株式会社ナゴヤドーム
プロ野球観戦にプレミアムな付加価値を提供
5Gを活用したライブ映像配信で集客力アップ
株式会社ナゴヤドーム
広告・映像部 部長
柴山 和寛氏
「プロ野球のライブ配信で培ったノウハウを生かし、将来的には企業の周年行事や野球大会などのイベントに展開してみたいと思います。そのライブ映像を遠隔から閲覧できる新サービス創出の可能性もあると考えています」
課題
開業以来の大規模観客席改修で席数減を決断
収益につながる高付加価値化が課題に
株式会社ナゴヤドーム(以下、ナゴヤドーム)は、中日ドラゴンズのフランチャイズ球場であるバンテリンドーム ナゴヤ(ナゴヤドーム)の運営を一手に担っている企業である。1997年の開業時、テーブル付きの2人掛けシート「プライム・ツイン」を採用したことが大きな話題を呼んだと語るのは、広告・映像部部長の柴山和寛氏だ。「食事とドリンクをセットで提供する、当時としては画期的なシートでした。それから20年余り、設備の老朽化もありシーズンシート(年間予約席)の販売が伸び悩んでいました。そこで、2019年にプライム・ツインの大規模改修プロジェクトが立ち上がりました」
近年、球場における観客席のトレンドは、1人ひとりが並んで座る席よりも独立したボックス席となっている。従来のプライム・ツインは、2人掛け席が連なっていたため、通路がシートの片側にしかないという課題があった。「お客さまから完全な2人掛けにしてほしいという声が多かったため、まず200以上の席を減らすことを決めました。両側通路に加えて、スマートフォン充電用の電源や柔らかい座面、ひじ掛け、バッグなどが掛けられるフックの採用など、細かい仕様を詰めていきました」(柴山氏)
そんな折、NTTドコモが5Gの商用サービスの提供を開始する。ナゴヤドームが看板やビジョンへの広告出稿を持ちかけたところ、ナゴヤドームと新たな観戦スタイルに関する連携協定を結び、5Gの実用性を実験しながら世に広く知らしめたいという提案があった。「5Gを利用して新たな付加価値を創出する取り組みをNTTドコモと一緒に推し進めていくことになり、同時にネーミングライツ契約で『docomo 5G プライム・ツイン』の新名称が決まりました」(柴山氏)
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対策
プライム・ツインの新たな付加価値として
低遅延のリアルタイムなライブ映像配信を実現
NTTドコモから提案があったのは「docomo 5G プライム・ツイン」に5Gスマホを設置してマルチアングルから試合のライブ映像が楽しめるサービスだ。魅力的な提案ではあるものの、ナゴヤドームとしては初めての取り組みであり、困難が伴った。すでに改修が進んだ段階での企画であったため、スマートフォンの設置場所を確保する必要があった。さらにライブ映像配信に必要な機能やカメラの台数なども、ゼロから検討することになった。
「検討の結果、テーブル中央にスマホを設置することになります。さらにライブ映像を配信するカメラアングルなどを議論し、テストを繰り返して決めていきました。2022年のシーズン開幕までに最終的にカメラ6台(6アングル)に落ち着いたのですが、途中段階では12台にもなりました」(柴山氏)
改修工事も完工した2020年3月、オープン戦目前のこれから実証実験というところで新型コロナ感染症が蔓延し、プロ野球は無観客開催に。「2020年のシーズン終盤になって、ようやく少人数での実証実験をスタートできました。段階的にお客さまを増やしながら検証できたため、さまざまな課題を議論し、解消していくことができました」(柴山氏)
このライブ映像配信サービスで使用されているのが、NTTコミュニケーションズのライブ配信プラットフォーム「Smart vLive」だ。最大の特長は、双方向通信と親和性の高いWebRTCを用いて、1秒未満の大規模な低遅延ライブ配信を可能にすることにある。さらにバンテリンドーム ナゴヤの6アングルのように、複数のカメラ映像をほぼ同期された映像として楽しめることも大きな魅力だ。初めてライブ映像を目にしたときの印象を柴山氏は語る。「試合の映像を映し出す館内モニターでも2秒ほどのズレがあり、さらに地上波やBS・CS放送は遅れます。ところが、Smart vLiveによるライブ配信は館内モニターより速く、タイムラグが無いのに驚きました」
図 システム構成図
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効果
観客からの評判も上々で入場率&着券率が向上
運用の効率化、新サービス創出への挑戦は続く
ライブ映像配信サービスは、2022年のシーズン開幕と同時にdocomo 5G プライム・ツインの常設サービスとして提供開始。確かな集客効果を見せている。
「開幕直後の20試合をコロナ前の2019年度と比較すると、12球団平均では観客数は75%程度ですが、中日ドラゴンズの観客数は81%を記録しています。入場率も約65%となっており、これも12球団全体で上位の数字です。さらに昨年度と比べるとdocomo 5G プライム・ツインのシーズンシートの利用率も83%から87%にアップしており、スタンド全体を見渡しても、docomo 5G プライム・ツインは席が埋まっている印象があります」
実証実験の段階から利用者の評判は上々だったが、docomo 5G プライム・ツインは半分が年間契約のシーズンシートであるため、最近では観客にもすっかりなじんできているという。「それでも、いまだに初めて利用したというお客さまからは肯定的な意見を多くいただきます。球場という箱を提供する立場としては、肉眼で試合を見るライブ体験こそがメインディッシュで、それを引き立てるスパイスがライブ映像配信サービスです。あくまで球場で試合を観戦する付加価値ととらえないと本末転倒になります。そこに留意して取り組みを進めたことが、今回の成功要因かもしれません」
球場に500台単位のスマホを導入した事例は前例がなかったため、運用に関しても想定外だったと柴山氏は感じている。「革新的な先行事例だと思う一方、今後、運用面での稼働や費用をいかに抑えるかが課題になっています。さらに、ライブ配信サービスのエリアを拡大する計画もあります。NTTドコモグループとは定期的に打ち合わせで改善ポイントを伝えたり、新たな提案をいただいたりする関係が構築できていますので、今後も新たな視点でのアイデアに期待しています」
今回のナゴヤドームの取り組みは、今後のプロ野球界に大きな変革をもたらす一石になるのは間違ないだろう。ナゴヤドームとNTTドコモグループは、今後もスポーツエンターテインメントの最前線をデジタルの活用により開拓していく。
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株式会社ナゴヤドーム
事業概要
1997年、中日ドラゴンズの本拠地球場として開場。プロ野球ファンのみならず、中部地方を代表する大型コンサート・イベント会場として広く親しまれている。新時代への夢を実現する東海地方のシンボルとして、常に地域に貢献し、地域に愛されることを目指している。
URL
http://www.nagoya-dome.co.jp/
(PDF形式/480 KB)
(掲載内容は2022年7月現在のものです)
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