光和ネットサービス株式会社
牛の傷病を検知するIoTソリューションを開発
高品質の通信基盤とともに、酪農・畜産業の課題解決を目指す
光和ネットサービス株式会社
企画部 部長
宮原 利之氏
「今後は牛の行動データに加えて、温度や湿度などの環境データと突合して因果関係を分析したいと考えています。その仕組みを支える安定したモバイル通信基盤を期待しています」
課題
日本の酪農・畜産業の課題を解決するIoTソリューション開発へ
ゼロからの始動をサポートする通信パートナーが求められた
光和ネットサービス株式会社(以下、光和ネットサービス)は、ITコンサルティングから機器導入、システム開発、運用保守までのワンストップサポートが強みの総合SI企業。多くの実績に裏打ちされた高い技術力を生かし、独自のアプリやシステム開発にも意欲的に取り組んでいる。同社が近年、注力しているのがIoTの領域だ。プロジェクトを主導する企画部 部長の宮原利之氏は、IoTの可能性について次のように語る。
「IoTデバイスのビーコンを利用することで、システムの導入コストが抑えられます。従来の入退室や物品管理システムに加え、新たな用途で提案できるようになり、市場が拡大しました」
同社が開発、提供する「KOWA NET BEACON」は小型センサーを使用したソリューションの総称だ。その最大の特長は、電池レスで利用できること。振動で発電を行うことでセンサーのデータを受信機に送信し、モバイル通信経由でクラウド上の管理システムにアップロードされる。「児童のランドセルに取り付けたビーコンで保護者に登下校の通知をする見守りサービスとして、首都圏の小学校で採用されています。電池を使わないビーコンを採用した試みは、国内で他に例がないのではないでしょうか」
このビーコンを使った新サービス開発にあたり、宮原氏が着目したのは、高齢化や人手不足が深刻化する酪農・畜産業だ。「当初は牛の行動量から発情期を検知するという、従来の高価なシステムの代替品として使えるのではないかと考え、酪農家にヒアリングしました。その際に挙げられた声を手掛かりに、牛の採食や反芻、休憩などの行動データを収集し、疾病の兆候を検知する新たなサービスを発想したのです。また、本件への取り組みについては埼玉県や戸田市商工会、取引銀行の武蔵野銀行にもご賛同いただき、平成30年度の埼玉県ものづくり補助事業並びに埼玉県経営革新計画事業として採択されました」
ここから、まだどこにもないサービスの開発プロジェクトが始動するが、その一方で不安も抱えていた。新たなサービスの実現に不可欠となるのが、牧場からクラウド上にデータを送信するためのモバイル通信基盤だ。「これから開発やテストを進める段階であるため、事業化してもヒットするという確証はありません。そこを理解した上で協力いただけるパートナーが必要だったのです」
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対策
事業化の意義を理解した提案力を評価
品質・信頼性の高いモバイル通信基盤を選定
協業パートナーを探していたころ、偶然NTTコミュニケーションズ(以下NTT Com)の営業担当と話す機会があったとことが転機になったと宮原氏は明かす。「ターゲットは酪農や畜産農家、市場規模は約6万戸、コンセプトは牧場の人手不足を解消することです。現状はまだ開発段階であり、これから事業化を目指していることなどを正直に伝えたところ、ぜひ一緒にやりましょうという返答をいただきました」
宮原氏の相談を受けて、NTT Comから提案のあったサービスが「OCN モバイル ONE for Business」だった。ビジネスはもとより、IoT用途の活用に最適化されたモバイル通信サービスだ。3G/LTEに加えLTE-Advancedに対応、都市部でも郊外でも安定した通信が提供できることが強みとなっている。
「導入先である牧場は山間部など郊外が多く、そのような場所でも安定してつながることが大前提です。さらに法人向けサービスとのことから、時間帯による遅延が起きにくいという通信品質も評価しました。加えて本事業は全国の酪農家や畜産農家向けに中長期でサービスを提供することが前提となるため、継続してサービスを提供していただける企業としての信頼性も重視しています」と、宮原氏は選定の理由を挙げる。
