある年度初めや、確定申告時期の年度末はまさに繁忙期となる。そういった時期には、業務系システムの操作方法や異動に関する入力作業などに関するお問い合わせが顕著に増大する。

「電話は複数回線あるのですが、ずっと鳴っているような状態で、1日100件近くになることもあります」と情報システム課の高橋氏は語る。

情報システム課と総務事務センターとしては、普段の業務に加えてお問い合わせ対応業務があるうえに繁忙期だと対応件数がさらに増える。普段の業務中にお問い合わせの電話が来ると、その応対のために作業が遮られてしまうので、業務効率も上がらない状況になったという。

「そういう状況が続いたため、ヘルプデスクの増員を行うとともに、トラブルに対するFAQを整備して庁内職員向けに共有し、ヘルプデスクへのコール数を減少させようと努めました。」と高橋氏は振り返る。しかし、FAQの数が多く検索性が良くないという声もあり、さらに改善の余地があると考えていた。

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対策

単語の意味だけではなく自然文の理解と正確な回答が提供できるAIチャットボットの導入を決定

そこで、情報システム課は、庁内のシステム操作方法など、質問への自己解決を促進させる手法として、昨年度からAIチャットボットの検討を始めることになった。

「AIチャットボット導入により、庁内職員はWeb検索ではなく自然文を入力するだけで質問の意味を理解した回答が得られることで、FAQの利便性が向上すると考えました。また、正確な回答が得られることで実効性のある業務改善につながると考えました」(高橋氏)。同時に職員にAIの導入に理解を深めてもらうため、庁内においてAIやIoTなどの新技術について学べるセミナーを開催するなどの活動も行ったという。さらに、どこまでのお問い合わせをAIチャットボットに回答させるかなど、関係者で検討を重ね合意形成を図っていった。

同県は、複数社の提供事業者と一緒に検討を進めて、今年度5月末にNTTコミュニケーションズ(以下NTT Com)のAIチャットボットサービス、COTOHA Chat & FAQ®(以下Chat& FAQ)を選定した。Chat&FAQは、チャット形式で文言の「意味」を理解し適切な質問と答えを表示して利用者の自己解決をサポートするAIエンジンだ。

選定にあたり同県は、自然文を理解して会話形式で回答を導くことができる点や、その回答の結果から、より正確に回答できるように改善できる点などを要件に盛り込んだ。これに対し、「NTT ComはAIチャットボットの提供だけでなく、FAQにおけるチューニング作業など、サポート面まで含め、AIチャットボットを構築しやすい環境を提供するというところまで応えてくれました」と高橋氏は評価する。

今回のAIチャットボット導入対象である情報システム課と総務事務センターの2箇所で持っていたヘルプデスク業務に対応するFAQの数は約1,800にものぼったという。これに対しNTT ComはAI専門の担当が、FAQの整備・チューニングを支えたという。さらに、インターフェースの構築面でも魅力的なアバターをいくつか提案し、より自然な会話とFAQに対する親しみを醸成させる工夫を行った。

ヘルプデスクへの電話問い合わせ数大幅削減で期待できる効果

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効果

電話による定例的なお問い合わせへの応対稼働を3割削減できることを期待

こうして情報システム課は、12月頃の年末調整、異動が発生する繁忙時期に間に合うよう10月の稼働開始に向けて作業を進めている。構築期間の短い中だが、現在もNTT Comのサポートでトラブルなく進められているとのことだ。

これまでのヘルプデスクへの電話によるお問い合わせのうち、質問頻度の多い定例的なものは全体の大部分を占めていたという。「これらの定例的な質問をChat&FAQで回答して解決することができれば、電話応対の稼働を大幅に軽減できる」と高橋氏は期待を寄せる。もともと、電話応対以外にもシステムの運用業務など別の業務をたくさん持っている同課としては、本業部分に集中できるようになる。逆に、お問い合わせをする職員側もChat&FAQから、すぐに回答をもらえるので時間短縮になり、業務効率の向上につながる。

人材教育の効率化においても効果が期待できそうだ。応対スキル向上のための人材教育コストや稼働を必要とせずに、一定の品質で回答できるというところがAIチャットボット導入メリットの一つだと高橋氏は捉えている。

以前はヘルプデスクでの電話応対の担当者が変わる場合、教育がすぐには行き届かず、正確な回答ができるよう訓練が必要なアイドリング期間が発生したという。「そうした問題もChat&FAQを導入することによって応対品質が一定にできます。それに、応対する職員自身が空いた時間を活用しChat&FAQを使って質問の回答を確認するというような活用方法もあるかもしれません。」(高橋氏)。

そのためにも、まずは職員にChat&FAQを使ってもらうことが不可欠だ。「既存のFAQも今まで通り残す予定ですが、そこにもChat&FAQへ案内する工夫を施し活用促進を図ります。職員の多くが慣れ親しんで活用して、自分の業務に対する課題を解決してもらいたいです」(高橋氏)。

県庁内の他部署でもお問い合わせ業務にAIチャットボット活用できないか検討しているところがあるようだ。情報システム課が導入を決定したChat&FAQが、県庁における初めての事例となるので他部署からの期待も大きいものになっているという。

「これから10月の稼働開始に向けてチューニング作業など行ってリリースしますが、その後もFAQの回答精度向上を継続して取り組まねばなりません。これからも手厚いサポートをNTT Comに期待したいと思っています」(高橋氏)。埼玉県庁における情報システム課の新たな取り組みはこれからも続いていく。

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導入サービス

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