花王株式会社
グローバルSAPシステムをエンタープライズクラウドに移行
高速ネットワークでマルチクラウド環境を構築
花王株式会社
執行役員 情報システム部門統括
原田 良一氏
花王株式会社
情報システム部門 ICT部 情報技術G
課長
實川 晴武氏
花王株式会社
情報システム部門 ICT部 情報技術G
都倉 政弘氏
課題
経営目標に貢献する
ITインフラのクラウドシフト
「自ら変わり、そして変化を先導する企業へ」をスローガンに掲げ、2020年に向けて2017年度から「特長ある企業イメージの醸成」「利益ある成長」「すべてのステークホルダーへの還元」の3つにこだわった中期経営計画「K20」に取り組む花王グループ。2030年までに「グローバルで存在感のある企業となる」という経営目標に向けた基盤づくりを進めている。
経営を支える情報システム部門では現在、2025年をターゲットにグローバルSAPシステムの標準化に取り組んでいる。執行役員で情報システム部門統括の原田良一氏は次のように語る。
「花王グループは2000年から各国のグループ会社にSAP ERPを導入するプロジェクトに着手し、アジア、欧米、日本国内と順次展開してきました。そのプロジェクトを前中期経営計画の最終年度(2015年)に終えたばかりの今、次の10年で各事業会社に運用を定着させることが目的です」
未来の経営に資する新たな技術に対応していくことも、情報システム部門に課せられたミッションだ。2018年度に経営全般にAIなどの最新技術を活用する専門部署「先端技術戦略室」が設立され、情報システム部門と連携して活動している。「研究、生産、販売、管理などの部署のエース級のメンバーが検討したアイデアの実現を支援し、最大価値を生むことを期待されています」(原田氏)
これらの取り組みに欠かせないのがITインフラの強化だ。そのため同社はITインフラのクラウドシフトを進め、適材適所でクラウドサービスを使い分けるマルチクラウド戦略を進めている。基幹業務を支えるSAPシステムも例外ではなく、2014年よりクラウド化に着手した。
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対策
SAPに特化したクラウド基盤とグローバル
拠点間ネットワークをアウトソース
SAPシステムのクラウド化は、既存サーバーの更新のタイミングで切り替える方針を取っている。当初は海外ベンダーのクラウドサービスを採用したが、構築・運用面で多くの課題があった。そこで2017年よりクラウドサービスの乗り換えを検討し、NTTコミュニケーションズ(以下、NTT Com)をパートナーに採用。当時リリースされたばかりの「Enterprise Cloud for SAP®ソリューション」が同社の要件にマッチした。決め手は、インフラからネットワークサービスまで一括で提供されることにあったと、情報システム部門 ICT部 情報技術G 課長の實川 晴武氏は語る。
「オンプレミスの時代は海外拠点のデータセンター間のネットワークを自前で用意していましたが、クラウドを採用することでネットワーク部分の構築、運用から解放されます。各国の拠点からデータセンターにアクセスする足回りのネットワークをNTT Comに運用をお願いしてきた経緯もあり、クラウド基盤間や足回りの接続も考慮して採用しました」
NTT Comは花王への技術支援を2002年頃から行っており、オンプレミスのデータセンターも運用している。全システムがクラウド移行を終えるまではオンプレミスでの運用も継続されるため、クラウドとシームレスに連携できるメリットも大きかった。NTT ComはAWSやMicrosoft Azureなどのパブリッククラウドと連携するコネクトサービスも提供しているため、マルチクラウド化を進める花王の方針にもマッチしていたという。
最初のプロジェクトは、グループの経営情報を一元管理するSAP Central Financeをターゲットとし、2017年6月から1年3カ月で導入した。その後もサーバーの更新に合わせて、国内のデータウェアハウス基盤であるSAP BWを2018年9月に約3カ月かけてアップグレードし、現在は予算計画システムのSAP BPCの移行を進めている。
Enterprise Cloud for SAP®ソリューションの特長は、クラウド基盤サービスばかりでなく、テナント環境設定からシステム移行までを支援するサービス、導入後の監視運用代行サービスまで、フルマネージドで提供されることにある。そのメリットについて情報システム部門 ICT部 情報技術Gの都倉政弘氏は次のように評価する。
「以前のクラウドサービスはメンテナンスの実施時間がベンダーの判断で決まるため、米国の深夜=日本時間の昼間に当たってしまうこともありました。NTT Comが提供するクラウドなら運用の自由度が高く、メンテナンス実施時間もコントロール可能です。また利用したハードウェアリソース分だけ課金する仕組みは我々の考えに適しています」
図 基幹システムは本クラウドに集約、日・欧米のクラウド間ネットワークで接続
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効果
ビジネスの変化への対応力が向上
IT部門はイノベーティブな部隊へ
現在、SAPシステムが稼動するクラウド基盤は日本とアメリカの2カ所に置き、クラウド間はNTT Comの10Gのバックボーンネットワークで接続。クラウド基盤と各拠点をつなぐ足回りのネットワークは、NTT ComのMPLS回線を用いてグローバル約60カ所、日本国内約200カ所とつないでいる。インフラのパフォーマンスやネットワーク速度についても快適に利用できているという。「日本だけでなく、アジア、欧米とのデータ連携が発生する当社の場合、バックボーンのスピードも重要で、NTT Comのネットワークにより品質が担保されています」(實川氏)
インフラとネットワークをまとめてNTT Comにアウトソーシングすることで得られるメリットは大きい。インフラのリソースも必要に応じて調達できるため、サイジングからも解放された。都倉氏は「オンプレミス時代は3年先を見据えてリソースを確保しても1年で足りなくなったり、反対に多すぎたりしました。現在は必要に応じてリソースが調達できるため、コストの最適化が実現し、ビジネスの変化にも対応しやすくなりました」と話す。利用ユーザーがDR環境の要否をメニューから選ぶだけでDRが構築され、花王独自で行ってきた設計や構築による作業負荷からも解放されている。
経営面におけるメリットも大きい。原田氏は、「基幹系システムのSystems of Record、デジタルトランスフォーメーションを見据えたSystems of Differentiationのいずれにおいても、クラウドなら短期間に環境を用意してすぐにPoCを実施してモノになるかならないかを判断し、即座にビジネスにつなげることができます」と、クラウドのアジリティに期待を寄せている。
今後もオンプレミスで稼動中のSAPシステムの更新に合わせて順次クラウド環境に切り替えながら、SAP S/4HANAへの移行も検討していく考えだ。合わせてデータ分析などの情報系の基盤にもクラウドを積極的に活用し、マルチクラウド化を進めていく。
情報システム部門自体も時代に合わせた変革が求められている今、組織改革も今後の課題だ。「システムの構築/運用を担当する部隊から、イノベーションによって自ら世の中を変えていく集団に育てていきたい」と原田氏は展望を述べている。
※Enterprise Cloud for SAP®ソリューションは、SAP向けにVirtustreamのミッションクリティカルな環境に対応する共有型クラウド技術と運用をセットにしてNTTコミュニケーションズが提供しているソリューションです。
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花王株式会社
事業内容
化粧品、スキンケア・ヘアケア、ヒューマンヘルスケア、ファブリック&ホームケアの4つの事業分野でコンシューマープロダクツ事業および産業界のニーズにきめ細かく対応したケミカル製品の展開
URL
www.kao.com/jp
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(掲載内容は2018年11月現在のものです)
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