最後のピースであったモバイル通信基盤が定まったことで、同社では牧場でのテスト運用をスタート。現場の状況に合わせた細かな調整を行い、サービスに最適化した通信環境を提案してもらえたことが大きな収穫だったと宮原氏は語る。「いろいろと議論を重ね、私たちのサービスを深く理解した上で最適なコストプランや接続形態などを何度も調整して提案いただけたので、非常に助かりました。おかげさまで安定した通信品質のもと、大きなトラブルもなく牛の行動管理データを収集することができました」
牧場でのテスト運用は半年に渡ったが、ここで収集したデータの精度は驚くべきものだった。
■ソリューション概要
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効果
牛の行動の変化を9割の高精度で検知
疾病管理に加え、協業による多面展開へ
現在、同社が開発した牛の疾病管理ソリューション「ルミログ」は事業化に向けた大詰めの段階にある。
具体的な仕組みとしては、牛の口元につけたビーコンが採食、反芻などの時間、回数などを検知して受信機に飛ばし、モバイル通信を経由してクラウド上に蓄積されるようになっている。毎日の時間帯の行動データを「見える化」することで、牛の変調をいち早く検知して迅速に対処できるようになる。牧場でテストを重ねたことで検知精度は大きく向上。ほぼ9割の高精度で牛の行動データが取れるようになっているという。
「たとえば反芻の数が極端に減ってきたら内蔵疾患の可能性があります。すぐに獣医師を呼んで診てもらえば的確な対処ができます。これまでは、こうした予兆を知る術がなかったのです。牧場の方が気づいたとしても、いつから調子がおかしくなったかがわからないことが多いようです。特に100頭以下の牛を飼育する家族経営の牧場は慢性的な人手不足であるため、効率的な飼育業務を行うためのソリューションとして、ニーズがあると考えています」
昨年の11月に農水省で行われた【農業現場における新技術の実装に向けたマッチミーティング(畜産)】に「ルミログ」を展示したところ、想定以上の大きな反響が得られた。メインのターゲットである酪農・畜産農家に加え、獣医師や飼料メーカーなどからも次々と協業のオファーがあるという。
「9割の精度で牛の行動データが取れるなら、ぜひ研究にも利用したいという声をいただいています。私たちが取り組んでいるのは疾病管理の領域ですが、実は行動データは色々な領域に応用することができるようなので、今後は行動データが必要なパートナーと広く協業を進めていく方針です」
いずれは海外にも広く事業を拡大したいと考える宮原氏は、NTT Comとのパートナーシップを大事にしたいと明言する。「実は、高精度に行動データが収集できることでルミログが話題になり、破格の条件でモバイル通信を提案してくる事業者もいらっしゃいます。しかし私たちの意義を深く理解し、ゼロから開発に携わってもらった過程こそが重要で、その経緯を知らない事業者に細かい相談やフォローをお願いするのは、難しいと感じているのです。新規の開発案件というリスクの高い案件にも親身に向き合っていただき大変感謝しており、これから事業化するにあたって、私自身はこの関係を継続させていけたらと考えています」
酪農・畜産業のイノベーションに向けて、これからもIoTを活用した光和ネットサービスの挑戦は続いていく。
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導入サービス
いつでも、どこからでも、快適に。本社へのアクセスやクラウド利用に最適な法人向けモバイルサービス。
光和ネットサービス株式会社
事業概要
オフィス用PC、スマートフォン、タブレットのキッティングに加え、ITコンサルティングから機器導入・システム開発・運用までをワンストップでサポートする総合SI企業。すぐれた技術力、蓄積したノウハウをもとに、IoT市場を見据えた幅広いサービスを自社開発している。
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(掲載内容は2019年2月現在のものです)
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