社会医療法人財団董仙会 董仙会本部 恵寿総合病院 理事・本部長 進藤浩美氏

社会医療法人財団董仙会
董仙会本部 恵寿総合病院
理事・本部長

進藤浩美氏

「ふだん医師や看護師は個人用のスマホを使いこなしていますので、PHSからの移行はスムーズでした。スマホもガラケーも持たない医師もいましたが、いまではすごくiPhoneを有効活用しているようです(笑)」

 

課題

院内の全電話をスマホに切り替えるトップダウンの指示
さらなる業務効率化に向けたスマホの有効活用を模索

石川県七尾市にある恵寿総合病院では、常勤の医師や看護師を確保するため1994年より医療従事者の働く環境を整備するIT化を積極的に進めてきた。昨今、医療業界では政府主導で医療DXが推進されているが、同院では医療・介護に携わるスタッフの働き方を改革し、人材の確保と高度な医療サービスの提供を両立させるDXをいち早く推進。その取り組みが評価され「日本一働きやすい病院アワード2024」の大賞を受賞している。かねてより、同院では院内の内線、ナースコール対応などでPHSを活用していたが、公衆PHSサービスの終了を受け、院内DXの足並みを一歩進める必要が出てきていた。

「長年、院内PHSを利用してきたのですが、人事異動などの際に内線番号を振り替える管理作業が大変でした。しかも、うっかり落として壊してしまったといったトラブルも多く端末の交換にかかる稼働も負担でした。また、院内で内線がつながりにくい場所があるなどのクレームがあったことも事実です。こうしたいろいろな課題があった公衆PHSサービスの終了を受け、理事長からトップダウンで“2023年4月から固定電話も含めて院内のすべての電話をスマホに切り替えよう”という指示が出たのです」と語るのは、理事・本部長の進藤浩美氏(以下、進藤氏)だ。

最初に決まったことは、院内のすべての電話をスマホに切り替えることだった。しかし、付随して固定電話の撤廃に向けた従来のオンプレミスPBXのダウンサイズ、スマホとナースコール用システムとの連動など、検討すべき課題は少なくなかったと進藤氏は当時を振り返る。「従来の内線やナースコールだけではなく、働き方改革、業務効率化を実現するためにスマホの機能を最大限に活用したい思いもありました。そこで、全国の医療機関に対するDX推進の実績を持つNTTコミュニケーションズに相談を持ち掛けたのです」(進藤氏)

 

対策

スマホの一斉導入に柔軟に対応できる「オフィスリンク」を選定
多様な業務ツールを実装したスマホとともに一晩で移行を完了

スマホの一斉導入にあたり、まず懸案になったのはナースコールとの連動だった。従来のナースコールシステムが老朽化しており、当初、スマホとの連携を図るにはナースコールシステムの更改が必要だった。「PBX更改にかかるコスト負担に加え、とうていスケジュールも2023年4月には間に合いません。その旨を相談したところ、PBXのダウンサイズも含めて柔軟に対応できるサービスをご提案いただいたのです」(進藤氏)

提案を受けたサービスとは、ドコモの「オフィスリンク」。既存のPBXとドコモのネットワークをつなぎ、スマホを内線や外線として利用できるサービスだ。よって、全国どこにいてもスマホへの内線取次ができる。もちろん内線電話なので通話料もかからない。音声は携帯電話と同等品質で、インターネット環境に依存する電話アプリと異なり、移動しながらの通話も途切れず安定する。また、院内外で連絡をとる必要のある主治医や看護師、職員に対しては1人1台スマホを配布し固定電話を削減することで、PBXのダウンサイジングが可能になり、PHSのアンテナも不要となる。連携できるPBXは豊富で、クラウド・オンプレミス100種以上のPBXから柔軟に選定できる。さらにゲートウェイを連動させることで、既存のナースコールシステムをそのままスマホで活用し、院内放送もスマホで利用できる。このようなNTTコミュニケーションズの総合的な提案も追い風となり、スマホと合わせてオフィスリンクの導入が決まった。

次は院内でスマホをどのように活用するかの検討だった。電話やナースコールに加え、コールブルーと呼ばれる緊急時の院内コール、チャットなど、相談を重ねるうちにスマホで活用するツールが徐々に固まっていった。「とくに私たちが活用したかったものは電子カルテです。個人の機微な情報が含まれる電子カルテを扱うには厳重なセキュリティ対策が必須になります。そこで、スマホを院外から利用する際はゼロトラストなVPN接続のご提案を採用し、さらにキッティングも含めてお願いすることにしました」(進藤氏)

