東京都福祉保健局
「東京都受動喫煙防止条例」一部施行にあわせ
AIチャットボットで24時間365日の問い合わせ対応
東京都福祉保健局
保健政策部 健康推進事業調整担当課長
中山 佳子氏
「どんな質問でも、どんな言い回しでも適切に回答できるようにAIチャットボットを進化させていきたいですね」
課題
「受動喫煙防止条例」の情報提供を目的に、
24時間365日対応の相談窓口を検討
東京都受動喫煙防止条例は、受動喫煙による健康影響を未然に防ぐために制定された。東京都では、2020年4月に全面施行される「改正健康増進法」に独自のルールを付加し、たばこを吸う人も吸わない人も快適に過ごせる都市の実現を目指している。
「受動喫煙の健康への影響が科学的に明らかになっています。また、国も同時期に改正健康増進法を検討していました。そうした状況で、東京都は2020年にオリンピック/パラリンピックを控え、どのような対策が必要かを検討しながら、条例を策定してきました」と、東京都福祉保健局の中山佳子氏は説明する。
この条例のポイントは「人」に着目した2点。1点は「受動喫煙の健康影響を受けやすい子どもを守る」、もう1点は「受動喫煙を防ぎにくい立場の従業員を守る」ことだ。
「具体的には学校や幼稚園などの施設内は全面禁煙であるということ。法律では国が定める条件をクリアしていれば屋外に喫煙スペースを設けることができますが、都条例では認めていません。また、飲食店に対しては、法律では客席面積100㎡以下の店舗は店主が喫煙・禁煙を選択できるのですが、都条例では従業員の有無で線引きし、従業員がいる場合は原則屋内禁煙をルールとしています」(中山氏)
法律と都条例で内容に細かな差異があることや、どんな設備・対策が必要になるかなど、条例を遵守してもらうためには情報提供が不可欠だった。そのため同局では条例の内容を知りたいという都民の要望に一層効率的に応えるため、専用相談窓口「0570-069690(もくもくゼロ)」を先行して開設した。
「電話でお問い合わせをいただくのは学校・飲食店の関係者はもちろん、職場や事務所の管理者、医療機関、都民の方々などさまざまです。そのため仕事や家庭の事情から窓口が開設している平日9時~17時45分の間に問い合わせが難しい方が多くいることは予想できました。そういった方たちへの対応を拡充するために検討を重ねた結果、選択肢に上がってきたのがAIによる『チャットボット』です」と中山氏は語る。
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対策
都民の声に応える
「電話窓口」+「AIチャットボット」の統合ソリューション
こうして導入されたのがNTTコミュニケーションズの提供する「ナビダイヤル」とAIチャットボット「COTOHA Chat & FAQ」を組み合わせて構成されたソリューションだ。
専用の電話相談窓口は、東京都福祉保健局の受付担当者が対応する。回線がふさがっている場合や受付時間外の場合はナビダイヤルのIVR機能でその旨を音声ガイダンスでアナウンス。さらにモバイル端末からの電話だった場合は、利用者に承諾のうえでAI チャットボットを利用できるURL を即時SMSで案内。アクセスするとAIチャットボットで疑問を自己解決できる仕組みだ。「電話」と「AIチャットボット」という異なる受付チャネルを連携させることで、よりスムーズに自己解決できる仕掛けとなっている。
これらの導入展開は先を見据えながら段階的に進められた。まず2018年9月よりナビダイヤルによる電話相談窓口を開設。同時にIVR の音声、およびSMSでのホームページのURLをお知らせするサービスをスタートした。そして約3か月の導入期間を経て、2019年1月、専用ページでCOTOHA Chat & FAQによるAI チャットボットの運営を開始したのだ。
「どんな問い合わせに、どのように回答すれば良いのかを覚えさせるため、AIチャットボットには十分な学習が必要です。そのため既に用意していたFAQに加え、相談窓口での問い合わせ内容や回答内容も蓄積し、AIに学習させるための教師データを作成しました」と中山氏。
しかしながら、同局におけるAIチャットボットの運用はまだはじまったばかりといえる。現在は、都民がどのような問い合わせをしてくるのかの情報を蓄積、NTTコミュニケーションズとの連携の下、継続的に学習・テストを繰り返しながら自動回答の精度をブラッシュアップしている段階だ。
COTOHA Chat & FAQは短期間で導入可能なことに加え、問い合わせ内容を自動的に分類できるため、運用しながらどのようなFAQを追加していけばいいかがわかり、素早くPDCAを回せるという特徴を持つ。
「よくある質問はFAQサイトに掲載していますが、自分で調べる手間を省きたい人にはAIチャットボットに質問を入力すれば、知りたいことがすぐに分かるようにしたいと考えています。『飲食店はどのような対応が必要?』『加式たばこの取り扱いは?』など自然文の質問への対応力を強化することで、チャットボットをどんどんレベルアップしていきたいですね」と中山氏は意気込む。
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効果
専用相談窓口の対応力が拡充、
AIチャットボット導入による副次的なメリットも
「今後、2020年4月の全面施行が近づくにつれて、受動喫煙防止条例に関する問い合わせがますます増えることが予想されます。お問い合わせされてきた方に対し、24時間365日、知りたいことにたどり着ける選択肢を提案できる仕組みができたことは心強いですね」と中山氏は語る。
また東京都福祉保健局は導入してから気づいたメリットとして「均質な情報が提供できること」が挙げられる。
「AI チャットボットの強みは回答がブレないことです。電話でもFAQを利用して平準化された対応を行っていますが、やはりオペレーターはわかりやすく伝えようと言い回しを変えることがあります。もちろんそうした心遣いも大切ですが、やはり法律や条例に基づく内容なので、相手が間違った解釈をしてしまうのは避けなければなりません。その意味で、AIチャットボットは良い仕組みだと考えています」と中山氏は評価する。
今後は、チャットボットの対応可能な質問数をさらに増やしていくととともに、ナビダイヤルのオプション機能である「トラフィックレポート」を活用し電話件数や時間帯などのログを確認、最適な問い合わせ窓口の構築に向けて改善を進めていくという。
東京都福祉保健局は最先端のテクノロジーをフルに活用することで、条例の理解と対策の普及に努め、誰もが快適に過ごせる「健康ファースト」な街づくりへの貢献を目指している。
図 専用相談窓口の仕組み
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東京都福祉保健局
業務概要
東京都福祉保健局はすべての都民が地域の中で安心して暮らせるよう、出産・子育てから高齢期まで、ライフステージ全般にわたる様々なニーズに対応し、福祉・保健・医療施策を一体的・総合的に推進している。
URL
http://www.fukushihoken.metro.tokyo.jp/
(549KB)
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(掲載内容は2019年1月現在のものです)
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