NTTコミュニケーションズから提供されたガントチャートのもと、約8カ月がかりでスマホ移行プロジェクトは着々と進んでいった。進藤氏を中心とした院内メンバーは医師や看護師への周知・教育を徹底し、NTTコミュニケーションズは病院内の全館調査で電波が入らないエリアをなくすことなどに注力した。こうして細かな移行対策を講じた上で、いよいよ500台のスマホが一斉に導入されるXデーを迎えることになる。「NTTコミュニケーションズのみなさんの立ち会いのもとスマホの一斉導入に加え、PBXの入れ替え、既存のPHSや固定電話の撤去を一晩で完了させました。オフィスリンクの機能、NTTコミュニケーションズの対応力に感謝しています」(進藤氏)

 

効果

スマホ&オフィスリンクの連携で院内コミュニケーションが活性化
今後は介護施設などへの領域拡大で地域医療の変革へ

現在、恵寿総合病院に導入されているスマホは予備機を入れて520台、医師、看護師、職員などの職域に応じて必要な機能が振り分けられ、院外への持ち出しも職域で制限されている。「セキュリティに関わりますので、そこは事前に私が分類しました。いまでは、いろいろな仕事がスマホで回せるようになっています。どこでも内線でつながるようになり、医師と看護師の連携がスムーズになった。内線をかけづらいときはチャットで送ればいい、しかも1対多で連絡できるのも大きいです。コミュニケーションの効率が格段に良くなり、日々の仕事の生産性が大きく向上したと感じています。運用面では、スマホが故障しても内線登録が不要となり、故障したスマホから新しいスマホにSIMを入れ替えればすぐ使えるようなり、PHSの故障対応に比べ大幅に稼働が減りました。また、心配していた電話の外線通話料も内線電話をしっかりと活用できており固定電話のころとトントンですね」(進藤氏)

2024年1月1日に発生した能登大地震では、スマホとオフィスリンクによる新たなコミュニケーション網が真価を発揮。内線をスマホ化したことにより、被災により病棟が変わっても業務を継続することができた。また、チャットによるリアルタイムな情報発信でスタッフの安否、各地の被災状況、患者の受け入れ、応対状況などを時系列で関係者が確認、共有して適切に動くことができたという。「このような緊急事態用のチャットグループだけではなく、必要に応じて自由にチャットグループを立ち上げられるようにしています。患者さんが入院すると同時に自動で立ち上がるチャットグループでは、主治医や看護師、その他医療技術職などが患者さんの情報を共有できるようになっています。ほかにはiPhoneの活用方法について、改善点などの意見交換を行うチャットグループもあります。これもiPhoneに切り替えたことによる成果ですね」(進藤氏)

患者宅を訪問する訪問診察や訪問看護、訪問リハビリなどの業務にも大きな変化が出た。たとえば、 院外にスマホを持ち出せるようになったため、訪問先でスマホにカルテを記入し、セキュアなVPNで送信すればいいため、わざわざ訪問後に院内に戻ってからカルテ入力する必要はなくなっている。さらに院内の看護師の業務にも劇的な変化がみられているという。「都度、ナースステーションに戻ることなく、iPhoneがあればカルテも書けますし、注射、点滴、投薬などのデータを照合して処置できるようになりました。多様な業務が担当する患者さんのそばで完了するようになっていますので、患者さんに対する医療の質も上がっています」(進藤氏)

今後、同院では介護関連の施設にもスマホとオフィスリンクを拡大していく計画だ。「介護の現場には両手をふさがれてもやりとりできるインカムも導入予定です。恵寿総合病院と介護施設の連携で地域医療の変革に取り組んでいきます。今後、介護現場には介護用ロボットもどんどん導入されていくため、その際にはiPhoneで操作するようになるでしょう。ITに豊富な知見をお持ちのNTTコミュニケーションズには、これからも医療DX推進のパートナーとしてお付き合いいただきたいと思っています」(進藤氏)

課題と効果

導入サービス

オフィスリンク®

スマートフォンおよび携帯電話を内線化し全国のドコモ通信エリアを会社の内線エリアへ

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事業概要
1934(昭和9年)年の創立以来、人命尊重、心身の健康第一の立場に立ち、職員一体で地域住民の健康維持に努め、地域の中核医療施設として社会、経済、文化の発展向上に貢献している

URL
https://www.keiju.co.jp


(掲載内容は2024年12月現在のものです)


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